第一章 第2話 コロセラにようこそ
「ふーん。割と新しい感じのビルだな」「そ、そうですね」
有限会社コロセラは二〇二五年創業、資本金三〇〇万円、従業員数二十人のベンチャー企業である。ということだけは妹にインターネットで調べてもらって知っている。
しかし。それ以外のことはあまりわかってない。
「あれ。何階だったっけ?」「さ、さ、三階だったと思います」
鈴村と一緒にエレベーターに乗り込み三階に向かう。
俺はあまりこういうとき緊張するタチではないが、彼女はガチガチに緊張しているらしい。目が泳ぎっぱなし、声も震えっぱなしだ。
ピンポーン!
というエレベータが到着した音にまで体をビクつかせている始末である。
「早く降りろよ」
操作盤の『開』ボタンを押しながらそう促した。鈴村は心の底から恐縮である、といった様子で頭を下げ、駆け足でエレベーターを降りる。
あまり慌てるものだから自分の左足で自分の右足をひっかけ前につんのめった。
(うわ! また転んだ!)
――かに思われたが。
「おっと!」
エレベーターの前に一人の女性が立っていた。彼女は鈴村の低空体当たりを微動だにせず受け止めた。
ハーフアップにしたピンクパールカラーの髪、青い瞳、真っ白な肌。どうみても日本人には見えない。
「キミたち! 三上くんと鈴村さんだよね!? うわー二人とも若いー」
光沢のある真っ赤なスーツにハリウッド女優のような顔立ち、それにはち切れそうな胸、それでいてキュっとしまった腰。威圧的なまでにド派手な美貌のガイジンさんであった。
俺は少々狼狽しながらも彼女の質問に答える。
「はい。面接受けに来たんすけど」
「だよね! じゃあ面接会場にご招待―!」
彼女が妖しい微笑みを浮かべながらそう口にすると、その背後からふたつの小さな人影が現れた。
一人は緑色の短い髪の毛、もう一人は赤色のロングヘア―。二人とも西洋人形のような格好、そして異様に整った顔立ちをしていた。背筋にゾクっと寒気が走る。彼女(?)たちは俺と鈴村に向かって突進。その両手を胴体に巻き付けると、
「うおっっっ!」「キャーーーーーーーー!!!!」
おそるべき力で俺たちの体を持ち上げ、消防隊員が救出した人間を運ぶように、俺たちの体を肩にひっかけそのまま廊下をのっしのっしと歩いた。
「ハハハハハ! 二人共反応がわいいねえ!」
謎のガイジンの高笑いと、鈴村のやけによく通る悲鳴が廊下に響いた。
「いやー!驚かせてごめんね!」
会議室のような所に通された。
俺たちの座っているデスクは綺麗に掃除されているが、壁際には大量の段ボールやキングジムのファイルが置かれており、全体としてはとっちらかっているという印象である。
対面に座るガイジンさんは三人分のコーヒーを淹れてくれていた。わざわざ手挽きミルとペーパードリップサーバーなんて使うものだから、部屋全体が芳純な香りに包まれる。
「でもさ初対面のインパクトって大事だと思って!」
人懐っこい笑顔で俺と鈴村の目を見ながらコーヒーカップを置く。彼女は秘書さんかなにかだろうか。
「じゃあ面接始めよっかー」
優雅な仕草でコーヒーカップに口をつけながら言った。
「と言ってもさ。キミら『紹介元』が確かじゃん? だかららぶっちゃけほぼ落とす気ないの。つーことでさ。合格前提で仕事の説明も兼ねちゃうカンジでいい? なんせアホほど忙しくってさあ」
ん? どういうことだ?
