24.
それからは平和に日々が過ぎた。文化祭のクラス準備に演劇部準備と、多忙ではあったが。
爆発しそうになる利香先輩への思いは四ツ木先輩にぶつける事で発散し、何とか告白せずに済んでいたのだから、平和といっても全く過言ではない。時々休みの日に利香先輩と会う事もあって、幸せの絶頂という感じで日々を過ごした。
書割も出来上がり、衣装も出来上がり、今日は体育館のステージで道具も使った通し稽古の日だった。バスケ部などには一時的にご退場願う。廊下でダッシュでもしていてくれ。
男装した利香先輩はとても素敵だった。輝いていた。生き生きと動き、朗々と語り、明々として見える。本当に、利香先輩だけに色が付いた様な、そんな風に俺には見えた。
ぽうっとしていると顧問が拍手をして、他の部員も拍手をして、利香先輩が満足げな顔をする。俺も慌てて手を叩いた。
「これなら大丈夫そうだな。みんな、ここまで良く頑張った」
九十九先生がいうと、みんな安心した様な顔で互いを見た。九十九先生は演劇の経験は無いといっていたが、とてもそうは思えない劇の出来だと俺でさえ思う。利香先輩の力かもしれないと、思った。
本番まで一ヶ月を切った。そしてそれはそのまんま、俺が利香先輩へする告白へのカウントダウンでもあった。
毎日なるべくいつも通りに振る舞い、帰宅しては四ツ木先輩にラインをして、勿論利香先輩へのラインも忘れない。そして寝る前には告白の言葉を考える。
出来るだけ生々しくなくて、憧れの延長って感じが良い。いやしかし、それだと「君のそれはただの憧れだよ」とフラれてしまう可能性が高い。それは出来れば避けたい。本当に、彼女を愛しているのだと、伝えたい。
じゃあ、シンプルなのが良いだろうか。「好きです、付き合ってください!」とか?
四ツ木先輩には、頑張って利香先輩への好感度を上げておく様にいわれていた。その方が告白の成功率が上がるだろうという。確かに嫌いじゃない相手からの告白は無下に出来ないだろう。それに、利香先輩とずっと一緒に居た四ツ木先輩がいうなら、間違い無い気がした。
しかし、好感度の上げ方とは。
良く分からないので、これまで通りなるべくラインを毎日送って、「私」の事を意識させる事に努めた。
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