18.
月曜日、練習ではいつも通り出来た、と思う。正直いって、この気持ちを確信してしまってから利香先輩の顔を見るだけでどきどきしてしまったが、それでも憧れ強めの後輩、程度のテンションで居られたと思う。……多分。
お昼ご飯は利香先輩と四ツ木先輩と三人で、これまたいつも通り。だったと思いたい。そして俺は、これ以上黙って居られない事に気付いていた。気持ちに蓋は出来ない。いわずには居られない。
帰宅後、四ツ木先輩が家に着くだろう時間を見計らってラインをした。
『だめです、もう黙っていられません』
『告白したいいぃ』
そう送って、ベッドの上にごろりと横になる。頭の横に置いたスマホが、数分経っててけてんと鳴った。
『すればいいじゃん。引かれはしないと思うぞ』
他人事だと思って!
『でも、絶対気まずくなるじゃないですか! 私が同性の後輩から告白されたらかなり戸惑いますよ』
その同性が、男である事は黙っておく。
『告白が成功する可能性は考えないんだ?』
四ツ木先輩からの返信に、ぴたりと動きを止める。
成功……? 何をいっているのだ、四ツ木先輩は。
いや、四ツ木先輩がそんな事をいうという事は、もしかして、脈が全く無い訳では無い……?
『四ツ木先輩からみて、脈があると思いますか』
少し間が空く。
『0じゃない、と思う』
ゼロじゃない……それはつまり、希望は持たない方が良い、という事ではないか。だって何パーセントも確率が無いって事だろう?
『ほぼ絶望的じゃないですかあ!』
『当たって砕けろ』
『ひとごとだと思ってえ!』
『ひとごとだからな』
『ちくしょう!』
そんな遣り取りをしながら、万が一、いや億が一くらいの可能性はあるのかもしれないと思うと、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ気持ちが明るくなった。
だが、告白について真面目に考えようとすると浮足立ってしまう。
『とにかく、どうするかはもう少し考えてみます』
『まあ勢いであるとき突然いっちゃうかもですが』
『フラれたらなぐさめてくださいね?』
また間が空く。今度は結構長めに。
『フラれたら、駅前の喫茶店でパフェおごってやるよ』
ちょっと間が気になったが、わーいと返して相談は終わった。
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