第一集 『御陵あるまの推察』

第1話 女子中学生失踪事件 問題編



参考:アガサ・クリスティ原作『ミス・マープルと13の謎(原題:Miss Marple and the Thirteen Problems)』より、『お相手役(原題:The Companion)』





 白い廊下の角を曲がると、あの慣れ親しんだ声が耳に届き、思わず僕は走り出した。

 お姉さんの声は他の女の人みたいに甲高くなく、静かだけど聞き取りやすくて、とにかく、とても綺麗で。

 だから僕は彼女の声が大好きなのだ。

 勿論、彼女自身も。


 だけど、病室の前まで来たところで、お客さんがいることに気付いて足を止める。

 誰だろう?と開いたままの扉からこっそりと中を覗きこんでみると、ベッド脇に学生服姿の少女が二人座っていた。

 一人は黒髪、もう一人は茶髪。

 見覚えのある後ろ姿だ。

 多分、いつもと同じようにお姉さんに学校の勉強を教えてもらいに来たのだろう。


 そんな僕の予想を裏切らず、丁寧に教科書を読み上げる彼女の声が聞こえた。


「……と、いうわけです。このページの定理を使えば、後は芋づる式ですね」


 学生服の二人が彼女を賞賛する。

 何故だか僕も誇らしい。


「物事の基本は応用です。義務教育で習うレベルの数学は基本の応用だけで全て解けます」


 最後に彼女は少しだけ気取ってそう言った。

 それからしばらく廊下で待っていると、今日の勉強会は終わったらしく黒髪と茶髪の少女が出てきた。

 手を振られたのでお辞儀を返し、それからすぐに部屋へと入る。


 ベッドと、机と椅子、それからちょっとした収納棚くらいしかない部屋は、病院なのだから当たり前だけど、とても殺風景だ。

 それでも、そこに彼女がいるだけで幾分か華やかに見えるから不思議だった。


「あら、いらっしゃい」


 僕を見つけると、ベッドに腰掛けていた彼女はタブレット型端末を操作していた手を止めて、そう言った。


「こんにちは、アルマお姉さん」


 御陵あるま。

 少し変わった響きのそれが、彼女の名前だった。


 肩まで伸びたブラウンの髪に、まるで生活感のない、お伽噺のお姫様のような顔立ち。

 穏やかさの中に何かを隠した微笑に、良く通る綺麗な声。

 背が高い割に身体の凹凸が乏しいけど、文句なしの美少女だ。

 僕がこうやって足繁く病室まで足を運んでいる理由の一つは、この五歳上のお姉さんが飛び切りの美人だからだ。


「眼帯君、今日は何かご用事ですか? それとも、遊びに来てくれたのかな?」


 タブレットを収納しつつ、灰に近い色合いのブルーの瞳で僕を見て、彼女は言った。

 アルマお姉さんは僕のことを『眼帯君』と呼ぶ。

 言うまでもないが、本名ではない。

 あだ名だ。

 名付け親はアルマお姉さん。

 理由は僕が眼帯を付けているから。

 そのままじゃないか、と思わずツッコみたくなるニックネームを素で付けてしまうような、そういう天然な所も彼女の魅力だった。


 椅子に腰掛けてから僕は応える。


「遊びに来たんだよ。何か、面白い話がないかと思って。今日は探偵業の依頼はないの?」


 そして、僕がこうしてアルマお姉さんの病室を訪れる最大の理由は、この退屈極まりない精神病院で、ここが一番面白い話が聞ける場所であるからだった。

 彼女は自律神経失調症?だとかいう病気で中学生の頃からずっと入院しており、病院の外に出ることも滅多にない。

