外つ歌:自動歩兵の出撃

 少年が指を鳴らすと、砂漠の底に眠っていたF型宇宙旅客船の上陸ハッチが長年の砂を払い落としながら姿を見せました。、二〇〇mを越える船体は今ではもう作ることのできない技術で銀色に輝いており、太陽の輝きを反射して、いっとき、世界が眩く輝き出しました。

 少年は声を掛けました。

--冷凍睡眠の霜も取れていないうちに済まないが、出番だ。

--アイアイサー。


 その続々と現れたのは、薄い板を箱状に組み合わせたモノコックフレーム、余裕ある機体に小さな防弾燃料タンクを機体後部に装備、八輪のランフラットタイヤを装備した偵察装甲車たちでした。その数は七〇あまり。小さな銃塔に機関銃と対空ミサイルを装備し、センサーだけは高性能のものを装備した装甲車です。


 少しだけ専門的に言えば、こうです。タンクキャリアーを使わず自力での戦略移動可能な偵察兵員輸送車が続々と放たれた。 ということです。


 商人と黒すぎて青く見える髪の少年の横を駆け抜け、大きな防弾タイヤを履いた装甲車たちが走って行きました。

 夜を徹しての強行軍のあと、装甲車たちは砂漠を抜け、朝日が昇る頃には草原に散り、センサーマストを立てて村々の捜索救難を開始していました。


 その中の一車、0501モチノキ号の話をしましょう。

 アルミ装甲を生かして浮航性のある舟形車体で渡河し、セプテントリオンの偵察機を肩持ちの対空ミサイルで撃墜すると、時速一六〇kmで草原を渡る船のように走り、ついには村の一つにたどり着きました。


 車長のマルミさん二五歳独身眼鏡のインテリ中年好きは、センサーで村人が虐殺されつつあることを知ると、名前だけは鉄の帽子である複合材でできた鉄帽の顎紐が揺れるのも構わずハンドルを切って敵に尻を見せました。


--自動歩兵分隊、前へ!

--アイアイサー!

 丸い、ころころとした小型自動歩兵たちを二列八機、ころころと車体後部のランプドアから転げ落ちて整列すると細い作業用アームで敬礼しました。


--自動歩兵分隊、前進、戦闘開始! 虐殺を阻止! 急げ!

--ガンバリマス ><!

 猛然ところころ転がって、自動歩兵たちは村に乱入しました。

 そして不死者ケンジがいやらしい笑顔で姉と弟に歩きよるその前に、スピンして止まると、正義に燃える二つのヘッドランプを点灯しました。


--そこまでだ。

--なんだおめぇ。


--名乗るほどの自動歩兵ではない。だが、昔から人間たちに可愛がられて来た人間の友とだけは名乗っておこう。

 ケンジが大口を開けて大笑いする前に永久冷凍弾が噴射されて一瞬で凍り付きました。


--こちら自動歩兵0501A、クリア

--こちら自動歩兵0501C、交戦中。クリア

--こちら自動歩兵0501D、クリア

 続々とあがる報告を聞きながら、自動歩兵は姉弟に話しかけました。


--いつか、いつの日か君たちの子孫が人類以外の友を作る。人は人だけではない。寂しくはない。それは確実だ。だから……

--今は強く生きろ。それでもダメなら、”青”がいる。


 自動歩兵は来た時と同じくらい唐突にころころ転がって去って行きました。このようなことが無数に、いくつも起きていました。草原のあらゆるところから、不死者は取り除かれていったのです。

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