16.

 映画が終わり、パンフレットを買ってお昼とは別の喫茶店に入る。感想を殆ど俺が一方的に話して、それに利香先輩が相槌を打ってくれる形で暫し話をした。それからまだ帰るには早いという事で、駅内をぶらぶらと見て回る。沢山の店が入っていて、アクセサリーや化粧品、衣服、雑貨などが並んでいるのだ。時間潰しには丁度良い。

 利香先輩はフェミニンな物を好む様で、ふんわりしていたり、丸っぽかったりする物に心惹かれる様だった。色合いも淡めのピンクや紫がお好みらしい。プレゼントをする時には参考にしよう。……そういえば。

「利香先輩って、誕生日いつですか」

「四月十八日よ」

「うわ、遠い! 来年じゃないですか!」

 思わず上げそうになった悲鳴を飲み込んでいう。

「そうね。優依ちゃんはいつ?」

 見ていた服から視線を俺へと移す利香先輩。

「私は六月十日ですよ」

「あら、優依ちゃんも来年になっちゃうね」

「そうですね……」

 誕生日のお祝いと称してのプレゼントは来年までお預けか。まあ、今の関係が続けられれば、の話だが。今だってふわふわと笑う利香先輩が愛しくて胸が詰まる思いだというのに、来年まで黙って側になんて居られる気がしなかった。

 だからといって、この想いを打ち明ける気にはまだなれない。まだ確信が無かったし……いや、確信したくないのだ。確信したら、尚更黙ってはいられないだろう。俺は……「私」は、そういうタイプだ。

「六月十日って事は双子座ね。あはは、優依ちゃんっぽい」

「どういう意味です?」

「双子座って明るくて行動力があって、お喋りが好きな性格っていわれているのよ。社交的で、頭の回転が早くて、好奇心旺盛」

 星占い、というやつか。女の子は占いが好きだなあ。

「じゃあ、先輩の星座は?」

「牡羊座は実行力があって躊躇無く新しい事にチャレンジする、行き当たりばったりな人だよ」

「うわあ、利香先輩っぽい」

「薫君にもいわれたわ、それ」

 二人で笑い合う。

 その笑顔を見て、俺は四ツ木先輩に相談する事を決めた。

 一人で抱え切れないが、利香先輩にはまだいえない。四ツ木先輩を犠牲に、俺の心の平穏を召喚するのだ。

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