第19話 『呪い』の正体 問題編
参考:アーサー・コナン・ドイル原作『シャーロック・ホームズの思い出(原題:The Memoirs of Sherlock Holmes)』より、『最後の事件(The Final Problem)』
ニコラス・メイヤー作『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦(原題:The Seven-Per-Cent Solution)』
いつだったか、僕のホームズである御陵あるまとオカルトの話をしたことがあった。
幽霊を信じているか、超能力があると思うか、なら宇宙人は?
どうしてそんな話をすることになったのかも思い出せないほど取り留めのない話題だったけれど、お姉さんの回答は面白いものだった。
『まず、宇宙人はいるでしょうね』
果てしなく続く空を見ながらアルマお姉さんは言った。
『ドレイクの方程式を知っていますか? 知らないならば、フェルミのパラドックスはどうでしょう』
『どちらも聞いたことがないかな』
『そうですか。簡単に言うと前者は「宇宙人がどれくらい存在しているかを算出する式」で、後者は「宇宙人がいるとすれば何故我々地球人は出逢ったことがないのか?」という指摘です。この二つを踏まえ、私は「宇宙人は存在しているが、宇宙が広過ぎるので他の宇宙人と出逢う前に文明自体が滅びてしまう」という考えを持っています』
宇宙人は存在している。
が、宇宙は広過ぎて他の宇宙人と出逢うことが難しい。
そして惑星間の移動技術が確立される前に文明それ自体が滅んでしまう。
それがお姉さんの意見だった。
彼女はシニカルに笑ってこう続けた――「今のままだと地球人もそのルートでしょうね」と。
正直、眼から鱗だった。
SFに出てくる宇宙人は地球人よりも遥かに優れていることが多いから、「うっかり滅んでしまう」なんてこと、考えたこともなかった。
『ウェルズやそれに関係したホームズのパスティーシュの話をしても良いのですが、今日はやめておきましょう。次は超能力でしたね』
『うん。霊能力とか、そういうの』
『それはあります』
軽くお姉さんは断言してみせた。
『……ちょっと意外かも』
『そうですか?』
『お姉さんなら「ありえない」って言うと思ってた』
言いませんよ、と彼女は穏やかに笑って続けた。
『だって、他ならぬ私の兄が超能力者ですからね』
『……え?』
超能力者?
お姉さんの、お兄さんが?
呆気にとられた僕に彼女はあの嘲笑を見せた。
口端を歪める、妖しい微笑。
『ふふ、定義の問題ですよ。眼帯君の言う「超能力」は、定義するとすれば、どういう力になりますか?』
『えっと……。常人の限界を超えた力、とか?』
『その定義ならば、私の兄は間違いなく超能力者です。……実は私の兄は人の心が読めるんですよ』
『本当に?』
『はい。兄は「プロボクサーとスパーリングを行い、一度も被弾することなくノックアウトした」という逸話を持っているのですが、それは超能力の成せる技だったのです』
確かに、心が読めるのならば攻撃だって当たらないだろう。
漫画みたいな話だけど。
『眼帯君の定義ならば私の兄は間違いなく超能力者です。常人にそんなことは不可能ですからね。ただ、彼の「心を読む」という能力はオカルトティックなものではありません。単に、兄が動体視力と反応速度、何よりも観察力に優れていただけです』
『どういうこと?』
『簡単な話ですよ。「相手がパンチを打ってきそうだから一歩下がる」「次に間合いを詰めてくるからちょうど当たるように拳を繰り出す」――そんなことを繰り返していただけです。他者から観測する限りでは心が読めるように見えます』
『……全然簡単じゃないじゃん』
何処が簡単なのだろう、それ。
『簡単なのは理屈だけで、行うのは困難そのものです。故に兄は「常人を超えている」わけです。「常人の限界を超えた力」を「超能力」と呼ぶのならば、正しく私の兄は超能力者になりませんか?』
『うーん……。なるけど……』
そういうことじゃないんだろうな。
僕のそんな心情を読み取ったのだろう。
お姉さんは続けた。
『では仮に、私が一キロほど先まで瞬間移動できたとしましょう。これは「超能力」ですか?』
『それなら間違いなくそうじゃない?』
『そうですよね。ですが仮に私がそんな能力の持ち主だとしたら、恐らくは十年もしない内にそれはオカルトティックなものではなくなりますよ。何故か? ……きっとすぐに科学的に解明されるからです。私が「人間の秘められた潜在的な能力を開花させて不可思議な現象を起こしている」として、それが判明してしまえば、それは「超能力」ではなく単なる「潜在能力」でしょう? 何処かの部族の視力が7.0くらいある方々とさして変わりません』
謎は解かれるもの。
そして謎を解くのは何も探偵だけではない。
というより、この世界の多くの謎を解いたのは歴史上の科学者なのだ。
『「超能力」には定義には現れない神秘的なイメージがあります。理屈が付いてしまえば、その神秘性は失われる。故に私は超能力は存在すると考えていますが、眼帯君の思っているような神秘的なものではないと述べておきます』
そんな風にお姉さんは纏めた。
こちらも眼から鱗。
なるほど、『超能力』という言葉の定義を「常人を超えた力」にしてしまうと、そうなってしまうのか。
