4.

「利香先輩って呼んで良いですか」

 座って休憩していた先輩の横に腰を下ろしながら、どきどきしながらお願いしてみると、彼女はええ、と快諾してくれた。

「利香先輩はどうして演劇部を立ち上げたんですか?」

「演劇がやりたかったんだけど、でも、ここ演劇部が無かったんだもの。じゃあ、作るか、ってなるじゃない」

「凄い行動力ですね! 見習いたいです」

「ありがとう」

 ふふ、と笑う利香先輩が可愛くてノックアウトされる。思わず額に手の甲を当てて天を仰いだ。

「どうしたの」

「何でもないです……」

 今風にいうなら、利香先輩マジ天使。尊い……。

「部長とは仲が良いんですか。利香先輩が部長を頼んだって聞きましたけど」

 気を取り直して話を続ける。

「ああ、薫君とは家が近所で、幼馴染なの。部長を頼んだっていうのはちょっと違うかな。部を立ち上げるには五人以上必要だったから、名前だけでも貸してってお願いしたら、普通に入部してくれたんだよ。その上唯一の三年だからって、部長まで引き受けてくれて」

「そうなんですね、良い人だなあ四ツ木部長……」

「そうなの、良い人なの。学校祭で引退だから、役者として劇に参加したらっていっても、俺は演技は無理だから、ちゃんと出来る人がやるべきだっていって。先輩風吹かせたりもしないし」

 そう話す利香先輩はとても嬉しそうで、ちくりと胸が痛んだ。

「……好きなんですか」

 意を決して訊いてみる。まさか、と彼女は首をぶんぶん横に振った。

「小さい頃から一緒だから、兄妹みたいなものだよ。恋愛感情なんてお互いゼロ」

 その答えに心底ほっとしながら、そうなんですか、とだけ相槌を打った。

「練習再開するよ!」

 顧問の先生の声に、俺と利香先輩は腰を上げた。

 彼女と話していて、やっぱり俺は彼女が好きなのかな、と、何となく思った。

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