第40話 落しものBOX作ったら?
来たとき以上に地面に大穴を開けた私たちは、無事にドラゴンのアイテムを一部手に入れたので真っ直ぐギルドに帰ることにした。
ドラゴンのアイテムで入手できる
「あれさ」
「今度は見覚えがありますね」
「え?」
「見覚えがありますね」
頑なに見覚えがあると言い張るイアンと言い争っていたが、徐々に近くなってきた。
道の脇に当然のように伸びてる人がいた。黒のマントに身を包んで、傍らにはムチを落としている。ステータスはのぞき見防止がされてるみたいで見えなかった。
こんなに人が落ちてるなら、ギルドには冒険者落とし者BOXでも作ったらいいのではないだろうか。
こんなとこで伸びてるとなると、ランク1の森で迷子になったのだろう。立ち入り禁止前からこの辺をうろうろしていたに違いない。
徐々に近付いて、ため息をついて担いで連れて帰ろうとしたら、イアンが私がそれに近づいていくことを制止した。
「この男、魔族です。闇の魔力を感じます」
「え?」
イアンは少し遠くに行ってもらって、もしものために
しげしげと見てみるが別に角があるわけでも、牙が見えている訳でもない。さらに付け加えるなら別に美形でもない。
イアンが人外の空気を醸し出す美形だから魔族がみんな美形かと思ったらそうでもなくて安心した。みんながみんなイアンみたいな美形だったら、魔族は冒険者と戦わなくても愛を囁いてイチコロだよね。
その光景を想像したらなんだか平和だった。そっちの方がいいかもしれない。
そんなことはないので、とりあえず鉄球を手で曲げて手足を拘束してみた。
よく鍵なんか開けられるんだぜ!みたいなのが良くあるけど、私の特製手錠には鍵がない。その場で作成したオーダーメイドだ、鍵どころか隙間もない。
イアンに用意してもらった水をぶっかけてみるが、うめき声すらあげない。
水に流されて、なんだか見覚えのある鉄球が転がってきた。
もしかしなくても私の鉄球だ。他に鉄球投げてる人を見たことがない。鍛治職人見習いが失敗しても怒られなくなりました!と私に感謝の意を伝えてくるぐらいには、この鉄球は他に使う人がいない。
「イアン、この人なぜか知らないけど私の鉄球でノックアウトされたみたい」
「いつの鉄球ですかね」
「ダークバードと一緒に撃破したのかな」
どうにも不遇そうなこの魔族は生きたままギルドまで連れて帰ることにした。一向に起きないから倒すのは簡単だけど、なんでここにいるかはよくわからないからね。
私の手錠に加えてイアンのスキル金縛りを使って、厳重に拘束した上で、イアンが精霊に頼んでギルドに警戒を呼びかけた。
魔方陣を使う魔法使いではあるものの、ユーゴさんなら精霊の声だけなら聞ける気がするというちょっとした賭けだ。
ファンタジーな人たちだ。
「帰ろか」
さきほどの楽しい気分はどこかに飛んでいってしまい、残ったのは疲労感だ。こんなの連れて帰ったら間違いなく残業になるに違いない。
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