第13話

帰ってから先生に詳しく事情を話すと共に医務室でベルとコマチちゃんは治療を受けた。



ベルは硬化魔法のお陰で軽い打撲ですんだ。



問題はコマチちゃんのほうであった、あれから意識を取り戻さない。



先生曰く、魔力を限界まで使い果たした結果だという。



寝てれば魔力も回復して目覚めるだろうとのことだった。



「それにしてもこの本……少し厄介ね、禁呪書とかグリモワールの類いじゃないからしら」



「とりあえず学院で結界をはって厳重保存ってとこかしらね、王立図書館にはその編の経緯説明しとくわ」



「先生、あの私……学院の書庫の秘密部屋でコレと同じ本みたことあります」



私はおずおずと名乗りでる。



「学院の書庫に秘密部屋なんてあったかなぁ」



「ステラの見間違いじゃないの?」



治療の甲斐もあってかすっかり元気になり制服を着替えたベルが口を挟む。



「コマチが目覚めるまで暇だし行ってみる?」



ベルが興味本位で言い出す。



「まぁ教師をしてもこんな危ない本は所在を知っておかないとね」



結局私は案内を任され書庫に向かうのだった。



書庫の最奥、窓の光すら入らない薄暗い場所、古ぼけた本が立ち並ぶ。



「ここ、なんですけど……」



「う~んただの本棚しかないわねぇ、やっぱり見間違い?」



「も~先生まで!確か本がスイッチになっていたような」



3人で当たり一体の本を調べるが全く当たる気配はなかった。



「あ~もしかしたら時限式の魔法なのかも知れないわね~」



先生は首を傾げながら言い放つ。



「え、じゃあもう見れないってことですか?」



「たまたま開く時間にステラがいたってことになるわね~」



「まぁこの本は私が学院会議で提出しとくから安心して~」



「それにこの本についてもっと調べないといけないしね」



私達は書庫を後にし今日はもう寮で休めと言われたのでコマチちゃんが心配だが寮に帰ることにした。



「今日は大変だったね」



「そうね、私なんかボロボロだったし」



クスリとベルが笑う。



「笑い事じゃないよぉ、すっごく心配したんだからね!」



「あはは、ごめんごめんでも強化魔法のお陰で軽症ですんだしね」



「コマチが早く目覚めてくれるほうが心配だわ」



「そうだね、コマチちゃん一撃であのドラゴンを倒しちゃうほどすごい技もってたもんね」



「魔力を使い果たすくらいすごいみたいだしね、明日またお見舞いに行きましょう」



「さ、今日はもう寝るわよ」



「おやすみなさい、ベル」



「おやすみ、ステラ」



こうして二人は床についた。



翌朝、コマチちゃんが目覚めたというので二人は医務室へ急いだ。



「コマチ!」



「コマチちゃん!」



「コマチちゃん身体は大丈夫?どこか痛いとこない?」



私が心配して駆け寄る。



「ん……大丈夫、魔力使い果たして寝てただけ」



「そっかそれにしてもすごいわよねコマチ、あのドラゴンを一撃で仕留めるなんて」



ベルがうんうんと頷きながら語る。



「私、ああいう奴等向けの剣をたくさん持ってる、聖剣、魔剣、妖剣、邪剣、昨日だしたのもその一振り」



「えっ!コマチあんたあんなすごい剣をまだ何本も持ってるわけ?」



「そういう剣を集めるのが私の目的、ここに来たのもその情報が集まり易いから」



「そうだったんだ」



私は納得したように呟く。



「そりゃ言えないわけね、あんなドラゴンを倒す剣をたくさん持ってるなんて」



情報が行き渡ってしまえばそれを狙う輩が出てくるかもしれない。



そうなればコマチちゃんが狙われることになる、そういう情報は秘密にしておくべきだと判断したんだろう。



「そういえば体調は大丈夫なの?」



ベルがコマチちゃんに尋ねる、私も心配していた。



「大丈夫、でもあの剣を使うと魔力を全部もっていかれる」



「そっか、魔力切れで倒れちゃったんだもんね」



私が察するにあの剣のリスクは相当大きいようだ。



「でもこれで私達の初任務は成功ね!」



「うん、そうだね」



「お、揃ってるね~、貴方達の今回の任務についてなんだけど、例の本についてわかったことを報告しにきたの」



「な、何かわかったんですか?」



私は神妙に聞く。



「まず、例の魔本……起源が古すぎて不明な部分が多すぎて解析班も手を焼いてるけど、


 何らかの契約により伝説によるところの”悪魔”を呼び出して術者と融合し何でも望みを叶えるってことらしいわ」



「あれって悪魔だったの?ドラゴンだと思ったけど?」



ベルが口を挟む、先生は片手を上げてそれを制すると話を続ける。



「ドラゴン型の悪魔……といった所かしらね、と言っても不死身ではないことが今回の戦いで証明されたわ、



 術者が死ぬことによって悪魔は元いた世界へ帰るみたいね」



悪魔……私達が倒したあの男の人……



「先生!私達が倒した悪魔に乗り移られてた男の人って……」



先生が首を横に振って答える。



「解析班に回したけどただの死人よ、これといって何かでてきたわけじゃないわ」



「でも私が斬った時は確かにドラゴンだった……」



「あ~それと私達Bランク班全員に新しい任務がでたわ」



「に、任務、また?」



私は狼狽える。



「さっきの魔本を探し出し安全に持ち帰り封印すること、不可能ならば焼却処分も可」



「ええ~あんな危ない本探すんですか!?やめましょうよ~」



「まぁ聞いてベル、その為に私達教師が付き添うんだから安心して、まずは魔本の情報集めからよ」



こうして私達の魔本集めが始まるのだった……。

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