第12話 個性って性格のこと?
ギルドのある街を出てしばらくして、私はしゃがみこんでいた。お腹痛いとかそういうことは全くなくて、石を拾っていた。通りすがりの冒険者何人かが見て見ぬ振りをしていた。
まあそういう対応は慣れている大丈夫だ、駅で会社行きたくなさ過ぎて奇声を上げちゃったりしたときの対応は大体そんな感じだ。
ある程度の石をポシェットに詰め込むと気を取り直して歩き始めた。小さなナイフもゴブリンリーダーの剣も、全て売り飛ばして処分した。持ってると魔物になるかもよ、と言われて持ち続けられる神経はしてない。
「あ、ポッポット」
スキルののぞき見で路肩にいる茶色の大きなスズメみたいな姿形の魔物がポッポットとわかった。石を手に取ったところで、魔物が私に気がついて、「キシャー」と威嚇をしてきた。
ポッポットなのにキシャーって、名前の通り鳴いてよ。なんだか雰囲気台無し。
「大きく振りかぶって、振り抜いたー!」
何も言わずに黙々と石を投げるのも微妙かと思って適当なことを言って石を投げたら、隕石か、と思うぐらいの轟音で石がポッポットに飛んで砕け散った。石もポッポットも。
何が起きたよ
控えめに聞こえた小さな音でレベルが上がったのは気がついた。だが今の音で道に驚いた魔物がたくさんでてきてしまった。
チューリップみたいな形をしたフラワーマッドからバラの形でトゲのある葉っぱを振り回すフラワーマッドまで、色んな種類のフラワーマッドに加えて集団で固まっているラビットキャットたち、ついでにゴブリンもいる。上空から滑空してくるのはポッポットだ。
いきなり全ての任務が終わりそうな気がする。
「ええー…まあ早く終わりそう」
滑空してくるポッポットに石を投げつけるとさっきみたいな隕石にはならないものの大抵の魔物が石の一撃で土に戻った。
近くまでやってきてしまったやつは伸縮する槍を伸ばして対応した。お手製の槍より使いやすい!でも節の部分があるからなんとなくグラグラしてる気がする。ラビットキャットを三体まとめて突いたところで槍の穂先がひしゃげた。あり得ない方向に曲がった槍はもう使えない。
剣は切れ味抜群だ。日本刀と違って剣は切れ味と言うのか、叩き味と言うのかよくわからないが威力抜群でフラワーマッドとラビットキャットを叩き潰していった。
ゴブリンを倒したときにも感じた嫌な感触は手にあるものの、スキルのおかげがどう動いたら良いというのは何となくわかる。
「食らえ!衝撃波!」
調子に乗って適当なことを言って剣を振り抜いたら近場にあった木が倒れてきた。
ごめんなさい。調子に乗りました。
そのせいで追加でポッポットがやってきて、持ってた剣が一つダメになった。余計なことをして追加した団体様を迎撃し終わって冒険者カードを見たら、石が任務が終了した色に変化していた。
先日のとうろくかでユーゴさんから聞いた、魔物が土に還るときに発する魔力を感知してカードが探知するらしい。
「…アイテム拾って早く帰ろう」
フラワーマッドの赤い石とよくわからない薔薇、ラビットキャットの白の石とムチ、ポッポットの茶色の石とよくわからない葉っぱを拾った。ゴブリンはアイテム全て緑の石になっていたせいで今回もアイテムはわからず終いだ。
そのあとはこれといって特になにもなくギルドまで戻ることができた。
ほうこく・ていしゅつの窓口になぜかユーゴさんがやってきていて、私の任務終了を受けてくれた。銀貨3枚を渡したあと、私にギルドの二階に図書室があることを教えてくれた。
今日もアイテム売却のキースさんに溜め込んじゃダメだよ!と注意を受けてアイテムを売却した。アイテムの換金率が上がって、数が前回の3分の1以下だったが今日は銀貨6枚になった。
言われてみた図書室は閑散としているものの窓からは穏やかな日の光が入ってきており、良い雰囲気だ。熟練の空気感のある司書さんが近づいてきた。
「何をお探しですか?」
「新米冒険者向けの、なんていうか、常識みたいなことが書いてあるやつお願いします」
「それならこちらの棚からどうぞ」
案内された棚はたくさんの本が詰められていた。冒険者の常識多いな、明日は任務やめてこれを読もう。
気になっていたスキルについて調べると、スキルは一番基礎の習得までに時間と努力を要する。剣術スキルであれば師について毎日稽古をして5年以上が最低限度必要となる。
だからスキルがあるというと、きちんと努力をした人扱いになるのか。
スキルは限界レベルまで達すると、スキルではなく個性になり、新たなスキルを覚えることになる。そこまで読んで、自分のステータスを見上げた。
このステータスは自分以外の人からは見えないらしいことを先ほどユーゴさんから聞いた。
『名前 カコ 種族 デミヒューマン
Lv.19
HP:183 MP:0
力 :162 魔力:0
物理防御:57 魔法防御:31
すばやさ:51 幸運 :14
スキル : 打撃 lv2 剣術 lv8 槍術lv7 のぞき見 lv5
個性 : 物理的解決 投てきの熟練者(new)
称号 : 仕事を増やさない仕事人見習い
みんなに感謝できるひと
文化的最低限度の探求者 ▽』
『投てきスキルが限界レベルになったため、個性投てきの熟練者を習得。ブーメラン、投石、投げナイフ、ボーラのスキル習得可能になりました。
投てきスキルと槍術スキルにより、投槍が習得可能になりました』
ステータスの2枚目と言ったら変だが見慣れているステータスの続きを見たいと思ったことによって、これまで変化していたが意識していなかったことが可視化された。
なるほど、本人が意識しないことは起きない。どんなに新しいスキルを覚える可能性があっても覚えた!と思わない限り覚えないらしい。
スキルの最大数は5となると、全部覚えるという荒業は使えない。今覚えているスキルを棄てるとまた覚えるまでに時間がかかる。覚えずに保留しているものは保留だから習得可能となる。
「槍術を投槍に変化。スキル投石を習得」
『名前 カコ 種族 デミヒューマン
Lv.19
HP:183 MP:0
力 :162 魔力:0
物理防御:57 魔法防御:31
すばやさ:53 幸運 :14
スキル : 打撃 lv2 剣術 lv8 のぞき見 lv5 投槍 lv1(new) 投石 lv 1(new)
個性 : 物理的解決 投てきの熟練者(new)
称号 : 仕事を増やさない仕事人見習い
みんなに感謝できるひと
文化的最低限度の探求者 ▽』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます