第14話 将軍を迎撃せよ

通信用に貰った魔法の石でできたイヤリングを耳にかけた私は一人で城門の外にいた。

パーティと同行すらさせてもらえなかった。悲しすぎる。レベルで言えば彼らより低いが、彼らと違って力を全て物理に注いでいるから物理的な能力は同じぐらいと言われて現状に至る。


シモンとマリカに出会った森に接する城門の外を任された私はこちら側が一番ボスがくる可能性が低いためにこっちになった。一番可能性が高いところはジャックたちが守っている。

私が2人と出会ったのはランク1冒険者向けの森の中、道から外れてたから人と会えず街に着かなかった。



「静か」



とにかく静かだった。魔物が来る前の静けさ、嵐の前のなんとやらと同じみたいだ。城門の上に見える篝火が微かに私の下まで届いている。



「こちら南門、ヘカトンケイル。魔物の襲来はじまりました」



アクセサリーからヘカトンケイルのリーダー、回復魔法使い《ヒーラー》のマイクから連絡が入る。こちらもそろそろみたいだ。森がざわざわしだした。


ぷよんと間の抜ける音が聞こえて、こちらもはじまりだしたことがわかった。



「こちら東門カコ、魔物を確認。迎撃を開始します」



ぷよぷよ(青)がたくさんやってきた。城門から伸びる道をふさぐぷよぷよ(青)たち。



ぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよすらぷよぷよ…



ウザい、ウザすぎる。どんだけたくさんいるのよ。



「カコ選手、おおきく振りかぶって、振り抜いたー!」



一人でテンションあげてやっていくにはバカになりきるしかなかった。ユーゴさんから渡された鉄球をテンション高めにぷよぷよの群衆に投げつけると、昼間の隕石ばりの威力で一気に何十ものぷよぷよを吹き飛ばした。


声を出して、イメージをしっかり持つとスキルがある武器をならばイメージ通りの技ができることもあるらしい。

知らないうちに私はそれを適当な言葉に合わせてしまった。変えるのも変だし、これに下手に名前をつけようとして悩み出したらその間に魔物に殺される気がする。


上空からたくさんやってくるダークバードたち目掛けて小さい鉄球をたくさん持って、打ち上げた。



「流れスターダスト!」



でもちょっとは中二病になってもいいかと思って、全部間抜けな号令じゃ、折角知り合いがいない世界に来たのにもったいない気がして。

誰に言うわけでもない言い訳を並べ立てて、流れ星を三回打ち上げたところで空を埋め尽くしていたダークバードがいくつかの鳥の群勢ぐらいに減った。

城門からも色とりどりな魔法陣が浮かび上がり魔法の迎撃が始まったし大丈夫そうだ。


それを確認したときにはぷよぷよ(青)とゴブリンが眼前に迫っていた。



「西門ボレアース、迎撃をはじめます」

「北門クレスニク、迎撃をはじめる」



鉄球を投げつけて少し遠くに飛ばしてから報告をいれた。



「東門、適性外の魔物ゴブリン発見」

「東門、了解」



聞いたことのない男性の声の返事があった。よくわからないが敵ではなさそうだ、他のパーティが特に反応しない。それにそんなことを気にしている暇はすぐになくなった。


普通のぷよぷよ(青)の5倍ぐらいあるぷよぷよプリンスという魔物がではじめて、ぷよんぷよんと襲いかかって来た。剣に持ち替えて上から振り降ろすとぷよぷよの上に乗っている王冠が割れて、土に還った。弱点は王冠らしい。



ぶよんぶよん、べちゃ



不穏な音が聞こえて音がした方向の森を見ると、大型2トントラックぐらいのぷよぷよジェネラルが城門めがけてやってきてるところだった。こんなのいるって聞いてないんだけど。

あれだけ大きければ当然のように城門から色とりどりの、火、水、雷の閃光がジェネラルに降り注ぐ。


効かなかったみたいで、ぶよん、と私のいる城門に繋がる街道の真ん中にぷよぷよジェネラルが降り立った。

道を舗装するレンガが潰れて軽快な音を立てている。音だけを聞いたら楽しそうな感じだ。



「東門、ぷよぷよジェネラルとの交戦に入る」



鉄球を握りしめてジェネラルに投げつけるところから始まった。

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