 だけど、アルマお姉さんはこの病室に一歩も出ないまま、数々の奇々怪々な難事件を解決してきた探偵なのだ。

 少なくとも僕の知る限りでは、御陵あるまは最高の安楽椅子探偵だった。


「何度でも言いますがね、眼帯君。確かに私は何度か奇妙としか言いようのない事件の真相を言い当てたことがありますが、」

「『何度か』じゃないよ、『何度も』でしょ?」

「……どちらでも良いですが、とにかく、私は別に自分で探偵だと名乗ったことなんて一度もありませんし、これから先も名乗るつもりはありません」


 あくまで穏やかな口調で、アルマお姉さんは僕を窘めた。


「第一、私が今まで真相を見抜いた事件は別にどれも至極有り触れたものでした。私からすれば、どうして当事者の方々が真実に気付かなかったのかが不思議なほどです」

「つまり、お姉さんは嵐の孤島や雪の山荘で殺人事件に巻き込まれて、それを解決したいんだね?」

「どうしてそうなるんですか。それ以前に、巻き込まれようがないでしょう。私は病院から出ないわけですから」

「分かった、この病院自体で事件が起こればいいんだね?」

「何も分かってません。縁起でもないことを言わないでください」


 とにかく、と彼女は続けた。

 

「今日は特に何もありませんよ。別に私は探偵ではないので、そうそう事件に巻き込まれたりはしないんです」

「そうかなあ」


 でも、僕の中では、アルマお姉さんはホームズなんだけどな。……ちょっと、いや、かなりの変人であるところも含めて似てると思う。


 と、僕がそんなことを思った、その時だった。

 コンコン、というノックの音が病室に響いた。

 

「こんにちは、お二人さん。取り込み中だったかな?」


 開け放たれたままの出入り口に長身の男の人が立っていた。

 お姉さんは彼を見ると、嘆息し呟いた。


「何もありません、と言った直後ですが、どうやら眼帯君お望みの事件のようですよ」

「……みたいだね」

「二人共、ひどいなあ。人を疫病神みたいに」


 顔を見合わせる僕達に、その人は部屋へ入りながら抗議を声を上げた。


「疫病神だなんて……。そこまでは言ってないよ。むしろ、事件を持って来てくれたなら福の神だ」


 そう。

 彼は疫病神なんかじゃない。


 ただ、アルマお姉さんが格好良く真相を見抜く探偵ホームズで、僕が合いの手を入れる相棒ワトソンだとしたら、彼――鞍馬輪廻は事件を持ってくるレストレード警部だってだけの話だ。







 リンネさんはソーシャルワーカーだ。

 とは言っても、具体的にそれがどういう職業なのかは分からない。

 ある時は思春期の少年少女の悩みを聞いたり、ある時は保育園で交通安全教室を開いたり、またある時は一人暮らしの老人の家を訪問していたりする。

 一言で纏めると「便利屋」とか「何でも屋」になるような仕事をしている。

 そして、そういう風に色々な場所で様々な人と関わっていると、たまには不思議な出来事にも遭遇するわけで……。

 で、リンネさんは自分ではどうしようもないと思うと、こうしてアルマお姉さんの知恵を借りに来るのだ。

 大卒の社会人が十八歳の少女に相談を持ち掛ける図は「それは大人としてどうなんだ」と思ってしまうものだが、困った時には迷いなく他人の手を借りるリンネさんの姿勢は褒められるべきなのかもしれない。


