傷ついた竜
飛んできた投げ槍は静日の脇腹、頭、太股を貫き、一撃で静日を絶命させてクェースの背中に縫い付けるはずでしたが、クェースは赤い八つの目で正確に敵性飛来物である槍を察知し、静日を守るために静日を振り落として居ました。必然槍はクェースの身体に刺さり、痛みにクェースは静日が聞いたこともないような叫びをあげました。
静日が目を回しながらクェースに走り寄るよりも先に、クェースは口を開けて、虚空に光の球をいくつもを出現させました。
光は目に見えない大量の紫外線を発生させ、紫外線は酸素をオゾンに変えて特有の悪臭を発生させました。
--竜の光だ……
槍を投げた農民達が放った最後の言葉はそれでした。
クェースは怒りにまかせて連続波レーザーを照射。人間の目に可視化できた光は僅かなものでしたが、首を動かした全方向に光の線が描かれ、直後に照射された全てが高熱で溶け、膨張し、爆発し、直線上の全部を火の海にしました。
実際のところ、クェースのレーザーはまだ竜が放つ物としては弱々しい、へろへろのものでした。クェースが体内で蓄積していたのは窒素でしたし、位相共役も行われておらず、ブルーミング現象対策をしたパルスレーザーでもありませんでした。
それでも。
それでも一回の砲戦で近隣の七つの村は数秒を必要とせず壊滅しました。クェースはレーザーの使い方を即座に学習して体内を作り替え始めました。もっと効率良く竜の光を放つ身体になろうとしたのです。
クェースがレーザー発振時に発生する強烈な磁界に頭痛と空気中に発生した莫大なオゾンに肺を焼かれながら、静日は泣きながらクェースにごめんねと言いました。痛くしてごめんね、森に帰れなくてごめんね、守ってやれなくてごめんね。
そして静日は意識を失いました。
森の生き物が一斉にクェースを恐れて移動を始めたのをクェースは無視し、 怒りの叫びを上げ続けながら敵性物として登録された人間を探しました。
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