ヨシュアと瞬

 ヨシュアはシープホーンを破壊し尽くすと、小太りの金髪とケンジの首を取ろうと無造作に近寄りました。ケンジが放った獣を面倒臭そうに槍で貫き、笑いもせずに槍を向けました。

--あの女はいいのか?

 小太りの金髪に言われてヨシュアははじめて表情を動かしました。

--あの女ならさらわれていったぞ。あちらの方だ。

 金髪の小太りは賭けに勝ちました。ヨシュアは背を向けて大跳躍、数キロメートルを飛んで行きました。

 後ろから撃とうとするケンジを手で押しとどめ、金髪の小太りは口を開きました。

--やめておけ。逆に殺されるだけだ。今の俺たちでは歯が立たない。今は退く。戦力を整える。


 一方その頃。

--逃してどうする。

心の中に語りかける竜の言葉を無視してヨシュアは歯噛みしました。瞬の前に降り立ち、光の槍を回して穂先を向けます。

 瞬は槍を無表情に見て、抱えていた猫たちとミサキを下ろしました。

 ミサキの瞳に涙を見つけて、ヨシュアは発作的に槍を突きました。車でも簡単にばらばらになる一撃を、瞬は躱し、逆にスリングをひいてヨシュアの眉間に狙いをつけました。


--気に食わない。

 瞬とヨシュアは同時に同じような感想を持ちました。

 ヨシュアから見て瞬はミサキと同じ黒髪であり、逃げるような卑怯者であり、女をさらう最低の男でした。

 瞬から見てヨシュアは栄子を思わせる金髪であり、小太りの敵と同じような存在であり、深く考えもせずに人を傷つけるような最低の男でした。

 そして同じ男であるというこの一点でヨシュアと瞬は互いを嫌いあいました。

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