第10話 魔物化

私の武器はいまだに腰元にあるゴブリンリーダーから拾った剣と、ダークバードから拾ったナイフしかない。

普通の武器が必要だ。

せめて鉄の剣ぐらいになりたい。


私と同じぐらいの背丈のおじさん、背が小さい小人族の人らしい、に金貨2枚で武器が欲しいといったら現在使っている武器を見せるように言われた。



「ゴブリンリーダーから拾った剣と、ダークバードから拾ったナイフです」



それを机の上に乗せたら怒鳴られた。



「バカモン!浄化してないモンスターのアイテムをそのまま使う奴がいるか!?身体の中の魔力が取り込まれて魔物になるぞ!!」

「え!??なにそれ、こわ!」

「どのくらい持ってるんだ」

「ナイフは3日目、剣は2日目だけど」

「…なぜ魔物になってない」



モンスターのアイテムは聖水を使って浄化したり、司祭やシスターの祈りで浄化して、ようやく人間が長期間持っていて大丈夫になるらしい。

革の袋はその魔力が漏れない作りになっているためアイテムとして持って帰ってくるのは大丈夫、でも直に手で持って使ってはいけない。


それが常識らしい。



「へえ」

「なにがへえだ。まったく」

「いや、魔力が0で良かったなぁと…」

「なんだと?」

「魔力を取り込んで魔物にするんでしょ?このアイテム、私は魔力が全くないから取り込まなかったんだろうなと思って」



そう言ったら小人の店主はとても残念なものを見る目で私を見ていた。

見習い神さまはそこまで考えて私に転生補正をくれたのかもしれない。


いいじゃん、無事だったし。

物理特化バンザイ、魔力があったら既に死んでた。



『名前 カコ 種族 デミヒューマン

 Lv.14

 HP:152   MP:0

 力 :112   魔力:0

 物理防御:52 魔法防御:28

 すばやさ:49 幸運  :13

 スキル : 打撃 lv2 剣術 lv2 投てき lv10 槍術lv3 のぞき見 lv2

 個性  : 物理的解決 

 称号  : 仕事を増やさない仕事人見習い

       みんなに感謝できるひと

文化的最低限度の探求者』



うん、種族も変わらずデミヒューマン、決してゴブリンではない。安心した。



「あ、それで武器は」

「大半の武器がな、魔力がある前提で作られてるんだ」

「……」

「だが魔力がないと力が活かせない。そうなると武器の強化ができない状態で使うことになる。つまり、割れやすい」



最悪じゃないか。

やっぱり物理特化反対!

私も火のファイア撃ってみたいし、剣から電撃とか放ってみたい。



「その前に、長期で使える武器がない。魔力を通して壊れないように補強するのが、普通だ」

「普通きらい」

「そうだろうな」



妙に神妙な顔をした店主が同情してくれていた。

ひげもじゃの向こう側から心底可哀想だと思っているのがよくわかる。

だがそれがよりダメージになる。

もし精神ポイントというのがあったら減ってるところだ。



「鍛治職人見習いの練習で打った剣をやろう。壊れたらまた練習の剣をやろう」

「え?まさかの永年保証?」

「見習いはな、魔力を通す剣の作成練習をする前に魔力を通さない見かけだけの剣を作る。それは普通は使えないから破棄される」



話が読めてきた。



「魔力がないなら魔力を通す機能は要らないだろう」

「確かに」

「だから柄代だけで剣は交換してやる」

「槍もいけます?」

「いいだろう」

「良かった!よろしくお願いします」



予定外にも武器は銀貨6枚で購入することができて、さらに永年保証付き。

他の店にはいけないが、ずっと武器が手に入るならそれに越したことはない。


予想外のところで魔力がないことで手間取ったが、これで冒険者らしくなった。

割れやすいお墨付きの剣は腰に2本下げた。

槍は流石に2本あると邪魔なので1つ、節があって伸縮可能な槍だ。剣の横に差しておく。


今の私なら、戦国時代の武士が刀2本持ちたかった理由がよくわかる。

剣が壊れて死にましたじゃ、やりきれないよね、スペア欲しくなるよね。


帰りに乾燥肉屋で肉を買って、ジャーキーみたいなものを想像していたがもっと臭かった。紙にくるんでポシェット型になった革の袋に入れた。


お弁当屋さんで葉に包まれた温かいお饅頭を購入した。お金のやり取りも慣れてきて、買う分にはまあまあ大丈夫だろう。



「んー、さて、今日はこれで寝よう」



ふかふかのお布団目掛けて星の夜亭に戻り、暗くなった頃にはもう寝ることにした。

私の記念すべき冒険者1日目は睡眠と装備を揃えて終わった。

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