19.
夏休みが終わろうとしている。今日は水曜日ではないが、明日から二学期が始まるという事で練習は休みだった。始業式の日も練習は休みだから、暫く利香先輩の演技はお預けだ。少し残念。
俺はというと、早朝から残っていた宿題を慌てて片付けているのだった。
「終わんねー!」
思わず言葉遣いも雑になる。母に聞かれようものなら、こら、と怒られてしまうところだ。
俺が前世の記憶を思い出した時、うっかり自分の事を俺、と声に出していった際は反抗期かと泣かれた事を思い出す。母はちょっとばかし繊細なのだ。
さてもうかれこれ三時間程宿題と格闘しているが、終わりが見えて来ない。
不意に、スマホがてけてんと鳴った。
「お? この忙しいのに誰だ?」
見ると利香先輩からで、今日は暇かと訊ねる内容だった。
暇かと問われれば、否と答えるのが正しい現状だろう。がしかし、利香先輩からの連絡だ。暇と答えるのが正しい。正義は利香先輩にあり。
『暇です!!!!』
間髪入れずに返信する。するとすぐに返信が来た。
『よかったら遊びに行かない?』
『ちょっと買い物して、あとはお茶するくらいなんだけど』
『ひとりで買い物するの寂しいから、付き合って欲しいな』
『喫茶店おごるから!』
猫がお願いするスタンプが送られて来る。
つつつ付き合って!?
いや、意味が違うのは分かっているが、どぎまぎしてしまう。だって好きなんだもん!
我ながら阿呆の様だが仕方が無い。恋は人を阿呆にするのだ。
『お任せください! どこに行くんですか?」
高速で返信を送る。
『こっちにきてもらっていい?』
『駅まで迎えにいくから。何時ごろこれそう?』
すかさずスマホで時刻表を開いて、電車の時間を確認する。
急げば九時半頃の電車に乗れそうだ。そうすると十時頃着くから、丁度お店の開く時間になる。その旨を返信すると、じゃあ駅の改札前で、と返信が来たので、俺は超速で着替えて鞄を引っ掴み、出掛けると母に告げて自転車に飛び乗った。
宿題? んなもん徹夜だ徹夜!
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