 それに、アルマお姉さんはホームズ。

 つまり天才なのだから、頼りたくなるのも分かる。


「今、大丈夫かな?」


 リンネさんはベッドを挟んで僕とは反対側、窓際に立つとアルマお姉さんに笑い掛ける。

 見た者の心をふっと緩ませる笑顔。

 人の話をよく聞く職業柄のせいか、リンネさんは安心感を抱かせる雰囲気を纏っている。

 大抵の人はちょっと話しただけで心を許してしまうだろう。

 だが僕は例外。

 むしろ彼の笑顔を見ると警戒してしまう。

 理由はとても単純で、リンネさんは地味ながら整った顔立ちをしているから、アルマお姉さんがいつか惚れちゃうんじゃないかと心配で堪らないからだ。

 それに、女の子は年上が好きだって聞くし。

 ただ幸いにも、今のところは彼女にそういう気配はない。


 とてもクールにアルマお姉さんは言った


「大丈夫ですが……また何か、ご相談ですか?」

「生憎とね。情けない話だけど、今日も君の知恵を貸して貰いたいんだよ」

「で、事件なの?」


 僕がそう問い掛けると、一度頷いてからリンネさんは続ける。


「まあ、そうだね。事件というか、謎かな? もしかしたらアルマさんにとっては謎でもなんでもないのかもしれないけれど」

「へぇ、いいじゃん! ほらアルマお姉さん、謎だって! 探偵の大好物の謎!」

「私は別に謎を主食にしている魔界の生物ではないですし、依頼がなければ退屈のあまり麻薬を打つような人格破綻者でもありませんよ。どちらかと言えば、そんなに謎解きがしたければ世の探偵は数独でもやっていればいいのに、というタイプです」


 何処までも涼やかにそう告げて、でもすぐにお姉さんは言った。


「で、今日はどんなお話なんでしょうか」

「……なんだかんだ言いつつ、やっぱり結局訊くんだね、アルマお姉さん」

「別に……。リンネさんがお困りの状況で、私が少し考えて解決するのなら、協力するのも吝かではない、というだけの話ですよ」

「そう言ってもらえると非常にありがたいね」


 はにかんだ風にリンネさんは笑う。

 とても愛嬌ある仕草で、思わず僕はムッとしてしまう。

 そういうわけじゃないんだろうけど、どうしても色目を使っているように見えてしまう。


 でも幸いなことに、アルマお姉さんは素知らぬ顔で折り紙を取り出し、鶴を折り始めていた。

 考え事をする時のお姉さんの癖。


「では、話して頂けますか?」

「そうだね、何処から話したものかな……」


 少しだけ思案し、リンネさんは語り始める。

 その不思議な中学生の消失事件を。







「二人は夜回り先生って知ってるかな? 一時期有名になったけど、夜の街を歩いて回って、家に帰らなかったり帰れなかったりする子ども達に声を掛けてた人なんだけど。子ども達の非行を考える上では、罰を与えたり叱りつけるよりも、ああいう風に真摯に向き合う姿勢の方が大事だったりするんだよ。で、それに影響を受けたわけじゃないけれど、ある街――そうだな、ここではS市としておこうか。S市の学校や、教育委員会や、あるいは社会福祉協議会や児童相談所が協同して、夜中になっても家に帰らない子ども達に声を掛けよう、話を聞こうって活動を始めたんだ」

「補導じゃなくって?」


 僕がそう訊ねると、彼は頷いて続ける。


「そう、補導するんじゃなくって、話を聞こうって取り組みだね。そのキッカケとなったのはS市の駅前で、ある中学校――これもS中学校にしておこうかな。で、S中学校の生徒が、売春をしてるっていう噂が広まったからなんだ」

「売春って……。あの、お金を貰って、やらしいことをする、あれ?」

「それだね。路上売春……と言えばいいのかな」


 少しだけ、リンネさんの話を促したことを後悔する。

 女の人と一緒に聞くには刺激が強過ぎる内容だった。

 それとなく隣を伺うと、アルマお姉さんは一羽目の鶴を完成させたところだった。

 まるで気にした様子はない。


「報道において『みだらな行為』という言葉は実際に性交を行った場合を指し、『わいせつな行為』という言葉はそれ以外の公序良俗に反する行為を行った場合を指す、という話を聞いたことがありますが、その噂はわいせつな行為の方でしょうか?」

「まあ、噂によれば……そうなんじゃないかな。中学生とサラリーマンがホテルに入っていく姿を見た、というような噂じゃなく、もう少し直接的な……なんて言うかな、その、路地裏でそういう行為をしているところを見た、というような……」