言われてみれば僕から見るとあらゆる謎を解くお姉さんは超能力者みたいなものだ。
種明かしという形で理屈を示してくれるからそうは思わないけれど、仮に事件の犯人だけを告げられたら超能力者だと思ったかもしれない。
いつだったか本家ホームズもそんなことを言っていたことがあった。
曰く、「未知のものは偉大に見える(Omne ignotum pro magnifico)」。
『最後は幽霊でしたね。これは「発見されていないだけで存在するかもしれないが、存在するとしても、創作の中に出てくるほど自由な存在ではないだろう」としておきます』
『どういうこと?』
分かりませんか?と彼女は笑う。
『仮に人の霊が生者を呪い殺せるような存在だとしたら世の中はもっと良くなっていますよ。殺人事件の被害者が加害者を呪い殺せば、連続殺人なんて起こりようがない。そうなっていないとしたら、幽霊なんてものは存在しないか、存在するとしても矮小なものなんでしょう』
尤もな意見だった。
こんなにも悲劇が多いということは、きっと幽霊はいないか、いるとしても世界に影響を及ぼせない存在なのだろう。
生きている人間を救えるのは生きている人間だけ。
そして死んだ人間の無念を晴らせるのも生きている人間だけ。
多分それがこの世界の真理なのだ。
●
彼女がその一言を漏らしたのはある日の夕暮れ間近のことだった。
「……御陵。『呪い』というものは、あると思うか?」
椥辻刑事。
僕の恩人にして刑事課のエース。
幽霊すらも竦み上がってしまいそうな鋭い眼光とイタチのような印象が特徴的な彼女が、唐突にそう言った。
僕は驚きを隠せなかった。
というよりも、信じられなかった。
勝手なイメージだけれど、椥辻刑事はそういうオカルト的なことは信じない人だと思っていたからだ。
「『この世に不思議なことなどないのだよ、椥辻君』――と、何処かの憑物落としを気取って、私はそう言えば良いのでしょうか?」
タブレットで漫画――お誂え向きなことに呪いによる連続殺人を金田一耕助の孫が解明する話――を読んでいたアルマお姉さんは鼻で笑うようにそう返す。
浮かべるのは勿論、あの嘲りを隠し切れていない尊大な微笑。
「それで、私は誰を紹介すれば良いんでしょうか。日本科学技術大学の物理学の教授ですか? それとも明政大学の映画研究会に所属する綺麗な瞳の大学生? 超能力者相手なら、警察にも公安部第五課に専門部署があったはずでしょう?」
「巫山戯ているのか」
「ふふ、その言葉はそのままお返し致しますよ。仮に私が『ナギさんは「呪い」を信じますか?』などと曰ったとしたら、間違いなくあなたは一笑に付していたでしょう?」
「お前がそう呼ぶな。が、まあな。お前の言う通りだ。……忘れてくれ」
椥辻刑事は呟いて、自嘲するように笑う。
「いえ、そんな面白そうな言葉、忘れるなんてできやしませんよ。以前眼帯君ともそういう話をしましたし、私の持論を端的に述べておいても良いでしょう。……そうですね、口先だけの女だと思われるのも心外なので、実験でもしてみましょう。そろそろリンネさんも来るそうですし」
そしてアルマお姉さんは型遅れの携帯電話を取り出して、誰かに連絡を取る。
恐らくはリンネさんに。
「途中何処かによって、スプーンを五本ほど買ってきてください。全て同じ物でお願いします。領収書は『御陵』で。では」。
相も変わらず「もしもし」も「御陵ですが」もなく、一方的に用件だけを端的に告げて電話を切るお姉さん。
社会性がなさ過ぎる。
「何か悩んでいらっしゃるようですし、私からの餞別として一般的に言われる『超能力』というものは簡単な理屈が付くということをナギさんにお教えします」
尊大に微笑む天才に対し、椥辻刑事は溜息を吐き、「その名で呼ぶな」と小さく応えた。
その反応から察するに、僕の恩人が悩んでいることは確かなようだった。
●
数分後、ビニール袋を携えてリンネさんがやって来た。
挨拶も等閑に、袋と領収書を受け取るとお姉さんはベッドから下り、スプーンを取り出して僕達に一本ずつ配る。
「種も仕掛けもないスプーンです。リンネさんが買ってきた普通のスプーン。尤も、私とリンネさんがグルでない限りは、ですが」
「……というか、これはどういうことなの、アルマさん?」
「別に、スプーン曲げをするだけですよ」
物を大切にするあなたには怒られそうですがね、とお姉さんはまた笑う。
「御陵……。巫山戯ているのか?」
その言葉に椥辻刑事は露骨に不快感を露わにした。
おちょくられている、と思ったのだろう。
眉間の皺が、更に深く刻まれている。
「ふざけてなんていませんよ。では訊きますがナギさん、あなたは手品としてのスプーン曲げがどういう理屈で行われているか分かっていますか?」
「知らんよ。根本に細工がしてあるんだろう」
「ふふ、そのパターンもあります。折りたい部分を予め脆くしておき、それを隠すように上から塗料を塗ったスプーンを使い、さも超能力で曲げたように見せる。ではナギさん、このスプーンは曲がらないはずですね」
「お前がそう呼ぶな。……まあな、曲がりはするだろう。ある程度の腕力があればスプーンは曲げられる」
平然と椥辻刑事は述べる。
ある程度の腕力があれば、って……。
まさか、スプーンを力技で曲げるつもりなのだろうか?
