第10話

翌日、私達は先生からスクロールを受け取って学院門前に集合していた。



「さぁ初任務よ、ちゃちゃっと終わらせちゃいましょ」



「気合十分……」



「う、うん」



そんな会話をしていると乗り合い馬車がやってきた。



私達は馬車に乗り込む。



御者がムチを打つと馬車は音を立てて動き出した。



私は馬車の中でふと二人に目をやると、コマチちゃんは目を瞑ってうたた寝していた。



一方でベルは持ってきた道具の確認に余念がない。



私はため息混じりに馬車から空を見上げると灰色の雲が空を覆い始めていた。



そんな私達を乗せて馬車は街へと向かう。



森を抜け、草原を抜け、ようやくちらほらと人工物が見え始める。



そしてしばらく行くと背の高い城壁が連なっている。



そう、ここが行き先の街、商業都市コメルスだ。



がやがやとした市場。



たくさんの人々が、物品を買い求めにきている。



ところどころに大量に買い付けにきたのか、馬やロバの姿もみえる。



馬車は市場の中を通り抜け中央広場の停留所を目指す。



市場には季節の果物やおいしそうな料理屋が軒を連ねていた。



その匂いで目が覚めたのかコマチちゃんはぼーっと馬車の外を眺めている。



市場を抜けると中央広場に出る、停留所があり私達はそこで馬車を降りた。



「う~んどうしよっか?」



ベルが無計画そのものの表情で尋ねてくる。



「え、えーっとまずは情報収集かな?」



「情報、大事」



「じゃあどこか酒場かギルド探そっか」



私達は情報の集まりそうな場所をあたることにした。



手近に見つけた酒場のドアをベルが押し開ける。



ギィっという音と共に酒場の客の視線を集めた。



「あの~王立図書館から盗まれたってもの探してるんですけど」



「ここは嬢ちゃん達が来るような場所じゃねぇぜ」



髭面の恰幅の良い男がそう答える。



「盗賊を探してるの、何か情報はない?」



ベルは引き下がらずに言葉を続ける。



「……まずはなにか頼みな、それが礼儀ってもんだ」



「えーっとじゃあ私はミルク」



「わ、私カフェオレ」



「水」



私達が注文するとやれやれといった感じで飲み物を出す店主。



「盗品を探したけりゃ闇市を当たりな、最もそここそ嬢ちゃん達が行くような場所じゃねぇがな」



ため息をつきながら店主は答えた。



「闇市!きっとそこね!」



ぷはーっとミルクを飲み終えるとベルは銀貨をカウンターに置き私達が飲み終える前に酒場を出ていく。



「あっちょっとまって~」



私達も後に続く。



市場に出て薄暗い細い路地に入る、するとそこは何やら怪しげな店が立ち並ぶ街の裏の顔があった。



「そういえば盗まれたものって何なの?」



私が不思議そうに尋ねるとベルが答える。



「どうも魔導書らしくて、本を扱ってる店を尋ねてみましょう」



そういって魔法学院の依頼の証書を見せながら店を渡りあるいたが成果はなかった。



魔法学院の証書ともなればいくら闇市の住人でも隠し立てすれば国から罪に問われる。



闇市なんて危ない橋を渡っているなら尚更だ。



あまり関わりたくないといった様子だったがさっさと情報を開示してくれた。



「う~んこれといって情報がないわねぇ」



「どうしよう?」



行き詰まって困っていたところに一人の老婆が声を掛ける。



「今朝怪しげな鍵付きの本を売りにきた男を見たよ、値段をふっかけるもんだから追い返してやったけどね」



男の特徴を聞くとそれらしき男がいないか探し回ることになった。



そして街中探索を終え日も沈んだころ、市場の出口付近に怪しいフードを被った男が鍵の付いた本をもって街を出ようとしていた。



「あっあの人!」



私は思わず声を上げる。



「鍵付きの本、間違いないわね」



「追跡開始」



そういうと私達は男の後をつけることにした。



男は街をでて山の方へと向かっていった。



私達はマントに擬態化魔法をかけ後をつけていく。



しばらくいった所で男は古い炭鉱の中へ入っていった、どうやらアジトらしい。



日もすっかり暮れて夜になっていた。



「どうしよ、先生呼ぶ?」



私は不安そうに尋ねる。



「大丈夫よ、相手は一人っぽいし三人がかりでやれば捕まえられるわよ」



自信満々のベル。



「ねぇコマチちゃんはどう思う?」



終始無言だったコマチちゃんに聞いてみる。



「私はどっちでも、二人に従う」



「ほらコマチもこう言ってるし、それに盗賊を捕まえれば手柄も立てられるって算段よ」



もうベルは行く気満々だ、こうなっては止めようがない。



「そこまで言うなら……」



私は渋々従うことになった。

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