「そういう行為とは?」

「大人として、未成年二人の前で具体的な内容言いたくないんだけどなぁ……」


 僕はもう耳まで真っ赤。

 リンネさんも苦笑い。

 対照的に、アルマお姉さんは平然としている。

 天才だから、一般的な倫理観とか羞恥心とかは無縁なのかもしれない。


「ほら、口とか手で、男の……ああもう駄目だ、後は想像に任せるよ」

「どうして大人であるあなたが照れているんですか」

「とにかく!」


 閑話休題し、リンネさんは言った。


「とにかく、そういう噂が広まったんだよ。そうするとS中学校の関係者は面白くない。だから、見張りというわけじゃないけど、毎晩何人かずつで駅周辺を見回ることになったってわけだ」

「その経緯を聞くと、どう考えても、捕まえてやろうという大人の思惑があるようですが。補導してやろう、という大人本位の考えが」

「あっただろうね。いや、僕が話を聞いた限りではあった印象だ。とにかくそんな不埒なことをやっている生徒を捕まえたいって感じで……。それの是非はここでは一旦置いておこう。状況を整理すると、駅前で中学校の生徒が売春をしているという噂があって、何人かの大人達がその生徒を探していた。更に言えば、見当も付いてたんだよ。その生徒が誰なのか」

「容疑者……っていうわけ?」


 僕の言葉にまた頷いて続ける。


「普段の行動から決め付けで語るのも良くないんだけど、S中学校にも歳相応にやんちゃというか、不良っぽい子も何人かいてね。目撃情報を踏まえて考えると、ある女子生徒――Aさんにしておこうか。で、売春をやってるのはAさんじゃないか、という話になった」

「しかし、所詮は噂の話でしょう? その中学校の生徒だということは制服で分かったとしても、どの生徒かなんて、分からないと思いますが。大人というものは子どもに対して過剰に干渉する割に、子どものことを『若者』『学生』という記号でしか見ていませんから」


 綺麗な灰色の目を細めて、アルマお姉さんは言った。

 珍しく刺のある口調で。


「……耳が痛いね。僕も何年か前まで学生だったから分かるけど、アルマさんの言う通りだと思う。ただ子どもを理解する気がない大人達はAさんを容疑者と考えた。流石に曖昧な目撃証言だけを証拠に問い詰めるなんてことはしなかったけど、見回りをする人にAさんの顔写真を渡したりしてね。酷い話だよ。でも、幸いなことに、と言うべきなのかな。ある日の夜、その日の見回り担当だった人間がAさんの売春の現場を見つけてしまった」

「…………詳しい状況を教えて頂けますか?」

「その日、見回りをしてたのは地域の自治会の人。二人ペアで駅前を見て回っていたところ、路地裏でサラリーマンからお金を貰っているAさんの姿を見つけた。当然呼び止める、でも当然向こうは逃げるよね。サラリーマンの方は捕まえることができたけど、Aさんは流石中学生というか、どんどん走って行ってしまう。だからペアの片方がサラリーマンの元に残り、もう一方がAさんを追い掛けた。何十秒か追いかけっこを行った結果、Aさんはあるゲームセンターの中に逃げ込んだ。店内は混雑してて、まだ九時過ぎだったから制服姿の学生も多く、自治会の人はゲーセンの店員に事情を話し、一緒に出入り口を見張ってもらうことにした。そのゲームセンターには裏口はない。出口は入り口一つだけ。だから待ち伏せ作戦を取ることにした。自治会の人と店員さんで出入り口に立って、女の子が出て行こうとする度に呼び止めて、持っていた顔写真と確認してね。だけど、困ったことになった」


 一拍置いて、リンネさんは言った。


「そのゲームセンターの閉店時間である夜の十時になり、遊んでた子ども達が皆出て行って、でもAさんは見つからなかったんだ。他の店員さんが清掃を終えるまでずっと出入り口で見張ってたんだけど、結局Aさんは見つからず……。結局、Aさんがゲームセンターの中に逃げ込むのは確かに見たのに、そのまま何処かへ消えてしまったというおかしな事実だけが残った」







