外つ歌 組織の名はセプテントリオン

 星空を映した間には音もなく、ただ三〇〇〇の工作員達が並んで世界の終わりを傍観していました。

 リアルタイムに映し出される足下は太陽が惑星の形照らし、変わり果てた地表をさらしています。

 そこは羊角の人工の神、シープホーンたちによって実験的に破壊された一つの藩国でした。


--カマキリたちは良く抵抗してくれました。実験を終了します。

--実験に殉じた知性体に感謝を。


 感謝の印としてパイプオルガンの演奏がはじまりました。

 一つの世界が滅びるたびに、演奏が行われます。

 世界を一つの楽器のように奏でる演者と、彼らは自らの自称します。そうして世界を、より良くするための手伝いをすると言います。


 天から降り注ぐようなオルガンの音とともに、地表は黒煙と炎で包まれました。


 炎を踏みつけるように、一人の黒服がパイプオルガンの演奏者に声をかけました。

--気になることがあります。第一九世界でフットワーカーが撃退されました。

--ニーギ・ゴージャスブルーか。、

--いいえ。違う者のようです。

--そうか。世界を混乱に陥れる癌は、どこにでも発生するものだね。我々は世界を治療する医師として、世界を奏でる演者として、そういうものを取り除かねばならん。分かるね。

--新しい兵器を送ります。

--急ぎたまえ。我々は暇ではない。

 黒服は恭しく頭を下げると、そのまま霧となって姿を消しました。


 演奏を終え、長大な廊下を歩く演者に、黒服の一人が影のように従いました。

--EDの件は、いかがなさいますか? 少々独断が過ぎるようですが。

--ユードラか。あれはまだ若い。誰しも力を得た直後は独断をしたがるものだ。そしていくつかの国を滅ぼしたあとで、気づく。全てはむなしい。そして我々の大義にこそ、生きる道を見いだす。

--なるほど。

--あれは女だ。執心している男でもいるのではないか。それを失えば、むなしさに気づきもしよう。

--リチャードという者がおります。中々優秀なようです。我々の実験施設一つを破壊しております。また世界に絶望もしております。

--ほう。フットワーカーにはぴったりだね。

--いかが、なさいますか。

--殺してみようか。それで生き残れば、その時こそ我々の正しき道に導けば良い。

--承知、いたしました。


 とても優しそうな顔で演者は微笑むと、そのまま歩いて行きました。

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