外つ歌 青い髪の軍勢の帰還

 商人のもとに、大量の手紙が届きはじめたのは、商人が犬の似顔絵を描いて二〇日ほどもたっての話です。

 届いてくるくるのは何度も蘇っては乱暴狼藉をする二人組の話ばかり。人は仔犬の事どころではないようでした。

--人が仔犬の事を心配できるようにしないといけないね。

 商人は呟くと、小箱と猫を前に食事もおろそかになっているマヘラ姉ちゃんではなく、ちょっと微笑んでサンドワームや古代兵器を狩っているピロット族の元へ足を運びました。


 ピロット族とは人魚の末裔とされる砂漠の狩人です。古くからの技術を受け継いで大太郎法師の製法や運用を行っていました。どこの国にもつかず、どこの勢力にも味方せず、正義最後の砦と自ら名付けた大地に突き刺さった金属の砦で、長い長い時を待ち続けておりました。いつか邪悪がはびこるとき、悪しき企みのことごとく、深い悲しみのことごとく、二〇mmチェーンガンでめったやたらに吹き飛ばすために。


--時が来ましたぞ。おのおのがた。人は僅かな優しさも忘れかけております。

 商人が砂の大地に手を付けて呼びかけると、にわかに地面が割れて続々と砂を滝のように落としながら大太郎法師たちが目を覚ましました。


 その内の一機、頭部の露玉虫型操縦槽の冷凍が解けて、少年が一人ひょっこりと顔を見せました。

--その声は……ホンマかい。

--左様でございます。

--老けたね。

 身も蓋もない言葉に、商人はいい笑顔を見せました。

--北方大戦乱から、もう三〇年は経ちましたからな。しかし、あの日の誓いはここに。この中に。

 商人は己の胸を軽く叩きました。三〇年分の分厚い重い音がしました。少年は黒すぎて青く見える髪を振って笑うと、商人に抱きつき、では戦おうと耳元にささやきました。


--邪悪なものと本来戦うのは、この世の誰でもない、僕たちだ。



NEXTGAME:タンコグラード

Start 2019/1/1

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