「ではやってみてください。ほら、眼帯君も。リンネさんもです」
「いやまあそりゃ、曲げろって言われたら曲げるけどさ……」
と。
リンネさんは両手でスプーンの端を持つと、あっさりとそれを折り曲げた。
さして力を入れた様子もなかった。
ごく普通に、割り箸を使う時のような気軽さで曲げてみせた。
これぞ本当に「種も仕掛けもない」。
「はい、曲がったけど」
「相変わらずの馬鹿力ですね、リンネさんは。兄もあなたのその腕力には一目置いていましたよ」
「ぼくは君のお兄さんに腕相撲で勝てたことがないんだけどな……」
そんな会話を二人が続けるのを横目で見つつ、椥辻刑事もリンネさんと同じように両端を持ってスプーンを曲げてみせる。
流石に女の人だからか、多少力を込めた印象を受けた。
……うん、何か麻痺してるな。
スプーンって、そんなに簡単に曲がる物じゃなかった気がするんだけど……。
「曲がったぞ」
「椥辻刑事も女離れした馬鹿力ですね。犯人を殴って殺さないように注意した方が良いですよ」
「阿呆が。ちゃんと死なない部分を選んで殴っている」
椥辻刑事は空手の有段者であり、凶悪犯との格闘ではその身体能力の高さを遺憾なく発揮しているそうだ。
幸いにして僕は彼女が拳を振るう場面を見たことがない。
見てみたいけれど、見ない方が良いような気もする。
ある男の人曰く、「異性どころか人間として見れなくなるレベル」らしいから。
ちなみに言わずもがなだけど、平々凡々な僕にはスプーンなんて曲げられる訳がなかった。
「さて、スプーンが腕力で曲がる物だということはお分かりだと思います。が、テレビに出てくるようなマジシャンや超能力者は軽く触れた程度で曲げていますよね? 力技で曲げてしまうとそれはもう奇術でもなんでもない、ただの腕力自慢ですから」
まあ本当に超能力で曲げている方も世の中にはいらっしゃるのかもしれませんが―――。
普通はほら、例えばこういう風に―――。
と、その瞬間。
アルマお姉さんが左手で柄を持ったスプーンの先にもう一方の手で触れた瞬間に、スプーンが、折れた。
「曲がった」のではなく、「折れた」。
まるでちょうどその刹那がスプーンの寿命だったかのように。
「……えっ!?」
一拍遅れて声を上げた僕に「良い反応をしてくれますねえ」なんて、お姉さんは笑う。
そりゃ誰だって驚くだろう。
椥辻刑事を見る。
彼女はアルマお姉さんのことを睨むようにして、じっと見つめていた。
どういうことか考えているのだろう。
リンネさんを見た。
こちらは全く驚いた様子がなく、いつも通りの見る者をふっと緩ませる優しい笑みを浮かべていた。
買われてすぐに道具としての命を終えたスプーンを悼んでいるようでもあった。
「反応を見る限りではリンネさんはご存知のようですね」
「そうだね。君のお兄さんに見せてもらったことがあった」
「その兄に私も教わったんですよ。実は私は灰色狼の血族なので理屈が分かれば大抵のことができるんです。無論、冗談です」
お姉さんは床に落ちていたスプーンの先端部を拾い上げながら言う。
「別に、サイコキネシスの類で曲げたわけではありませんよ。単なる奇術です」
「奇術って……。お姉さん、種を仕込む暇とかなかったでしょ?」
「ありませんでしたね。だからそういう手品ではありません。普通に曲げたんです。しいて言うなら、私も腕力で曲げました」
腕力で?
