第89話 和解か戦いか
何を納得したのかは不明だが、ルイスは大人しくレイピアを納めると、そのまま大広間まで一緒に戻った。
国を壊す目標達成、もしくはその必要がなくなった時点でルイスと撃ち合いになるかと思っていたから少し意外だ。
大広間には王城攻めの主要パーティと、ラディウス殿下含むギルド長パーティ、そしてなぜか聖女様たちがいた。
「剣の一族、あなたまでここにいたのですね。それにルイスがいるということは、世代交代はされたのね」
せっかくルイスがレイピアをしまったから絡まないでくれる!?
この戦場となることが確実な王城に誰が聖女様を連れてきたんだ。
思わず頭を抱えたくなったが、そんなことをしてる間に生死を分けたら困る、私じゃない、聖女さまの生死だ。
ホントに聖女さまはろくなことをしない。
聖女とルイスの間に入る。イアンの件でもう散々にやらかしているから、今更失言なんて怖くはない。
「ルイスはヴェルザンティのパーティメンバーです」
「聖女さま、カコの言う通りで、今はそのことに触れないでください」
同様の危機感を抱いたユーゴさんが援護してくれる。
そうだよね、私たちがやらかしても、後始末は間違いなくギルドでやることになる。つまり、ユーゴさんだ。
いつもの通り仕事増やしてごめん。
「なんで、君までここにいるかなぁ。ああ、もう台無し。君たちやってくれるよね」
楽しそうな声をあげて、苦笑いをする器用なレオナルド殿下は聖女さまとラディウス殿下に呆れているようだった。
「まったく、なんのために王城から遠いところに弟妹を出したと思ってるんだか。王都で王族が全滅しないようにわけたのに」
「あら、何も説明しないお兄さまが悪くてよ」
「悪いが、状況を説明してくれないか」
ギルド長に急かされて、レオナルド殿下が端的に教えてくれた。
「向こうから提示されているのは、魔族移民の受け入れと食糧の貿易だ。一応だが、物々交換にはじめはなるだろうけれど、貿易を申し入れられている」
ギルド長だけでなく、その場にいた冒険者のほとんどが顔をしかめた。
私としては受け入れて貿易した方が双方の利益になる気がするのに、何がいけないのかがわからない。
魔族と言ってもイアンみたいに人間に紛れて暮らしている魔族もいるぐらいなら、そんなに移民に困る気がしない。
グートやファイアットも、ただ大きいだけで真っ当に言葉の通じる相手だった。
「コダマから提示されたのはこれだけだ。これだけだが、履行するとなるとかなり難しい」
「魔族に家族を殺されている国民への説明、そして人側の近隣諸国への説明だな。人の国から攻め込まれてもおかしくない」
「対人の方がやりにくいな。対人の最高峰がルイス1人しかいないのも痛手だ。」
そこまで話していたところで、王城が揺れた。
地震の揺れ方ではなくて、どちらかと言うとこれは
「コダマから、第一波を襲わせると、連絡が来た」
魔物が迫り来るときのひびき方だった。
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