第84話 王城奪還?作戦
ジャックに散々からかわれながら、私とルイスの怪我をオリバーさんに治してもらって作戦会議がはじまった。
元から私たちのパーティが一番遅れて到着する予定だったらしい。
いつ手に入れたのか王城の地図が机の上に広げられている。
ジゼルさんはヒールの踵を鳴らして注目を集める。
あんな長旅をヒール付きブーツでこなしてくるあたりで執念を感じる。
レベル様の恩恵を受けた私たちが日が昇っている間を1週間以上歩き通している。
わかりやすく距離を置き換えたら東京から浜松ぐらいの距離があった。
私なら絶対無理。
レベル様の恩恵があっても足は疲れるし、痛くもなる。
「いいか、この王城にいるレオナルド殿下の捕縛が最重要任務だ。その途中で魔族がいると思われる。ヒューマンで警戒していたのは仲間になったようだからな」
注目が集まるもルイスはどこ吹く風状態。気にもとめていない。
テミス家にやられた知人や仲間がいた冒険者も、流石にルイスに喧嘩を売ろうとは思わないのか遠巻きにしている。
こんなところでルイスに本気の戦闘されたら部屋が崩れそうだし、賢明な判断だ。
「王城の玉座の間、そしてその後ろにある王の部屋にレオナルド殿下はいるらしい。玉座の間につながる道は正面から繋がるこの廊下だが、ここにはトラップが仕掛けられている。だから使用人口から入り、横から入るしかない
このAルートがクレスニクと王子を連れたギルド長、Bルートがボレアース、Cルートがヘカトンケイル、Dルートがケルベロスとヴェルザンティ」
Dルートは食堂の脇から入って、大広間を経由して、玉座の間に乗り込むルートだ。
比較的他のルートより距離が短い。
「私たちは、指揮官のジゼルさんを護るってこと?」
「お前らに守備は期待してない。自分の身はなんとかする。
ここに2パーティ割くのは、大広間と玉座の間に最も早く着くからだ。戦いも激戦になるだろう」
「うへえ」
確かに魔族は単騎が強い。
ついでに下手なところで戦うといくら王城とはいえ、吹き飛ばしそうだ。
そうなると魔族は比較的広い大広間や玉座の間にいるだろう。
パーティの中に護る対象がいない、全員火力のヴェルザンティがちょうどいい理由がわかった。
「俺らの方は護りつつ進むんでいいよな?」
椅子の背に体重を乗せて、ゆらゆら揺れていたジャックが私と同じことを確認した。
「ああ。クレスニクの防御は堅いからな」
「だけど、ギルド長、言っておくぜ。俺らはオリバーを護ることを優先する。基本はそちらのパーティでやってくれ、敵はできるだけ引き受ける」
「構わん。普段と異なる陣形を取って崩れる方が困る」
影が薄過ぎて忘れていたラディウス殿下を見やればなにか考えているようだった。
「さて、ここに来るまでにどういった魔族と遭遇して、どう切り抜けたか共有しよう」
ジゼルさんが主要パーティを見渡した。
「クレスニクは竜人グロディウスと当たった。馬鹿みてえに硬くて、知能も高いからオリバーが狙われて厄介な敵だった
オリバーの結界で竜の
クレスニクは魔王の腹心と名高い竜人と既に戦ってきていたらしい。
メイの桃色の髪の毛が短くなっただけでパーティメンバーに変わりないのは流石としか言えない。
「ボレアースは竜使い《ドラゴンテイマー》のキルエと遭遇した。彼らが操れる最大数は5、詳細な指示を出せるのは2までだ。操っていない
「ヘカトンケイルは幻術師ニーナと戦った。倒せず途中で逃げられた。
幻術でニーナを狙うのは難しいからパーティ全体に火の耐性魔法をかけて、周囲一帯を全て燃やした」
ボレアースのリーダー、槍使いマカロフとヘカトンケイルのマイクが続けて報告をした。
あれあれ。
各パーティ、しっかりと戦いをしてきている。
私たちは遭遇率は高いが、戦いをスルーしてばかりでまともに戦ってないかもしれない。
グートとファイアットは戦ってないし、話を端折っておこう。
「私たちも幻術師ニーナと少しだけ戦ったけど、私に幻術効かないから、ニーナの姿が普通に見えた。
ここに着く直前でルイスと戦って、仲間になった。
あ!他にはメアリーと会った。攻撃されてたのかもしれないけど、気が付かなかったわ」
ジゼルさんが眉間の皺で紙が挟めそうなぐらい人相悪くなったが、必要な情報は集まったらしく紙になにか書き込んでいる。
「残りの魔族は、幹部クラスがコダマ、メアリー・ラグラステール、ファイアット、ベイリー。名前の知れてる魔族が幻術師ニーナ、それにファイアットの息子グートだ。
この魔族が王城で戦う相手になる」
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