第23話 ドラゴン退治③

私の意味不明なほど威力の出る鉄球と石を投げつける攻撃はイアンによって「メテオストライク」と改名された。

毎回毎回、魔物の前でイアンの気が抜けてしまうのは問題だからと必死に説得された。

何も知らずに適当なことをしてごめんなさい。確かに目の前であんな適当な文言で鉄球投げてる人がいたら気が抜けるわ。


投槍の攻撃も安定してきて、剣も刀術を取得してから壊さなくなってきてまだ壊れていない。順調に飛龍を探していた。

私なら声を出して「飛竜くん、いませんかー?」と聞いて歩くしか方法がないところだったが、魔法の秀才であるイアンがいることでそんな間抜け面を晒さずに済んだ。


MPを使って飛竜を探知できるとか、反則過ぎる


この探知も万能ではなくて、街のように大きな結界がはってあったり竜のように強い魔力を持っていれば見つけられるが、魔力のないものを見つけることは出来ないらしい。魔力が比較的少ないヒューマンを探すのは基本的に無理だそうだ。

つまり、魔力が全くない私が迷子になったら発見してもらうことができない。気をつけよう。



「一撃目、本当に私でいいの?」

「竜は魔法耐性が高いので」

「いや、見た目的に物理も絶対強いって」

「大丈夫です、姉さんならいけます。それに一撃で倒せなくても援護します」



勝手な思い込みだが、竜はすごいだろ!と言わんばかりに自慢の牙と鱗を見せつけている。あれで物理防御が低いのは絶対有り得ない。

私ののぞき見では飛竜との距離が遠くて、ステータスの文字が点だった。見やすい位置に出してくれないあたりがゲームと現実の違いか。


改めて竜が集まっている河原を見ると4体居た。水を飲んでから周りを見渡すのを繰り返している。こんなに鳥が鳴いて心地いい雰囲気のある森の中でも、竜は警戒心が強いみたいだ。

それを見下ろせる位置にあるちょっと小高い岩の陰からこそこそ竜を狙っていた。竜で1番怖いのがブレスと呼ばれる魔法による攻撃だ。私は魔法防御が低い。初撃で決められないと反撃で致命的なダメージを貰いかねない。


大きく深呼吸して、鉄球を1つ握りしめた。続けて4つ投げる。スキルで考えれば一気に投げてもいいかもしれないが、しくじったら怖い。私は小心者で臆病だ。堅実に数を減らしたい。



「メテオストライク」



これまでは魔物を倒した後に生じるアイテムがなくなったら困るので力加減をして投げていた。

飛竜に対してはその気遣いなく全力投球をしてみた、飛んでいく様子を見る限りあれだけの威力があったら鉄球は溶けてなくなってるのではないかと思うが、気にしたら負けだ。



「メテオストライク、メテオストライク、メテオストライク、メテオストライク」



なんか一発多く投げた気がする。投げ終わって轟音と着弾の際に生じる風と振動に耐えるためにイアンと一緒に岩の後で風が収まるのを待った。


魔法杖ロットの先を撫でて聞き取れない声で何かを囁くイアンは臨戦態勢だ。見習って私も剣の柄に手をあてて、塵が晴れるのを待った。



「何もなくなりましたね」

「鉄球強過ぎるでしょ…」



竜がいたところには大きなクレーターが5つ空いていた。そこに落ちているのは3つのアイテム。

一発目で倒した竜のアイテムは後から飛んできた鉄球に潰されたのではないかとイアンの見解だった。現に冒険者カードは対象が討伐された色を示している。

本来なら土に還ったモンスターの山が残るのだがメテオストライクの風でどっかいった。


一発逃したような直感があったから私は5発投げたんだろう。たぶん。そういうことにしておこう。でないと貴重なドラゴンのアイテムを粉砕したショックが拭えない。



「飛竜はドラゴンの中でも弱い部類ですが、これで私たちはドラゴンスレイヤーを名乗れる冒険者ですね」



姉さんと一緒に偉業を成し遂げられたのが嬉しいです!と尻尾があれば全力で振っているだろうイアンを横目で見ながらアイテムを回収した。


もしかしたらこの子、凄くヤンデレかも。


飛竜を倒したのに、一抹の不安を覚えた。

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