「あっ自己紹介が遅れてごめん」
スーツのポケットから名刺ケースを取り出した。
「私。この会社の社長のオリコ。よろしくぅ!」
立ち上がりながら俺に対して名刺を差し出して来た。
名刺には『代表取締役社長 桜梨子アブラモビッチ』の文字。
「オリコって呼んでね! 間違っても名字では呼ばないコト。ウチの会社の社訓は『真心、笑顔、社長を名字で呼ばない』だからね」
「ま、まさか社長だとは……」
「よく言われる! オーラないって!」
オーラはあるのだがなんというか芸能人やモデルのようなオーラであって、一企業の社長という感じは全くしない。
「はい。鈴村さんも」
桜梨子さんが俺の右隣に座る鈴村に名刺を差し出すと、
「ちょ、頂戴致します」
鈴村は背筋を正しきっちりと腰を曲げてから、両手でそれを受け取った。
「お! 名刺の受け取りかた完璧じゃん! ビジネスマナーが出来てるねえ! 素晴らしい! ウチの若い子に見習わせたい! どこで習ったの?」
「えっ! 習ったなんて! ちょっとネットで調べただけで……」
「まあそりゃそうか。でも調べてくるっていう心意気がいいね」
桜梨子さんがアタマを撫でる。鈴村は少しだけ頬を弛緩させた。
(やっべ……! 俺めっちゃ無造作に片手で受け取っちまった!)
「ハハハ! 三上くん、大丈夫だって! そんな青い顔しなくても! こんなことで落としたりしないから! かわいいねえ! 私、キミみたいなかわいいヤンキー好きだよ」
やはりここでも不良扱い。もはや受け入れるしかないのか。
「ねえ。二人はどこ住んでるの? 鈴村さんは?」
イスに座り直しながら尋ねてくる。それにしても日本語が上手だ。この見た目からこれほど流暢な日本語が出てくると翻訳の海外ドラマをみているような妙な気分になる。
「えっと……西急線の新花ヶ丘です」
「近けえな。俺。花ヶ丘だよ」
「へえ! おとなりの駅じゃん! 運命の出会いなんじゃないの?」
鈴村は照れくさそうに顔をうつむかせながら、ほんの少しだけ俺に視線を流した。
「じゃあ。二人ともここまで電車で二十分ぐらい?」
「そうですね」
「どう? イライラしなかった?」
……質問の意味がよくわからない。鈴村も首を傾げている。
「西急線はさ。土曜日のこの時間でも結構混んでるでしょ?」
確かに満員御礼とまではいかなくても、隣の奴と肩が触れ合う程度には混雑していた。
「そうですね。けっこう疲れちゃいました」
鈴村が消え入りそうな小さな声で答えた。
「だよねぇ」
そんな鈴村を、桜梨子さんは心の底から同情しているような慈愛に満ちた瞳で見る。
「うーん……」
俺はウデを組んで天井を見つめた。
「なに? 三上くん」
「い、いやなんでも」
「なぁにい? 言ってごらんよ。なんかいいこと言おうとした気がするよ」
あまり良くないことを言おうとしたから、なんでもないと誤魔化したのだが。
――まあいいか。こういうとき会話の駆け引きをするのは嫌いだし苦手だ。
「いや。確かにストレスを感じないこともないけど。そんなことでいちいちイライラしてらんないよなー。と思って」
すると。桜梨子さんは素早く立ち上がり俺を指さした。
「三上くんそれだよ! それがよくない! 現代の日本人はね。色んなストレスを当たり前のものとして受け入れすぎだよ! だから自分でも知らないうちに山みたいにイライラが積もりまくって『ストレス大国』なんて言われちゃうんだなー」
などとのたまいながらデスクの周りを歩き、俺の隣の椅子にドカっと座った。
「へへへ。今イラっとしたでしょ! なんだこのわけわかんねーガイジンのクソアマって!」などと俺の肩に手を回す。
「いや別にそこまでは……(でけえ)」
俺はこのとき脇腹に当たる胸の感触だけが気になっていた。
「まあでも。キミの言う通り、ストレスがかかるようなことをいちいちさけて通ることができないのも事実。今の私みたいにウザいのが世の中にゃあいっぱいいるしね」
(ウザいってゆうか。でかい)
「それに! そうでなくちゃあ困っちゃう! なにせ私たちのメシのタネは人のストレスだからね。あ、今ぬるっと本題に入りました」
と、俺を解放しホワイトボードに向かって歩く。
「我々『コロセラ』の事業内容はズバリ!」