確かに腕力で曲がることはリンネさんや椥辻刑事が実証済みだけど、お姉さんの場合、本当に「触れた」だけだ。
力を込めた様子は全くなかった。
「理屈は単純です。大抵の人は腕立て伏せができますから、腕立て伏せで上体を持ち上げる力を一点に集中させることができれば、スプーンくらい容易く曲げられるんです。強度にもよりますが、上手くやれば先ほどのように折れます」
「……つまり、お姉さんは右手がスプーンに触れた一瞬に力を込めて、折った?」
「はい。肩甲骨を意識し、梃子の原理を用い、極力自然な動作で折り曲げただけです。要するに、ただの腕力です」
彼女はそう語ったけれど、それは「ただの腕力」ではないと思う。
言うなれば腕力と技術の複合技。
理屈は簡単だけど、行うのは難しい。
事実リンネさんに可能かどうか訊いてみると、「ぼくは不器用だからできないし、できるとしてもあんな自然にはできないよ」という答えが返ってきた。
「さて、椥辻刑事。私が言わんとしたことは分かったでしょう? 一見不可思議なことでも理屈は単純だったりする、ということです。あるいは常人では考えられないスキルが根底にあるのかもしれませんが……。まあとにかく、私は『この世に不思議なことなどない』とまで断言はしませんが、大抵のことは取るの足らない、つまらない謎だということは述べておきましょう」
「物事の基本は応用です」とアルマお姉さんは告げて笑った。
アルマの定理。
最後に僕のホームズはこう言った。
「『しかし残念だ。僕はそこまで大きな身体ではないが、彼がもう少しここにいたら、僕の力は彼とそこまで遜色がないことを分かってもらえたかもしれない』――なんて」
そんな風に謳うように呟きながら、彼女は残った五本目のスプーンを取り出し、その両端を持って――折り曲げた。
リンネさんや椥辻刑事がやったように、純然たる力技で。
そこで僕は、今彼女が引用したのは『まだらの紐』の中でかのホームズが大男が折り曲げた火掻き棒を力技で元通りにしたシーンの言葉であることを思い出し、そして何より彼女が万能の天才であることを思い知ったのだった。
●
『呪い』。
その言葉の意味を知ったのは、それから少し後。
僕がもう、椥辻刑事が口にしていた『呪い』のことを忘れかけていた時のことだった。
一月の半ば。
息が白くなる日々が続いていたある日、いつも通りにお姉さんの病室へ赴いた僕は先客がいることに気が付いた。
より正確には彼女の部屋の前で気が付いた。
独特の匂いが漂っていたからだ。
煙たいのに、何故か甘く感じる変わった香りが。
「……煙草?」
精神科病院には煙草を吸う人がとても多い。
単に娯楽が少ないということもあるし、一説にはニコチンに薬の効果を和らげる力があるからそのせいじゃないかとお姉さんは語っていた。
必然的に煙草臭い病室も多いけれど、僕やお姉さんの部屋は未成年が入院していることもあり、他の場所よりは清潔だ。
だからこそその強烈な匂いで誰かが来ているのだと分かった。
扉を開けると案の定、ベッド脇に人の影があった。
匂いと同じく一風変わったハスキーな声が「黒田と新井の活躍に探偵部の副部長や烏賊川市の探偵は大喜びだろうよ」などとお姉さんと楽しそうに語らっている。
近付くほどに煙草の匂いが強くなり、その人が紫色の煙を纏っているような錯覚さえ覚えてしまう。
思わず顔を顰めた僕を見て、ベッド上のお姉さんは笑った。
「やはり、あなたのような存在は眼帯君のような清らかな青少年には有害ですね。ねえ、眼帯君?」
「えっと……」
初対面の人の前でそんな風に同意を求められても、困ってしまう。
お姉さん、相変わらず社会性がなさ過ぎる。
と。
僕のホームズの言葉にくつくつと肩を揺らして笑いつつ、その人が振り返った。
「……こんな場所に閉じ込められている時点で清らかも何もないだろうさ」
目深に被られたフードの奥から覗く瞳が僕を射抜く。
斑なデザインのだぼだぼのパーカー。
口元を隠すように巻かれたマフラー。
しゃがれた声音に、何処かお姉さんと似通った人を馬鹿にしたような口調。
一言でイメージを纏めれば、洋画に出てきそうな殺人鬼、だろうか。
でも、何かが妙だ。
夜道では絶対に出遭いたくない造形のその人物に対し、僕は違和感を覚えた。
「ほらな? アルマ、見ただろうコイツの顔を。生憎と俺のことをただの薄汚い奴だとは思ってくれないらしい。清らかな人間には到底ありえない勘の良さだ」
さもおかしげに、彼はまたくつくつと肩を揺らす。
何かが、おかしい。
でも何がおかしいのか僕には分からない。
困惑する僕にお姉さんが言った。
「では眼帯君、そろそろ彼女のことを紹介しましょう」
「……え?」
彼女?
