外つ歌:ヨシュアの戦車戦

 とりあえず、草原の遊牧民の村を回ろうと、ヨシュアとグロリカは歩き出しました。遊牧民がどこにいるかは分かりませんが、煮炊きする煙を見ればそれと分かるだろうという考えでした。

 彼らが村を見つけるより早く、彼らを見つけたのは装甲車です。装甲車の名前をスーパーカレン二世号と言い、パイロットはフジスズーと言いました。

 敵の、不死者たちの反撃が予想されるためにつけたボルト止めの増加装甲と、自動歩兵を下ろして代わりに全自動決め台詞詠唱装置付き超高速ミサイルチューブをつけた騎兵戦仕様の機材です。主砲の二〇mmチェーンガンは、凜々しく空を向いていました。

 フジスズーは装甲車から伸ばしたセンサーマストから二人の姿を拾うと、慌てて車を走らせました。

--おーい。

 二人がびっくりしたのは疑うに及びません。中でもグロリカは、本当にびっくりしました。タイヤのついた車など、もう何年も見ていなかったのです。

 ハッチを開けてフジスズーは身を乗り出しました。

--この付近は多分戦場になるから危ないよ。乗せてやるから逃げたほうが。

--一つ尋ねるが村を虐殺したのはお前たちか。

 ヨシュアが尋ねると、フジスズーは首を振りました。カーキ色の車体を叩いて口を開きます。

--この車の名前に掛けて、それはない。俺はそいつらのの敵だよ。

--奇遇だな。我々もその敵の敵だ。同行してもいいだろうか。

--いいとも。モノコックフレームの機材で良かったな。車内広いから三人でも平気さ。

 フジスズーはそう言って回転ベッド付きの車内に案内しました。


 ヨシュアとグロリカがフジスズーと出会った翌日、草原を自動歩兵と装甲車が制圧して三日も経たぬうちに、不死者たちの反撃がはじまりました。

 エアバイクに乗った襲撃兵が数千、その後ろを羊角の四本腕の化け物たちが数百という布陣です。


--村を襲った手口とは違うな。

 ヨシュアがセンサーよりも精度のいい裸眼で敵を観察しながら言うと、フジスズーは機関砲を対空自動射撃モードに切り替えながら頷きました。

--そっちを俺たちが邪魔したんで、手を変えてきたってところさ。

 フジスズーはエンジンを始動させて交戦位置を決めてそこまで移動すると、戦闘が開始されるまでを鼻歌を歌って過ごしました。


 戦闘は、機関砲がエアバイクを打ち落とした事ではじまりました。かなりの数のエアバイクが落とされ、同時に装甲車たちも無事とはいきませんでした。

 フジスズーにとって幸いだったのはグロリカがいたことで、グロリカは空中にいくつも鋼鉄の糸を引いてエアバイクたちを罠に掛け敵の侵入を許しませんでした。

「ワイヤートラップかー」

 フジスズーはそう言いながら照準器を覗いて、通常の戦車戦のレンジ外である六〇〇〇mの距離から超高速ミサイルによる迎撃戦を開始します。

 砲塔横に取り付けられたミサイルチューブから四発のミサイルが飛び出しました。加速しながら飛ぶミサイルは音速を超えて衝撃波を発しながらブースターと保護体を切り離し、細くて長い槍のような弾体をマッハ三で羊角の怪物たちに突き立て、否、貫通させ、衝撃波でばらばらに吹き飛ばしました。

--まともな撃ち合いじゃ、こっちがやられるってね。

 照準器から目を離さず、フジスズーが呟くと、横のヨシュアが頷きました。

--なるほど。ああやれば良いのだな。

--え?

 車体の上に出るとヨシュアは手に光の槍を出現させ、助走をつけて槍を投げました。

 光の速さで槍が飛び、羊角の頭をいくつも吹き飛ばしました。

--あらま、まさかの人外さん。

 フジスズーはそう言ったあと、まあいいか、もっとやれと言いました。

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