27.

 最低限の片付けを終え、文化祭は終わり、クラスの打ち上げも終わった夜。俺は自室のベッドの上でごろごろしながらあーあー喚いていた。小声で。

「明日……明日告白……ああー! 駄目! そわそわする! 怖い!!」

 ちらり、時計を見遣る。もうすぐ日付が替わる。ひー、と悲鳴が漏れた。

 日課となった利香先輩へのラインをしていた時は、まだ平気だったのに。告白するのだと意識した途端にこれだ。死ぬかもしれない。

 枕を抱えて顔を埋めた。

「ううー……これじゃ眠れない……」

 酷く不安で、心細くて、切なくて、とても安眠出来る心地ではなかった。眠気も来ず、何度も寝返りを打っては溜息を吐く。

 結局俺は、昇って来た太陽におやすみなさいをした。

 起きた頃にはお昼間近で、演劇部の打ち上げの時間が迫っていた。時計を見て目を見開く。がばっと起き上がって、慌てた。

「何で起こしてくれなかったのー!」

 母に苦情をいいながら急いで身支度を整える。

「起こしたわよ、何回も」

「嘘!」

「本当」

「でも起きてない! 起こした内に入らない!」

 我ながら滅茶苦茶をいっている自覚はあるが、八つ当たりせずには居られなかった。

 部屋を出ようとして、はっと気付く。利香先輩に貰ったネックレスをして行きたい!

 急停止して回れ右、手早く海を切り取ったかの様なネックレスをして、今度こそ部屋を出た。

「カラオケ、十四時からでしょ? うちからなら自転車で十分くらいなんだから、まだ二時間近くあるわ。お昼食べてくでしょう?」

 リビングで母が焼き立てのトーストが乗った皿を手にいう。

「……そっか、十四時だっけ。そうだよね、二時だ、十二時と勘違いしてた」

 ほっと一安心してテーブルに着く。トーストとサラダ、カップスープが運ばれて来た。

「本当に遅刻しそうだったら、ちゃーんと叩き起こしてたわよ」

「ですよねー」

 噛り付いたトーストが、さくっと音を立てた。

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