ホワイトボードに親でも殺されたかのような勢いでマジックを突き立て、荒々しい字で書き殴った。非常に読みづらいが恐らくは『ストレス解消』と書いてある。
「――をお客様に提供すること! それも『アロマ(笑)』だの『デトックス(笑)』だの女々しい方法ではとても満足できない! 最強ストレス大魔王向けの、ストロングスタイルのストレス解消法だ!」
そこまで捲し立てて一旦息をつく。ハアハアと真剣につらい感じに息を切らしていた。若そうに見えるけど実は結構トシなのだろうか。
「その名も!」
叫びながらホワイトボードに『ブッコロセラピー』と記述した。
そしてアタマの上でパンパンと二回手を叩く。
すると。会議室の入り口のドアが突然開き。そこからなにかが投げ入れられた。
ドスン! という大きな音を立てその物体は床に落下する。
そこに転がっていたのは。
「キャアアアアアアア!!」「あああああーーー!?」
それは。人間だった。それも目から光の消えた、動かない人間。
「もー仕事荒いなあ。そっと入れろって言ったのに」
桜梨子さんは苦笑しながら平然と言った。俺は思わず彼女を指さして叫ぶ。
「ひ、ひ、ひ、人殺し!」
桜梨子さんは一瞬目を丸くして、それから体をくの字に折り曲げてオナカを抱えた。
「ハハハハハハ! 三上くんおもろい! ねえキミさ、クールなフリして実は結構な天然なんじゃないの?」
「だ、だってその人死んで……!」
「死んじゃいないさ」
桜梨子さんの言葉に合わせて。死体がゆっくりと立ち上がった。
「ソンビイイイイイィィィィ!」
鈴村の叫びにガハハハ! と豪快な笑いを被せつつ、ゾンビの顔の辺りを指さした。
「ほら見なよ。よーく」「ん?」「アレ?」
そのゾンビ男性の顔をよく見る。不自然なくらいに整った顔立ちで、肌も異様にツルツルとした光沢を持っていた。髪の毛も作り物のようにサラサラだ。
「これはね『ブッコロセラピー』のために作られたアンドロイドなの」
そう言われてみれば。人間の顔ではない気はする。さきほどから会議室の隅っこで同じ場所を行ったり来たりしているが、その動きもスムーズすぎて逆に違和感がある感じだ。
「そういえば。テレビなんかでよく特集されてますよね。最近のニッポンのアンドロイド技術がスゴイって」
俺はホッと息をつく。なんだか喉が渇いたのでコーヒーを口に含んだ。
「そうそう。さっきキミたちを運んでくれたのもアンドロイドだよ。彼女たちはウチの製品じゃなくて、研究用に買った他社製のお手伝いアンドロイドだけどね」
「ということはつまり――」鈴村が口を開く。「この会社のお仕事は……その……電動ダッチワイフの製造?」
俺はコーヒーを口から噴出させた。桜梨子さんも顔を赤らめながら手をブラブラと振って「違うよ!」と否定した。
「びっくりしたワア! おとなしい顔からそんな言葉出てくるから! これはダッチワイフじゃなくて『ブッコロイド』!」
ぶっ殺……? いずれにしてもアヤしい名前だ。
「ダッチでないなら、コレどうやって使うんですか?」
桜梨子さんは軽く咳払いをしてから、人形を部屋の入り口辺りに移動させた。
「横道にそれましたが。これをどのように使用するのか実演したいと思います。ごめんちょっと二人で机引いてもらってもいい?」
俺と鈴村は「せーの」という掛け声と共にデスクを部屋の奥の方にひっぱりスペースを作った。
「さんきゅー。じゃあ行きまーす」
桜梨子さんは人形を前にして半身に構え、両手の拳を握りしめると。
「死ねええええええぇぇぇえ! ゆうすけえええええぇぇぇぇぇ!」
豪快な回し蹴りが人形の顔面にヒットした。彼の首は『バリリリリ!』とでも表現すべき快音を立てながら天井に向かってすっ飛び、やがて床に落下した。切り口からは赤い血糊が噴出している。
俺と鈴村は恐怖の叫び声を上げた。
桜梨子さんはじつにいい表情でこちら振り返る。
「このようにぶっ壊してストレスを解消してもらうわけなのです! ちなみにゆうすけというのは私の元カレのクソ野郎の名前ね」
「確かに気持ち良さそうですけど――」
「す、すごい蹴りでした」鈴村が心臓を抑えながら回答した。
「いんや。蹴りはすごくないよ。だって私格闘技なんてやったことないもん」
確かに。勢いはあったがあまり腰が入っておらず格闘技経験者の蹴りではなかった。
でもそれでもあんなにキモチよくぶっ壊れると言うのは?