 一人の少女の消失事件。

 出入り口は一つだけなのに、何処かへ消えてしまった少女。

 心を踊らせながら僕は訊く。


「それが今回の謎なの?」

「そう、S市の大人達の頭を悩ませている謎。いくつか後日談を補足しておこうか。まず、当日のAさんについて。Aさんはその日の夜家でテレビを見てた、ずっと家にいた、って主張してるけど、それを証明する人はいない。次に捕まったサラリーマンについて。しばらく言い逃れしてたらしいけど、最終的には白状した。アルマさんの言葉を借りれば、わいせつな行為をして、その対価としてお金を渡した、とね。Aさんの写真を見せてみたら、『この子で間違いない』ということだった」

「……具体的には、どのようなわいせつな行為を?」


 四羽目の鶴を折り始めたアルマお姉さんが、また平然とそんなことを訊く。

 リンネさんは困った風に「手や口で……」と小さく呟き、あとは察してくれと頭を振った。

 アルマお姉さんも、そういういやらしいことに興味があるのだろうか?

 ついそんな風に思ってしまい、その卑猥な考えを打ち消すように僕もぶんぶんと顔を横に振る。


「当日のAさんの格好はどのような風だったんですか?」

「S中学校の制服姿で、学校指定の鞄を持ってて、確か……ローファーに、ニーソックスで、ビビリ染めって言うのかな? 肩まであるセミロングの髪を少しだけ茶色く染めててて、不良っぽい子にありがちな濃い目の化粧で……。どうも、いつも通りの格好だったみたいだよ。大胆だよね」

「可愛い子ですか?」

「その情報、いる? ……まあ、かなり可愛い子なんじゃないかな。実はAさんのご両親とは顔見知りなんだけど、ご両親からして美男美女だから。不良っぽいところはあるけど、Aさんも成績は良いんだよね。高学歴の家っていうか」

「そうですか」


 鶴を完成させたお姉さんが、四羽目をベッド脇のビニール袋の中に落とす。


 透明な袋の中には色とりどりの鶴がいくつも入っている。

 アルマお姉さんは折り紙がとても上手だけど、特に拘りがあるわけではなく、折り終えたものはこうして乱雑に扱うことが多い。


 まるで探偵の謎解きみたいだ、といつも思う。

 探偵にとって大切なのは謎を解く過程であって、解決された後に事件の関係者がどうなったかなんてどうでも良いのだ。

 かのホームズがそうであるように、アルマお姉さんも件のAさんには欠片も興味はないだろう。

 大事なのは、謎の真相だけ。


 そして、折り紙を折ることをやめたということは、彼女が真相に辿り着いたことを意味している。


「未解決の謎」


 アルマお姉さんはベッドから立ち上がると、もう一度言った。


「未解決の謎。……いえ、もう未解決ではありませんね。真実かどうかは分かりませんが、一応の答えは出ましたから」

「お姉さん、本当?」

「ええ。断っておきますが、真実かどうかは分かりません。ですが、恐らくこういう話だろう、こういう筋書きならば無理はないだろう、という考えは纏まりました」


 あくまでも謙虚に、穏やかに、僕のホームズは告げた。

 聡明さを伺わせる灰色の瞳を細めて。


「ですがその確認の為に、リンネさんに二つ、質問したいことがあります。私は今から飲み物を買ってきますので、眼帯君、私がどんな質問をするのか、考えてみてください」

「え……?」

「差詰め、ホームズからワトソン君への宿題です。原作の場合ならば、大抵の場合においてワトソン博士はホームズの問い掛けに答えられませんが……。私のワトソンである眼帯君はどうでしょう?」


 そんなことを言い残し、アルマお姉さんは病室を出て行く。

 僕の元には未解決の謎。


 問題は「Aさんの失踪がどういう真相であるのか」、そして、「その真相に辿り着く為にはどんな質問が必要か」だ。


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