14.
木曜金曜といつも通りに練習をこなした。といっても俺は役が無いから、大道具小道具や衣装の準備、劇の流れの確認、あとは稽古を眺めるくらいだった。
利香先輩へのラインもいつも通り帰宅後から寝るまでの間にゆるゆると交わして、四ツ木先輩にちょっと意地悪をしたり、本当にいつも通りだった。
何故って、どうやってって、もう、考えるのをやめたのだ。
デートは決まっている。じたばたしてもどうしようもない。それに、まだ利香先輩を恋愛対象として見ているのか、自信が持てないのだ。だったら、確信出来るまでは考えたってしょうがない。その内俺は考えるのをやめた。
――つまりは現実逃避である。
ああ、ああ、俺はヘタレさ。笑ってくれても結構!
けれど、君が同じ立場だったら、自信を持って彼女を、利香先輩を好きといえるだろうか。四ツ木先輩に何の躊躇いも無く相談出来るだろうか。……告白、出来るだろうか。
出来る者だけが俺に石を投げるが良い!
そんな風に開き直って二日間を過ごし、土曜日。一人で居ると(専業主婦の母が居るので正確には一人ではないが)色々と考えてしまうので、友達数名に誘われるままプールへとやって来た。着替えの際、やっぱり罪悪感と気恥ずかしさを覚えたが、そんな物は無視だ、見ない聞かない考えない。
さっさと着替えてプールサイドで友達を待った。
「優衣って、体育の時もだけど、着替えめっちゃ早いよね」
少し遅れて出て来た友達の言葉に、苦笑気味に笑う。
そりゃあそうだ、なるべく見ない為に中学時代早着替えの技術を磨いたのだから。とても女の子同士の様にきゃっきゃしながら着替えられない。幾ら無心を心がけたって、男だった前世の記憶が色濃い俺には無理がある。
……色濃い、というより色恋か。もう彼女との事以外、随分と曖昧になってしまった記憶に思いを馳せる。
「おーい、優依、どこ見てんの?」
「えっ……いや、今日も暑いなーと思って」
「プール内は快適温度だけどね!」
あはは、と友達と笑い合う。
その日は利香先輩の事も忘れて、友達と楽しく過ごした。
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