人魚と彼女の少年

 昔、残り少なくなったシホウミの海に、一人の人魚がおりました。

 いつか人間が来るかもしれないと、そればかりを楽しみに、待つこと四〇〇〇年と少し。

 ある時目を覚ますと、自分のところに一人の少年がやって来ていました。

 ようやく人間がやって来たと、人魚はいそいそとヨモツヒラサカを登りました。

 かつて使っていた体はとっくの昔に干からびて灰になっていたので、新しい身体を作りました。


 それは銀に輝く鋼の巨体、永久不滅のエネルギーである縮退炉を搭載した、くはし大太郎法師でした。

 大太郎法師は両腕を広げて片足で立つと言いました。

 あぁ、やっと見つけてくれたんだね。さあ、大戦争を再開しようじゃないか。また、星空に無数の花を咲かせ、地をいくつもの光の球に変えながら、いつまでもいつまでも踊り続けよう。

 ところが人間はなんの興味もなく、やらねえよとだけ言って去っていこうとするではありませんか。それでは残念と大太郎法師はついていくことにしました。そのうち少年が戦う気になるのを気長に待つことにしたのです。


--とりあえず、君が私と戦うために武器がいるよね。反物質ミサイルか、レールガン探そう。N系惑星には生産施設あったよ。

--探さねえよ。

--はー、嘆かわしい最近の若者の戦争離れ。

--勝手に言ってろポンコツ。

--そうそう、その差別的精神が戦争を生むのさ、大事にして欲しいね。

--うっせえ。うぜえ。


 二人は悪口を交換しながら砂漠の果てを目指しました。


 

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