第76話 偽りの街
パーティ、というには歪すぎる上に冒険者パーティにしては魔族率が高い私たちのパーティがその街を見つけたのは夕方頃だった。
ほのかにバラの香りがする花だらけの丘から街を見下ろすと王都に繋がる街だけあって、かなり大きな城塞都市のように見えた。街というより都市だな。
「グート、あの街は入って問題ないとこ?」
「ギルドが拠点になってる街以外は問題ないよお」
「へー、コダマ頑張ってるんだね」
魔王の腹心である四天王の右腕とも称される謎のコダマの手腕を褒めながらなんとなしに街に近づいていく。
近づくほどにどっかで破壊した街の城門を思い出す。あの門と同等かそれ以上に立派だ。
そんな立派な門を台無しにしたのはもちろんグート、入ろうとしたら普通のお宅訪問のようなサイズ感に見える。
「グート、中に入れない…?」
「さ、さすがに無理がありそうですね」
門を守る、王都に近くなって軍の衛兵が増えてきた気がする、その一人がグートを見上げて乾いた笑いをあげていた。
「グート」
「外で待ってるよお」
「ごめんね!お土産なにがいい?」
「遊びに来てんのかよおお」
間違いなく類友だと大きな声で呟いてドスドスと、グートは花びらを盛大に撒き散らして丘を登って行った。折角の景色が…いや花びらの舞う、若干勢いがありすぎて暴風雨感あるけど素敵な景色だ。
母親と似ているとレッテルを貼られたイアンが無言でブリザードを吹雪かせているが冷たい美人はそれはそれで眼福である。
街に入り、見渡すが思ったより活気がない。人の通り自体は多いし、色んな種族が入り乱れて、景色は華やかだ。でも人の住む街としては活気がない。
原因を考えながら、歩いていて、ふと気がついた。市場に来たから気がついたが、あれだ。人のやり取りに覇気がないからだ。
市場なら「お姉さん!これは極上の品だよ!」みたいな覇気ある呼びかけがいくつも飛び交うのが普通だ。なんだかみんな全体的にぼんやりとしている。
魔族が来たことでなにか悪影響があるのかもしれない。イアンが相手を害するつもりがなくても氷漬けにさせてしまうみたいに。
魔法感知しない私では気がつけないなにかがあるでは?と思ってイアンを見やるがちょっとご機嫌損ねてるだけで、なんにも言わない。
街のどこを歩いてみても不自然、目の色がぼんやりとしていて、街の人の声には気が篭もってない。
「イアン、野営しよう」
「私もそうしたいです。ここはあの女の魔力の痕跡があります」
襲撃される前に出ていこうと決めた直後、街の真ん中にある鐘が大きな音を立てて鳴った。そして同時に聞き覚えのある重々しい音を立てて門が閉まった。
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