8.
夏休みも半ばに入った。俺は利香先輩と順調に仲良くなり、毎日ラインをする様になっていた。残念ながら利香先輩の通学路と俺の通学路は重ならないので登下校デートにはならなかったが。
利香先輩は電車通学で、隣町から通っている。だから駅から学校に来ているのだが、雑にいうと駅から進んで学校、そこから曲がって更に進むと俺の家、という配置になる為、どう頑張っても校門まで会えないのだ。
そもそも四ツ木部長が居るのだから、通学路が重なってもデートにはならないか。残念だ。非常に。
今日も今日とて校門前で利香先輩と合流する。電車で通う利香先輩はいつもほぼ同じ時間に着く、というのは簡単に予想出来た為、最初にたまたま合流して以来、わざと同じ時間に着く様にしているのだ。
「利香先輩! おはようございます。ついでに四ツ木部長も」
「おはよう、優依ちゃん」
「俺はついでかよ!」
そんな遣り取りももう何回目だろう。あははと笑って、二人の横に並び立って歩く。
「っていうか、その部長ってやめない? 俺も先輩って呼んでよ」
四ツ木部長の言葉に、ぱちくりと瞬きをする。
「どうしてです。部長なんだから、部長で良いじゃないですか」
「部長よりも、先輩って呼ばれたいのよね。その方が萌えるのよね?」
四ツ木部長の代わりに、揶揄う様なニュアンスで利香先輩が答える。萌え……良く分からない気持ちだ。いや、もしかして俺の利香先輩への気持ちは恋じゃなくて萌えなのか。この利香先輩を天使と思う気持ちが萌えなのか!
「萌えっていうなよ。まあ要約するとそういう感じなんだけど。それに部長らしい事はなーんもしてないのに、部長って呼ばれるの、ちょっとな」
ぽりぽりと頬を掻きながら、四ツ木部長がいう。
「萌えですか、それは大事ですね。じゃあ四ツ木先輩。先輩はちゃーんと部長してますよ! 暴走しがちな副部長を支える素晴らしい人です」
「そうか?」
「ちょっと、その暴走しがちな副部長って、私の事?」
頬を膨らませる利香先輩が可愛くて生きるのがつらい。
えへへ~と笑って誤魔化して、一緒に玄関扉を潜った。
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