第4話 出会いは悲鳴から
何か起こるかもしれないとびくびくしながら野営していたのだが、特に何も起こらず朝日が昇ってきた。
異常なし。
昨日と同じように魚を捕獲して、ちょっと物足りないが朝ごはんを食べてから活動を開始した。
昨日と同様に青いぷよぷよとカラスもどきを倒して、黙々とレベル上げに励む。
レベルが上がりにくくなってきているが、まあゲームでよくある展開だから仕方ないね。
それよりも全く人と会わないことの方が気になる。一体ここはなんなんだろう。
『名前 カコ 種族 デミヒューマン
Lv.11
HP:117 MP:0
力 :92 魔力:0
物理防御:50 魔法防御:27
すばやさ:47 幸運 :12
スキル : 打撃 lv1 剣術 lv1 投てき lv8 槍術lv1(New) のぞき見 lv1
個性 : 物理的解決
称号 : 仕事を増やさない仕事人見習い
みんなに感謝できるひと 』
お手製の槍もどきを使ってぷよぷよを退治するようになってからしばらくして、スキルに槍術が現れた。
もともと適性が低かったものを無理矢理だしたような気分だ。
加えて新しく出てきたスキルののぞき見とは単に戦う前に魔物のステータスがわかるようになっただけだ。
言っておくが、私が変態になったわけではない!しかし文字面が悪い。
青いぷよぷよした魔物は『ぷよぷよ(青)』と何の捻りもない名前であることがわかった。
カラスもどきは『ダークバード』だった。名前に捻りもないが、中二病全開な名前に同情した。
なんのデミかわからないが、とりあえず私はヒューマンでよかった。
デミな影響はこの物理に振りすぎているステータスが物語っている。
「なんか無理矢理に槍のスキルだしちゃったな。でも、剣はさすがに落ちてないし、モンスターを素手で殴るのは気が引ける。リーチが長い方が抵抗が少ない」
誰に言うわけでもない言い訳を頭の中で並べていたら、悲鳴が聞こえた。
近くに他人がいる!
せめて街に行きたい!
待ってて!
私の文化的最低限度の生活!
元々の疲労となれない山での野営が手伝ってよくわからないことをわめきながら私は悲鳴の方向に突進していった。
悲鳴の方向に向かう道中で『ぷよぷよ(青)』を何匹か踏みつぶした。
どうやらレベルが上がってきて、石やナイフを使わなくても『ぷよぷよ(青)』なら素手で倒せそうだ。
悲鳴の主は二人の子供だった。
女の子と男の子が一人ずつ。
『名前 マリカ 種族 エルフ
Lv.5
HP:18 MP:35』
『名前 シモン 種族 エルフ
Lv.5
HP:37 MP:12』
その二人におなじみの『ダークバード』に加えて、ジャガイモに手足が生えたみたいな姿をした『ゴブリン』と『ゴブリンリーダー』が襲い掛かっていた。
「助けて!」
アーモンド形の吊り上がった緑の瞳をした少女の叫びに応えるように、私は石を投てきしていた。
『ダークバード』に慣れ過ぎて、見つけたら石を投てきするのが反射反応になっている。
鳥なだけあって地味に攻撃されるとめんどくさいのもある。
「応援か?!ありがとう!」
シモンという男の子は小振りの剣を握りしめて、『ゴブリン』と女の子マリカの間に立っている。
でものぞき見で見る限り、魔物の方が強いかもしれない。
「火の
マリカが差し出した杖から赤い魔法陣のようなものが浮き出て『ゴブリン』に飛んでいった。
えええ、なんたるファンタジー…
私もああいうやつやりたかった。
まだMP0だけど、そのうちやりたい。
火の玉を食らっても思いの外、ダメージがないらしく元気そうなゴブリンに向かって、お手製の槍を突き立てるとナイフ部分が貫通した。
そのまま後ろにいた『ゴブリンリーダー』をまとめて串刺しにする。
魚とは違う嫌な肉の感触にゾッとする。
そのまま槍を手放して、小さなナイフを残りの『ゴブリン』たちに投げつけた。
その動作に合わせて、シモンが剣を振るうとあっという間に魔物の団体様は土にかえった。
聞き覚えのあるピン!という音に反応して自分のステータスを見るとやっぱりまだMPは0だった。
『名前 カコ 種族 デミヒューマン
Lv.14
HP:152 MP:0
力 :112 魔力:0
物理防御:52 魔法防御:28
すばやさ:49 幸運 :13
スキル : 打撃 lv2 剣術 lv1 投てき lv10 槍術lv3 のぞき見 lv2
個性 : 物理的解決
称号 : 仕事を増やさない仕事人見習い
みんなに感謝できるひと
文化的最低限度の探求者(New) 』
『ゴブリンリーダー』を倒したところに赤茶けた剣が落ちていた。
これぞ銅の剣といった風貌だ。
これでようやく死蔵していたスキル剣術が役に立ちそうだ。
「強いな、ありがとう」
「助かりましたわ」
エルフというファンタジー要素満点な二人はよく見たら美少年少女で、耳が尖っている。
金髪緑の目で、女の子に至っては杖を持っている。
異世界に来たんだ…と実感を持って彼らを眺めた。
「はじめまして、私はカコ。ちょっと迷子になっちゃって、2人にあえて私も助かりました」
そういうと2人は目を合わせてから、シモンが私に言った。
「MP使って探知したら?」
「……MP0なんだよね」
「は?」
やめて美少年にそんな顔されると、とりあえず謝りたくなる日本人の気質で謝りたくなっちゃう。
お願いだから、凄まないで私を近くの人里まで連れてってください。
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