猫と犬の旅
猫の勇者コンラッドは犬のお供インディゴを連れて旅を続けていました。砂漠を越えて麦畑の地へ。麦の穂が風に揺れて、瞬間ここが砂漠の近くであることを忘れました。
インディゴは、揺れる麦に大興奮です。
インディゴは急いでユーラちゃんのところに帰らなきゃと言うわりに、すぐに動いているものが追いかけていく習性があり、コンラッドはそのたびにうんざりしていました。
--見て、あれはなんだろう?
--ちょうちょだ。追うんじゃない。
--これはなんだろう。
--俺の尻尾だ。ひっかくぞ。
コンラッドが歩くと、一〇〇mほど離れるとインディゴは必死に走って追いついてきました。何が楽しいかは分からないのですが、走っては休み、走っては休む歩き方が好きなのでした。
--楽しい旅だね。僕ドキドキしちゃう。
--走って舌見せてるだけだろ。
嫌味のつもりなのですが、インディゴは尻尾を痛いほど振って良く分かっていない様子。コンラッドは諦めて、至高女神の慈愛にかけて、とつぶやきました。
--至高女神って何?
--俺の国の神様だな。だいたい理不尽だが撫でる時は優しい。この世には無限の愛が確かにあって、それが俺の行く道を照らし続けている。
--なんでそんないい国から出てきたの? 迷った?
--一言で言えば難しいが。そうだな。
--愛されるだけでは猫はダメなんだよ。いや、それで十分な猫だっているが、俺は違った。無限の愛があることを、それを知らない者に教えに行こうと思った。そして今も教えの旅にある。信仰とは、そういうものだ。
--僕はユーラちゃんと散歩に行ったり、一緒に眠ったりしたいな。
--コンラッドは少し笑うと、剣の柄頭を肉球で叩いてまた歩き出しました。
--どこに行っているの?
--愛を信じるならば、知り合いの知り合いのそのまた知り合いで、六匹あたって行き当たらない猫はいないそうだ。
--でも僕、人間だよ?
--犬はいつもそう言うんだ。まあ、さしずめ人間なら10人あたればユーラちゃんのところに行けるだろう。
--そうなんだ!
インディゴは尻尾を勢いよく振りました。その後うっとりした顔になりました。
--ああ、ユーラちゃんはきっと心配しているよ。僕たち二日と離れた事なかったんだから。
そしてすぐにしょんぼりしました。
--ユーラちゃんが僕を必死に探していたらどうしよう。
--着いたぞ。あの煙が出ている家が角なしパン屋だ。
--焼けた小麦と菌の匂いがするね。菌はちょっと種類が違うみたい。窯の匂いからして動いていたのは朝早くかな。人間と、それっぽいのが二人いる。
コンラッドは犬はバカだと思っていたのでしたが、全然そんな感じでないしゃべり方に、ちょっと驚きました。
店の前でエプロンを洗っていた異族の少年がこちらに気づいて、声を上げているのが見えました。
「親方、猫が犬連れて歩いてる!」
「喋る猫がいるんだ、それぐらいで仕事さぼるな」
親方と言われたじいさんはコンラッドを見ると、なんだ喋る猫がやってんだからますますおかしくないだろと言いました。
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