7.

「利香先輩はどういう作品が好きなんですか」

 休憩時間、ちょこちょこと利香先輩に近付き、ちゃっかり隣に腰を下ろして訊いてみた。デートは映画に誘おうと計画しているので、その為のリサーチである。

 演劇部を立ち上げるくらいだから舞台の方が良いかとも思ったが、映画の方が気楽だしデートっぽい、という理由である。安易。

 利香先輩は少し考える様に視線を宙に彷徨わせた。

「結構何でも見るけれど、でも、オチがすっきりするのが好きかな。続きがある風だったり、何だかもやもやが残る様な終わり方はあんまり」

 小首を傾げていう先輩が可愛くて以下略。天使か。

「舞台とか、良く見ます?」

「舞台はあんまり。ほんとは色々見たいんだけど、舞台って時間が遅いものや、結構拘束時間が長いものが多いでしょう? それよりも手軽な映画とかに行きがちかな」

「成程。確かに舞台は三時間とかあるのが多いですもんね。映画なら二時間前後なのに」

 ふむふむと頷く。

 帰ったら今やっている映画と、近々上映開始する映画を調べねば。

 利香先輩ならアクション物よりも、ストーリーを重視した物や、ファンタジーが似合う気がした。その辺りで何か良い映画があると良いのだが。オチのすっきりしたもの。ふむ。

「優衣ちゃんはどういうのが好きなの」

 問い返されて、目をぱちくりさせた。

「うーん……ハッピーエンドの恋愛物ですかね。二人が結ばれて幸せに暮らしましたー的なやつ」

 首を捻りながら答える。前世の自分が悲恋で終わったからか、それが真っ先に出てきた。

 その瞬間、前世での彼女との思い出がぶわっと頭の中を過って愛しさと切なさが込み上げてくる。確かにハッピーエンドの恋愛物は好きだけれど、それは「俺」ではなく「私」の嗜好だ。「俺」自身はどこかその登場人物達が羨ましくて、実は恋愛物を見るのも読むのも避けてきたのだった。

 前世の記憶を取り戻す前は、確かに好きだったのだけれど。

「あとは笑える話が好きです。やっぱり楽しい方が良いじゃないですか」

 自分の気持ちを誤魔化す様に、笑った。

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