第24話 望まない邂逅
竜を操る
俺たちは魔界にある迷いの森の向こうに人間の住む街があると聞いて飛竜に乗って飛んできた。迷いの森から向こうに行くことができないという迷信はアイリスさまの結界に寄るもので、とっても頑張れば向こう側にいけると指示された。
実際、3日以上飛竜に乗って飛ぶことになった。降りたらアイリス様特製のトラップが発動するから降りるなとの指示だった。寝不足で死ぬかと思った。
そんな感じで苦労してやってきた人間の領域は緑が多く、水はそのまま飲むことができて、御伽草子に聞く天国そのものだった。
森に落ちてる木の実を食べて死なないとか、すごすぎるだろ?
アイリスさまの命令の通り、竜を連れて手始めに街を襲撃しようと思って、情報を取るために人間の集団、どうやら商人だったらしいが商人を攫って、着々と準備をしていた。
そう、俺たちの仕事は順調にいってたはずだった。
何が起きたのか、俺にはさっぱりわからなかった。
俺がトイレで飛竜から離れた隙に全てが吹き飛んだ。魔力の流れも、飛竜たちの警戒もなく、一瞬で飛竜と飛竜と共にいたデンが吹き飛んだ。
僅かに聞こえた「メテオストライク《隕石》」の声で魔法の行使だろうことは知ったが、こんな天災みたいな形で降ってくる魔法は知らなかった。
魔王さまの攻撃ですら攻撃前にぴりぴりとした魔力の流れを感じるのにそれがひとつもない。冗談みたいな攻撃だった。人間は弱いと聞いていたのに、嘘じゃねえか。
「アイリスさま、ご慈悲を」
そのままその人間たちが去るのを待ってから俺は魔界に戻った。さっき死んでいった仲間のことを考えたら逃亡して行くわけにはいかなかった。あいつは何が起きたのかすらわからずに飛竜と一緒に吹き飛んだ。
隠蔽術をかけていたにも関わらず、何故かあの人間は「メテオストライク」を5回も撃った。隠蔽術が効かない人間がいるとなると今後の現世侵攻にも関わる。
「変ねえ、人間の魔力程度で飛竜が一撃で消えてなくなるほどのメテオストライクが撃てるかしら」
「俺もそう思っていましたが、ですが、目の前でデンと飛竜はメテオストライクで吹き飛ばされました」
「んー…そうね、あなたの記憶はそうなってるわ。改竄した形跡もない。いいじゃない、面白い人間がいるわね」
面白くなるわ!と喜んで高笑いするサキュバスのアイリスさまはご機嫌だ。だが、ご機嫌なときほどこの人は無茶振りをしてきたりする。
「その人間、面白いわ、連れてきなさい。コダマ、あなたなら出来るでしょ?クリスを使っていいわ。クリスもいいわね?」
「仰せのままに、アイリスさま」
コダマと呼ばれた闇の魔の化身は無感動にアイリスさまの命令に頷いて、俺の方を見やった。コダマは最近、出世してきた魔界の出世頭だ。四天王アイリスの腹心と言われる日も遠くない。
そういう有能なやつほど無茶を言い出す。
「それでは、とりあえず。クリス、人間の領域に行こうか」
ほら、やっぱり。そして俺は断る術を持っていない。
「…了解しました」
引きつった笑みすら床に向けて誰に見せることなく終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます