第11話
炭鉱の中は真っ暗だった、かといって灯りをつければ敵に見つかってしまう。
私達はベルに暗視の魔法をかけてもらい暗がりの中を進むことにした。
夜目が効くようになって当たりを見渡すと炭鉱は大きな石やらがゴロゴロしていた。
身を隠せる場所が多いのはいいが歩きにくい。
炭鉱はいくつも枝分かれしていてどの道を通ったのか見分けるのに苦労した。
幸運にもよく通る場所には足跡がいくつも残っていたのでそれを辿っていくことにする。
ところどころに落盤の後が中には新しいものとも思える落盤の後もあった。
「ねぇ大丈夫かなぁ……今にも崩れそうだけど……」
「しっ!灯りが見えたわ」
一瞬ドキッとする、この先に盗賊がいるのだ、相手が大勢だったらどうしよう……そんな不安がよぎる。
「大勢だったら引き返して先生を呼ぶ、少人数なら私達でやっちゃう、OK?]
ベルが小声で話す。
私とコマチちゃんは無言で頷いた。
灯りの先を覗いてみるとそこには小さなテーブルと椅子がおかれており、
そこにさっきの男が腰掛けて本の鍵を鍵開け道具で開けようと躍起になっていた。
「よし、一人だけ、手順はコマチが近接戦闘、私は補助、ステラはスライムでの捕縛を狙って」
「うん」
「わかった……」
遂に、遂に実際の戦闘が始まるのだと緊張した。
ベルの合図で一気に踏み込む。
「こら盗賊!その本を返しなさい!」
ベルが一番に啖呵を切る。
「何だお前ら!?……ははん、その制服さては魔法学院のやつらだな?」
「大人しく本を返してお縄につきなさい!」
「へっ誰がお前らみたいなひよっこの言いなりになるかっての!」
盗賊は本を持ち椅子から立ち上がるとこっちへ向き直る。
「くらえ!ストーンブラスト!」
「危ない!」
私はスライムを膜状に広げて皆を防御する。
「うそ、こいつ魔法が使えるの!?」
ベルは想定外だったようで驚いている。
その点私はストーンブラストは体験済だ、対処法はわかってる。
しかしこのいしつぶてが連射される中スライムマリオネットを使うのは至難の技である。
私達は即座に散開してターゲットが三人に集中しないように距離を取る。
「コマチちゃん何とか隙を作れない?」
「やってみるけど厳しい」
コマチちゃんも近付こうものなら容赦なく飛んでくるいしつぶてを切り落とすのにやっとだ。
ベルも土障壁を張ってその裏から動けないでいる。
相手は本を片手にこちらに集中している……なら!
「えいっ!」
私は横に転がりながらスライムを放つ。
「へっそんなもんに捕まるかよ」
盗賊はひらりと身をかわして避けた。
私はそのまま奥の椅子にスライムを吸着させ全力で引き戻す。
「ぐあぁ!」
盗賊は後ろからの衝撃は予期してなかったのかそのまま椅子の直撃を喰らう。
いしつぶてが途切れた刹那、コマチちゃんの峰打ちが盗賊のみぞおちに入る。
雷刀の電気ショックを喰らい盗賊はその場に倒れる。
「やったぁ!コマチちゃんすごい!」
「コマチやるわね」
「そんなことない、ステラが隙を作ってくれたお陰……」
三人で手を繋ぎあって喜ぶ。
「へっ、詰めが甘めぇぜお前ら……アースクエイク!」
突如盗賊が最後の力で魔法を放つ。
「えっ……」
その瞬間3人とも岩の隆起に弾き飛ばされる。
「きゃっ!まだ、反撃する余力が残ってたなんて……」
私はしまったとばかりに立ち上がろうとする。
「何考えてるの!こんな場所でアースクエイクなんて使ったら……」
ベルが叫ぶと同時に地響きが唸る。
ガラガラと音を立てて岩が崩れ落ちてきた。
私は咄嗟に両腕を左右に伸ばしスライムを放つ。
ベルとコマチちゃんを吸着させると私の元へ引き戻した。
その後スライムをドーム状に変形させて3人の身を守る。
しばらくして落盤が収まった、どうやら出口は塞がれてないらしい。
「皆大丈夫!?」
私は二人に様子を聞く。
「ええ」
「助かった……」
どうやら無事のようだ。
が、目の前には半身大きな岩の下敷きになり血みどろになった盗賊の男の姿があった。
後一歩遅かったら私達もああなっていたかもしれない、そんな恐怖がよぎる。
盗賊は瀕死の重症を負いながらも言葉を綴る。
「がはっ!お、俺はこんなところで死んでいい男じゃねぇ……この本で……大金を……」
血みどろの手で本に手を触れる。
すると本が光りだし鍵がガチャリと開いた。
そしてパラパラとページが捲られていく。
「汝の望みは何だ……本に触れ我と契約を結べ……」
なんと本が喋りだした。
「お、俺は……死にたくねぇ……大金を手にするまでは……」
バンっと手形を押すように本のページに手を置く。
「我が名はヴァラク……契約は完了した……汝の願い、聞き届けよう」
ぶわっと眩い光に男共々包まれていく……
そして光が消えたそこには大きな双頭のドラゴンが立ちはだかっていた。
「これは、俺なのか……素晴らしい!力が溢れてくるぞ!」
「え、何なのこれ……」
ベルも思わず声を失う
私とコマチちゃんもそこに現れたものに声を出せずにいた。
そう、それは恐怖そのものだった。
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