第41話 サービス残業

ギルドに向かうまでの道は閑散としていた。商店は開いているものの店先にも道にも人はいない。そのまま進み、ギルドを見てもギルド内もロビーに人はなく、受付のところでユーゴさんとギルド長が待っていた。


ユーゴさんは安全な内勤のはずなのに防衛戦の時に見た戦闘服になっている。ゲタゲタ笑う骸骨が赤い目を光らせて私を、私に背負われている魔族を見ている。



「姉さん、その魔族、目を覚ましたみたいです。安全なところに行くまでは金縛りをかけたままにしてますが、気をつけてください」

「了解、こいつ、どこに連れていけばいい?」

「地下の牢へ、かつての戦いで魔族を閉じ込めるための牢が開発されています」



ユーゴさんの案内でギルドの奥にある地下室へ案内された。横を向いたら魔族は目を見開いていた、目の色が赤く光っている。

力を発揮しているときのイアンの目と同じなら何かしているかもしれないと思って肘打ちを入れるとただの赤色になった、発光はしていない。


ユーゴさんの案内に従って牢に繋いでから、ユーゴさんとイアンで魔封じをかけた。



「金縛りをといてください」

「はい」

「さて、クリスさんですね。お聞きしたいことがたくさんあるんです、お付き合いください」



あ、これはユーゴさん尋問を始める前からめっちゃ怒ってる。


ユーゴさんは私は見えなかったステータスを見れているらしい。のぞき見がランクアップしたら見れるようになるのだろうか?それにしても流石過ぎる。



「また俺のドラゴンは木っ端微塵にされたのか」



そう言ってクリスと呼ばれた魔族はうなだれた。またということは前回のドラゴンも彼の操っていたドラゴンだったのだろう。

ダークバードと一緒に鉄球で撃たれたり、なんだか不憫な魔族だ。


ユーゴさんとイアンに促されて地下牢から上に上がった。あとはユーゴさんがやるらしい。ユーゴさんは魔力を持っているのに大丈夫なのだろうか。

ギルド長が入れ替わりに降りてきていたから間違いはないと思うが、ちょっと心配だ。



予想外にもすぐにお役御免になった私たちはロビーでシモンに会った。


シモンは初めて会ったときとは比べ物にならないほどレベルが上がっている、私もだけど。今ならゴブリンリーダーに遅れを取らずシモンは戦えるだろう。

マリカも、最近、女神の嫉妬メガイラの炎というユーゴさんの十八番を伝授されたと聞く。


それだけ短期間でそんなにレベルが上がるような事件がたくさんあったということだ。



「カコ…」



それだけ強くなったギルドの期待のエースが不安そうに困ったことを相談してくるのは絶対不味い要件だ。ちょっとやそっとでなんとかできる案件じゃない。名前を呼ばれて、そして他に誰もいない静かなここで彼をシカトするわけにはいかない。



「殿下がいなくなったんだ」



予想以上の大事件だ。曲がりなりにも私たちの旗頭、いなくなったら王族の名前を語った詐称の罪から諸々の罪がセットでやってくる。


優しい真面目な人ではありそうだったけど、重要人物の自覚がないのか、それとも姿を眩ませなければいけないほどのピンチに陥ったのか。

どちらにしろ護衛のシモンとマリカには困った事態だ。


前者ならついていき護衛、後者なら敵を倒さなければいけない。



「イアン、殿下探し手伝おうか」

「仕方ないですね」



2人で顔を見合わせてからため息をついた。

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