「いつだったか、情報屋の知り合いがいると言ったでしょう? この人物がそうです。名前は紫竹エメス。こんな浮浪者のような格好をしていますが、れっきとした女性です」
言われて僕は目の前の人物のことを観察してみる。
よくよく見てみれば、唇は荒れているが無精髭はなく、一際煙草臭そうな指もか細くて、声もハスキーではあっても野太くはない。
パッと見では分からなかったけれど、なるほど細部に注目してみると確かに女の人のようだ。
違和感の正体はそれだった。
格好はホームレスの男の人のようなのに、端々に女らしさが見え隠れしていて、それが不自然に思えたのだろう。
「『どうして男の格好をしているんだろう』――と、思っただろう? 生憎と色々不便があるんだよ、女がホームレスをしているとな。だから男に見えるようにしているんだ」
まあ、と彼――もとい、彼女は呟く。
お前のようなガキに見抜かれるようじゃ俺の変装も大したことはないな、と。
「いつも言っていることですが、そんなに困っているならばファミレスでの生活なんてやめて、普通の家に住んだらどうですか?」
「いつも言っていることだが、俺はお前と違って一つの場所に縛られたくはないんだよ。帰る家がないということは見方を変えれば限りなく自由だとも言える。俺はできればこの身体も捨てて、電子の海で生きていきたいくらいだよ」
……なんと言うか、まあ。
お姉さんの知り合いだけあって、この紫竹エメスという人も普通の人ではないようだった。
もういっそ普通な部分を探すのが難しいくらいだ。
きっとこの人はそういう常識からも自由でありたいのだろう。
「さて、お前のワトソン殿も来たことだし、話を始めようとしようか」
「……僕を待ってたの?」
「そう聞こえないとしたらお前は馬鹿だろうな」
続けてエメスさんは言う。
「馬鹿なお前の為に分かりやすく言うと、俺は旧友とその相棒であるお前に面白い話を聞かせてやろうと思って、この病院に寄ったんだ」
「面白い話?」
「そうだ」
またも肩を揺らして、彼女は続ける――「お前の恩人の頭を悩ませる、呪いの話をしに来たんだ」と。
あの日。
あの時、椥辻刑事は間違いなくおかしかった。
その原因は――『呪い』?
「とは言っても、あの椥辻という刑事が直接困っているわけではない。あの女の友人――大学時代の友人で、同じく刑事をやっている男――が担当している事件が不可解極まりないものというだけだ。要するに、あの女はわざわざ自分の担当でもない事件に首を突っ込んで頭を悩ませているということになるな。呆れたお人好しだろう?」
そう言ってくつくつとエメスさんは笑う。
「まあ、現実には不可解な事件を解いてくれる帝都大学の准教授はいらっしゃりませんからね。……ところでミステリに出てくる大学の先生はどうして准教授が多いのでしょうね? 確かN大学の建築学科の先生も准教授だったでしょう?」
「さあ、分からんが、事件を解決してくれる大学の先生がいないことは事実だな。現実において事件を解決しているのは警察――その体系化された組織であり体系化された捜査方法だ。蓄積されたデータと管理された人員、つまり、二重の数の力によって警察は犯人を捕まえる。それ故にありふれた犯罪の対処は得意だが、それ故に特異な犯罪には弱い。統計において外れ値を取り除いてしまうことにも近い」
ぶつぶつとしゃがれた声で持論を述べながら彼女は懐から煙草を取り出す。
海外製らしき、見たこともないデザインの箱を口元に近付けたところで、何かを思い出したようでそのまま懐に戻す。
「……お前の前では煙草を吸わない約束だったな。直接会うのは久々だから忘れていたよ」
「お姉さん、煙草、苦手なの?」
初耳だ。
「逆だガキ。俺が吸っているのを見ると、自分も吸いたくなるそうだぞ?」
「え、お姉さん煙草吸うの?」
あの形の良い唇に煙草が咥えられている様は想像もできないけれど、お姉さんならなんだか似合ってしまうような気がする。
そんなことを思う僕に呆れたように彼女は言った。
「吸いませんよ。この人は嘘を吐くのが趣味の悪い大人ですから安易に信じてはいけません」
「そうだな。お前が吸うのはシンナーだったか?」
「え、お姉さんそういう趣味があったの!?」
「だから安易に信じないでください。どれだけ純真なんですか、眼帯君は。シンナーの匂いは嫌いですよ」
「好きなのは炙った覚醒剤だったか」
「いい加減にしないと怒りますよ」
お姉さんの冷たい目線にまたも肩を揺らすと、エメスさんは閑話休題する。
「さて、では『呪い』の話をしよう。……呪いに掛かったのは石垣というある会社の社長だ。黒い噂の絶えない奴――いや、情報屋として言わせてもらうと、実際に性悪な奴でね。奴のせいで身投げや身売りをする羽目になった人間は数え切れないほどいる。奴はこの資本主義社会において正しく強者で、間違いなく最悪な人間だ。一度会う機会があり、その時に『自分が破滅させた人間について思うことはないのか』と問い掛けたんだが……奴がなんて答えたと思う? 『客の顔を一人ひとり正確に覚えるコンビニ店員がいると思いますか?』だとよ」
