第91話 邂逅
城門の上からの眺めはある意味、絶景だった。こんな光景見たくもないと恐れ慄いて吐いている兵士がいる中、これはこれで壮観だと見てしまうのはゲームの見過ぎかもしれない。
秩序も統一感もなく、王都に向かって押し寄せる魔物の様はいっそ芸術的だ。押し寄せる波に凄いなあと思ってしまうぐらい現実味がない。
ただ、土埃の臭いも、汗臭さも、これが現実だと教えてくれる。
「姉さん、魔法で少し減らします」
「イアン、魔法はとっておいて。その代わり、投げられそうなものを集めて」
ルイスは魔力が切れても自力でなんとかするだろう。攻撃は物理なんだから魔力切れてもすぐ死ぬわけじゃない。
でも、イアンは攻撃も防御も魔法だ。魔力が切れたら危ない。安全圏からの攻撃は物理でやっておきたい。
本来配置される人数より兵士の数が少ないからか、武器は有り余ってたみたいでたくさんもらえた。そんなんで、波のように押し寄せてくる魔物を減らしてくれるならどうぞどうぞってとこだろう。
イアンが後ろから手渡してくれる形で連続投擲の準備は整った。槍とかはメテオストライクじゃなくて、投槍のスキルが発動しそうだけど、まあ、それはそれで良い。
「メテオストライク」
波の中に落ちていく剣は問題なくメテオストライクになった。波の一角が吹き上がって、一瞬だけぽっかりと穴を開けるがすぐに埋まる。
「しかも、この第一波。やっつけるべきボスいないんでしょ?」
「そのはずです。私たちが勝利しては向こうに都合が悪いでしょうから」
つまり、これは消耗戦だ。作業だ。頑張れば頑張るほど、相手の思惑通り。迎撃せずに守れるなら何もせず引きこもるぐらいの方が良い。
まあ、それは無理だけど。流石に門が壊される。
「カコ、私も投げてみようか」
「あ、いいね。ルイスもなんか言いながら投げてみたら?」
「八の技」
私のような勢いはないものの的確に飛んで行った剣は王冠をのせているオーク、たぶんオークキングの頭を跳ね飛ばした。
今のところスキルじゃなさそうだけど、繰り返していたらゴリ押しで、そのうちスキル化しそう。
そういえば、ジェルマは一の技というレイピアスキルを使っていた。勝手なイメージだけど、テミスらしい合理的な名前の付け方だ。でも、聞いてる側からしたら全く判別がつかない。
「それ、一から七はあるの?」
「ある」
やっぱりジェルマは7種類もスキルがあったらしい。よく勝てたなと今からでもあのときの自分を褒めに行ってあげたいぐらいだ。むしろ、よくルイスに瞬殺されなかった。
ちまちまとルイスと攻撃し続けていたら、嫌な甘い香りが鼻についた。これだけ大人しく順調にこもっていて、なにも手を打たれないわけがなかった。
「はあい!私のお気に入りの魔剣士ちゃん。相変わらず良い腕してるわね。来たわよ!」
投げキッスをくれるとある魔族のお出ましだった。
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