「すごいのはね。この『素材』の方。ほら三上くん持ってみてよ」
床に落ちていた生首を髪の毛を掴んで持ち上げた。この笑顔である。
「えっ!? いやですよ……気持ち悪いですもん」
「あっ、じゃあ私持ってみてもいいですか?」
意外なセリフに思わず鈴村の方に首を捻る。まあ意外と言ってもこいつのことなんてほとんど知らないわけだが。
「好奇心旺盛で大変よろしい」
桜梨子さんが鈴村に生首を渡す。生々しい真っ赤な『切断面』に少々の吐き気を催し、思わず目を伏せる。
「うわ! 柔らかい! それに軽い!」鈴村が感嘆の声を上げた。
「でしょー! ブッコロイドを作るのに使っているのはね、その名も『ブッコロシリコン』っていう新素材なの!」
鈴村が「へえぇ~」などと感嘆の声を上げながら人形の目ん玉や鼻、口などをペタペタと触る。なかなか猟奇的な光景である。
「シリコンのような『柔らかさ』『成型のしやすさ』、発泡スチロールのような『軽さ』『壊しやすさ』、そしてなにより『壊す快感』を追求した新素材『ブッコロシリコン』開発したのは――」
そのとき。入り口の扉が勢いよく開かれた。
そこにいたのは。褐色の肌に金色の短い髪をハネさせた外国人の女の子だった。
ちんまりとした体にあどけない顔つき。まだ中学生ぐらいだろうか。モノのよさそうなグレーのストライプスーツを身にまとっているのがなんだかちぐはぐな印象を与える。
「開発したのは彼女! ライチ・リヒテンシュタイン!」
ライチとやらは頬を膨らませながら、フルフルと首を振った。なにか不満があるようだ。
「……もとい! 開発したのは技術大国インドが生んだ天才ロボット工学者! ライチ・リヒテンシュタイン! 若干十四歳ながら本年度ノーベル賞受賞最有力候補! えーっと……! 天才なだけじゃなくて美少女! スイーツ大好き! 駄菓子にも目がないぞ!」
ライチという子は腰に手を当てて、無表情のままドヤアと腰を反らせた。
(変なのばっかりか? この会社は)
「じゃあ。お二人にも体験してもらおうかね。ブッコロイドの素晴らしさを」
ライチは無言で廊下に出て、部屋の中にブッコロイドを二体まとめてほおり投げてきた。
「荒いねーライチさん。いいけどさ」
ブッコロイド二人は異様にスムーズな動きで立ち上がった。
「よし! じゃあ! お二人! 思いっきりぶっ壊しちゃって! パンチもキックでもプロレス技でもいいよ!」
「い、いいんですか? 大事な商品なんじゃ?」
俺がやる気マンマンで立ち上がる中(だってさっきからやりたくて仕方がなかった)、鈴村がごもっともなことを桜梨子さんに問う。
「あーいいのいいの。旧型の廃棄品だから」
それを聞いて鈴村も席を離れ、ブッコロイドの前に立った。
「じゃーいつでもどうぞ!」
俺はおよそ二メートルの距離を取り、腰をグッと落とす。
(今だ――!)