それは、つまり。
他人を蹴落とすのは社会において当然である、ということだろう。
「ただ、かつてのハードボイルド小説にもあるように、だ。強くなければ生きていけないのは事実だが、同時に優しくなければ生きている資格がない。その意味では、奴には生きている資格がなかったんだろうよ。
……事件の始まりは少し前。ある日、その石垣の会社に脅迫状が届いた。内容はまあ、よくあるものだ。お前を許さない、お前に必ず復讐してやる、というありふれたやつだよ。当然石垣は気にも留めず手紙を処分した。何通届いても、どんな内容の物が来ても、処分していった……が、その頃から、奴の周りでおかしなことが起き始める」
「おかしなこと?」
「ああ、実におかしなことだ。ある時、石垣が社員に言ったらしい。『誰か私の本の並びを変えなかったか?』と。ただ、当人はどうだか知らないが、社員が社長の本棚の構成を把握しているわけがない。困った社員達は『部屋を訪れたお客様の誰かが動かしたのかもしれません』とだけ答えておいた。が、数日すると今度は机の上のペンの配置が変わっていると言うわけだよ。だが本棚と同じで、社員には分からない。『気のせいではないでしょうか』と社長を宥めたが――更に数日後、石垣は『机に仕舞っていたペーパーナイフがなくなっている』と喚き始めたんだ」
ふと、アルマお姉さんの方へ目を遣る。
僕のホームズは折り紙を取り出し、鶴を折り始めた。
「……続けてください」
「今までは、あった物の場所が変わっているだけだった。だが、今度はあった物がなくなっているわけだ。これは明確な事件だろう? だた生憎と困ったことがあった。その、なくなったというペーパーナイフを、社員の誰も見たことがなかったんだ。なくなったと主張しているのは当人だけで、他の人間はそもそもあったかどうかすら分からない。困った石垣の秘書は『きっとお疲れで、何か別の物と勘違いされているのです。ゆっくり休まれてはどうでしょうか』と休養を薦め、石垣も渋々了承し休暇を取った。
石垣が会社を休んでいる間に、社員はセキュリティの見直しを行った。客人を社長室に通しても一人にしないようにし、出入口だけではなくオフィスの中にも監視カメラを設置して、脅迫状の件は警察に被害届を出した。その甲斐もあったのか、石垣が休暇から戻って三日ほどは何事もなく過ぎていった。事態が再び動き出したのは四日目だった」
一拍置いて、エメスさんは続ける。
「四日目の深夜、会社の周囲を彷徨くコートの男が監視カメラに写った。ロングコートに帽子、マスクを着けた、見るからに怪しい奴だ。背格好から男だろうと推測されるが、それ以外は何も分からない。五日目、六日目の夜中にも男が会社の周辺を彷徨う様子が録画された。これはいよいよ怪しいと警備員を増員し、捕まえられる準備をして迎えた七日目、コートの男は石垣の会社には現れなかった」
「会社には、ですか」
手を止めたお姉さんが、鶴をベッド脇のビニール袋に落としながら、先を促す。
浮かべるのは、あの笑み。
天才故の不遜さが見え隠れする妖しい微笑。
「ああ、会社には、だ。
……翌日、会社に出勤してきた石垣の秘書は左腕を吊っていた。『昨日の夜、コートの男に襲われた』という。その秘書が言うには、夜中にコンビニへ行った帰りに、待ち伏せしていたコートの男にいきなり襲われ、命からがらなんとか逃げた――ということだった。更にその数日後。石垣がコートの男に尾行されることもあった。幸いにして、一緒にいた秘書がすぐに気が付いてタクシーを捕まえ逃げたお陰で大事には至らなかったそうだがね。
そんなことが続くと、石垣の精神もいよいよ参ってしまう。社員に聞いた話では幻聴が聞こえるほど追い詰められていたらしい。先に音を上げたのは秘書の方で、『あなたの傍にいると私まであの男に何をされるか分からない。もう田舎に帰らせてもらう』と辞表を叩きつけて、会社を出て行ってしまった」
「―――続きは私が話そう」
背後から届いた声に振り返る。
開け放たれた扉の向こうに立っていたのは、『呪い』に頭を悩ませているらしい、椥辻刑事だった。
「石垣の秘書が実家へと帰ってから数日。自宅の玄関で死んでいる秘書が発見された。死体の脇には血で書かれた『次はお前だ』というメッセージがあり……」
苦虫を噛み潰したような表情をして刑事課のエースは言った。
「…………その家は、完全な密室だった」
耳を疑った。
『密室』。
ミステリの王様とも言われる密室殺人だけど、まさか現実で遭遇することになるとは思わなかった。
不謹慎だけど、感動してしまう。
「なるほど。だから、『呪い』ですか……」
