ある放課後

 授業がすべて終わり、放課後が訪れる。


 教室からクラスメイトが続々と出ていき、廊下から喧騒が遠ざかっていく。

 部活動がない間、生徒たちは一斉に下校する。


 放課後の教室に残されたのは、俺と小森だけだった。


 示し合わせたわけでもないのに二人きりで教室にいる。

 それは六月の初め、小森と最初に言葉を交わした日に似ていた。


 しばらくが経ち、小森は立ち上がるとこちらを向いた。


 西に傾きつつある太陽に照らされた俺たちは、外から見たらどんな顔をしているのだろうと考える。


 きっと、互いに仏頂面なんだろう。

 けれども、それは決して悪い気はしなかった。


 俺も立ち上がり、まっすぐ小森の目を見つめ返す。


 今から小森が言うことも、きっとあの日と同じだろう。


 もしも小森が理想を捨てず、幻想を信じるというのなら、周囲の恋愛についてもっと知る必要がある。

 そのためにはやはりあの契約を結ぶのが一番だと考えるはずだ。


 やがて小森は言った。


「あなたのことは――」


 そして再び契約は結ばれる。




                                  おしまい

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サンタクロースの証明 北斗七階 @sayonarabaibai

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