よくはわからないが『今だ!』と思ったタイミングで彼に向かい突進、渾身の力を込めた張り手を放った。
(こ、これは……!?)
張り手が顔面にメリ込むと、その首はわずかな抵抗感を手のひらに残しながら根元から弾け飛び、赤い液体を噴出させた。
(なんだこの感覚……!?)
それは全く味わったことがない不思議な感触だった。触った瞬間の手触りは『グニッ!』という柔らかいものなのだが、それが破壊される瞬間にはどういうわけかミルフィーユの菓子を潰したような繊維質な『パリリリ!』という壊れ感を伴う。はっきり言って恍惚となるほどの快感だ。
(お、おかわり……!)
残った胴体に前蹴りを放つ。柔らかい感触と絶妙な抵抗感・破壊感を伴いつつ、俺の右足は彼の胴体を貫通した。これもまた堪らない感覚だ。脳内物質が大量に分泌される。
それはよかったのだが――
(あ! やべ! 抜けね!)
足が胴体に突き刺さったまま抜けなくなってしまった。バランスを崩し、仰向けにぶっ倒れる。
「だ、大丈夫!? 三上くん!」
仰向け状態で右足をバタつかせていると、ライチという子がブッコロイドを足から引っこ抜いてくれた。
「わりい。ありがとうな」
俺は立ちあがり、ライチのアタマにポンと手を置いた。
彼女はなにもそんなにというくらいに驚いた顔で俺を見て、顔をまっかに染める。
(ははは。まあ可愛いもんだ。まだ子供だな)
――一方。
「あれ……? おかしいな……?」
鈴村も荒い息をつきながら左手の拳を人形の顔面に叩きつけていた。
しかし。その顔面は少々ひしゃげるくらいで破壊には至らない。
それもそのはず。だって幼稚園児が『デュクシ!』と言いながら放つような、またはラッキーマンのラッキーパンチのようなへなへなパンチなのだ。
桜梨子さんはそれを見て無慈悲に高笑いをする。ライチも手を口に当てて心の底からバカにした表情で肩を震わせていた。
鈴村のランドセルを隠された小学生のような表情。見かねた俺は、
「腕の力だけで打つからダメなんだ。助走をつけてみたらどうだ? それにもっと拳を後ろに引いてから打て。サウスポーなのはちょっとかっこよくていいと思う」
彼女は俺のテキトウなアドバイスを聞き神妙な顔で頷くと、壁ギリギリまで後ずさり、
「う、ぅぅぉぉぉぉぉ!」
一ミリも迫力のない雄たけびをあげて、ブッコロイドに突進した。そしてなぜかなにもない床で前につんのめるようにすっ転ぶ。だがそれによって彼女の突進は強烈な胴体タックルとなり、ブッコロイドからダウンを取ると共に彼の腰をヘシ折り真っ二つにした。
桜梨子さんが「おおお~」などとユルい感嘆の声を上げながらパチパチと手を叩く。
「どうだった?」
「す、すっごく気持ちいいです! こんなの初めて!」
男人形の股間に顔を埋めたままそのセリフはいかがなものか。
「さらに! ブッコロイドのすごさはまだまだこんなものではない! 最新型はもっと凄まじい――」
プルルルルルル!
セリフを遮るようにテーブルの端っこに置かれた電話が鳴った。
桜梨子さんはテーブルの上にダイブ、寝そべるようにして受話器を取る。
「しもしも~? 社長でーす。えっ!? マジぃ? 今取り込み中なのになあ。まあいいや。すぐ行くよ」
受話器を置いてすっくと立ち上がった。
「お客さんが来ちゃったみたい。でも調度いいや。キミたちもついておいでよ。『ブッコロセラピー』のショウタイムをお見せ致しましょう。お客さんが最高に癒されているサマをとくと見るがよい」
彼女は自信に満ちた笑顔を浮かべると踵を返し、入口のドアを勢いよく開いた。
思わず鈴村と顔を見合わせる。二人とも、返り血で全身に赤のまだら模様ができていた。
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