「……だから言いたくなかったんだ。推理小説でもないのに密室殺人だなんて、馬鹿みたいだろう」
ウンザリしたように呟く椥辻刑事。
眉間の皺はいつもよりも深い。
「いえ、別に何も馬鹿にはできませんよ。それよりも何よりも、ナギさん、あなたは喜ぶべきなのです。この退屈な現実世界で『呪い』だけではなく『密室』にまで巡り逢えたことを。名探偵天下一大五郎ならば『密室の謎解きだなんてまた書評家に馬鹿にされる』と嘆くでしょうが、私は密室モノは大好きです」
堪え切れないというように口元に手を当てて、マイペースに笑う僕のホームズ。
相変わらずの社会性のなさと、驚きの倫理観の欠如。
仮にも人が死んでいることだというのに本当に嬉しそうだ。
「はぁ……。ところで御陵、この新顔はお前の知り合いか?」
深い溜息を吐き、次いで椥辻刑事はエメスさんへ目を遣る。
お姉さんが答えるよりも一瞬早く、話題に上った彼女が言った。
「生憎と俺のことなんて知る必要はありませんよ、椥辻刑事殿。尤も俺はあなたのことを存じ上げていますがね」
「なに……?」
「椥辻小梅。今年で二十七歳。階級は警部補。得意なことは空手。苦手なことは射撃と料理。高校時代は剣道部に所属しており剣の腕も立つ。学生の頃から女にはモテるが男は寄り付かない。好きなスポーツは野球。嫌いなことは名前を呼ばれること。理由は響きが可愛らしいから。どちらかと言えば辛党。アルコールではビールが好き。あとは……。ここ一年はフリー、という情報も付け加えておこう」
「お前……」
椥辻刑事の獣のような鋭い眼光がエメスさんを射抜く。
だが彼女はまるで気にした様子もない。
本当に、この辺りの人の精神を逆撫でする態度はお姉さんそっくりだ。
「警戒する必要はありませんよ、警部殿。俺はこのろくでもない奴の友人で、同じように他人のことを詮索するのが大好きな性悪な人間だ。アンタのことを知っていたのはそういうことで深い理由はない。人は皆、真実を知りたいという欲望を持っている。『知りたい』という感情に理由は必要ない。警部殿だって分かるんじゃないですかね。あなただって、『呪い』の真相を知りたがっているんですから」
「…………」
「では、そろそろ失礼」
それじゃあなアルマ、と。
言いたいことだけを言って、僕のホームズの友人、紫竹エメスは病室を去って行った。
しばらく扉の方を睨み付けていた椥辻刑事は、ふう、とまた溜息を吐くとアルマお姉さんの方へ向き直る。
「……御陵。お前の友人というのは、お前と同じく社会性のない人間ばかりなのか?」
「真っ当な人間ではないことは確かでしょうね。でも、悪い人ではないですよ? 少なくとも頭は悪くないことは確かです」
「そうか。態度が悪いことも確かだろうがな」
そう断言してから、もう一度彼女は溜息を吐く。
そうして椥辻刑事は言った。
「……遺憾な限りだが、お前のおかしな友人の言う通り、刑事として私も真実が知りたい。密室殺人の話をしよう」
送られてきた脅迫状。
相次いで起こった不可解な出来事。
現れたコートの男。
そして起こった――密室殺人。
「……素人に仕事の話はしたくないんだがな。事件の内容はほとんど知られてしまっているようだから、もう隠しても無駄だろう」
「ええ、そうですね。一応、その密室について話していただけると嬉しいですが」
僕のホームズは鶴を指先で弄びながら笑う。
「被害者が発見されたのは木造平屋建ての一軒家、その玄関だった。新聞を届けに来た配達員が扉の下部から血が流れ出しているのを発見し、呼び掛けても応答がなかった為に近隣住人と協力して扉を破り、事件が発覚した。死因は腹部を包丁で刺されたことによる失血死。事件を担当している同僚は『扉を開けたところを刺し殺されたのではないか』と言っていたな。まあ、普通に考えればそうなるだろう」
「普通に考えればそうですね」
首肯してお姉さんは先を促す。
椥辻刑事は言った。
「この事件における最大の問題は現場に残された血文字でも、北陸の山奥であるために目撃者がいないことでも、指紋を始めとした犯人の痕跡が全く見つからなかったことでもない」
「問題は……その平屋が、密室だったこと?」
「そうだ。玄関は引き戸で、心張り棒で押さえておくだけの簡素な代物だ。そしてその棒は扉にしっかりと噛ませてあった。単純であるが故に外から鍵を掛けるという芸当はできないだろう。裏口はサムターン式だが、ピッキングの形跡はない。鍵は被害者の懐、家の中にあった。いくつかある窓も侵入の痕跡はなく、中に隠れていた犯人が期を見て逃げた可能性も低い」
つまり、とアルマお姉さんが笑った。
「つまり……。現場は完全な密室だった、と」
「甚だ遺憾だがな。だが、警察はミステリおたくの集まりではない。一軒家を密室にするご大層なトリックを考える前に、より現実的な可能性を探っている」
「現実的な可能性って?」
密室殺人自体が非現実的なのに、現実的な可能性があるのだろうか?
ミステリでは禁じ手とされている秘密の出入口とか?
そんなことを思う僕にお姉さんは言った。
「眼帯君、ミステリの読み過ぎですよ。警察の方は密室で殺人が起こった場合、まず合鍵がなかったかどうかを探すんです。あるいは誰かと被害者の親しい人物が合鍵を作っていなかったかを」
「あ、鍵か……。そりゃそうだよね」
密室で人が死んでいたら他に鍵がないかを探すのが当たり前だ。
盲点だった。
「如何に現場が密室でも、人間――犯人が密室から消えることはそれこそ超能力者でなければできません。合鍵を探すのは妥当な判断です。そして恐らく警察は、その合鍵が見つからない為に困っている」
「……その通りだ。こういった場合、探すのは合鍵そのものではなく、それを作った合鍵屋だがな」
「仮にこのまま鍵が見つからなかった場合、『密室の中で人が死んでいた』という事実だけが残る。そうなると警察は大変です。密室の謎を解かなければならなくなりますから」
そう。
そして、その密室の謎を解かなければならなくなったのが、今の椥辻刑事――厳密には彼女の同僚なのだろう。
推理小説の中にしかないはずだった、密室の謎を。
「『呪い』、か……」
オフィスの物の位置が変わるという不可解な出来事。
深夜の会社の周りを徘徊するコートの男。
密室で死んだ秘書。
なるほど。
『呪い』という言葉を連想しても無理はないかもしれない。
あるいは『超能力』だろうか?
部屋の内外を自在に行き来する姿なき復讐者。
それが、椥辻刑事の頭を悩ましているもの。
「……ナギさん。いくつか質問しても良いでしょうか」
「お前がそう呼ぶな」
椥辻刑事の言葉を無視し、お姉さんは訊ねた。
「恐らく言うまでもないことでしょうが、被害者は一人暮らしですよね」
「ああ、そうだ。その平屋は数年前まで被害者の母親が使っていたらしいが、母親が病死した後は誰も住んでいなかった」
「被害者は腹部を刺されたということですが、具体的に何処を刺されたのか分かりますか?」
「直接の担当ではないから正確には分からないが……左脇腹だったはずだ。即死ではなかったようで、被害者の近くには応急処置に使ったらしい血塗れの手拭いが落ちていたそうだ」
「遺体が発見された日の気候はどうでしたか?」
「どうだろうな……。雪の上の足跡については何も訊いていないから、少なくともその日は前日雪が積もっても溶ける程度には暖かかったんだろう」
「被害者は元秘書ということですが、件の石垣という社長のご様子はどうですか?」
「どうもこうもない。相当追い詰められているようで、つい数日前も『早く犯人を捕まえろ』と警察に怒鳴り込んできたそうだ」
「結局、ナギさんは『呪い』というものが実在すると思っているんですか?」
「私は自分の目で見たものしか信じない主義だよ」
そうですか。
素っ気なく僕のホームズは呟き、綺麗な蒼い目を細め、笑みを浮かべる。
あの嘲りを隠し切れていない妖しい微笑を。
「どうしてこんなことも分からないんですか?」と彼女の笑顔は言外にそう語っていた。
気が付けば、もうお姉さんは鶴を折っていなかった。
いつからだろう?
いつ折るのを止めたんだろう?
エメスさんの話を聞いている時には折っていたはずだけど……。
「物事の基本は応用です。大抵の謎は、基本の応用で解けてしまう……。しかしながら、やはり現実は推理小説のようにいきませんね。こんな謎、応用するまでもありません」
小さく欠伸をしてから彼女は続けた。
「ただ一つ言えることがあるとすれば『目で見たものしか信じない』というポリシーは危険だということでしょう。ほら、よく言うじゃないですか。大事なものは目に見えない、と―――」
お姉さんの前に未解決の謎はない。
見えない復讐者の正体を、僕のホームズはしっかりと捉えているらしかった。
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