第9話
私達はあれから反復練習を繰り返していた。
「先生~私達ずっとこればっかり練習してるけど他の班みたいに任務ってないんですか~?」
ベルが不満をぶちまける。
「まだ貴方達は実戦に出せるレベルじゃないわ、それに依頼だって貴方達がこなせるようなものはないし、
う~ん何かあったかしらね~」
先生は首を傾げながら答える。
「確か王立図書館から盗難品の依頼がでてたわね」
「それ!それにしましょう!」
私も正直今の修練には飽き飽きしていたところだった。
「先生!私もそれ受けたいです!」
コマチちゃんも同じ意見なのか頷いている。
「え~でも私雑用があって同伴できないわよ~?」
「私達3人だけでも大丈夫ですって盗品の捜索なんか、泥棒をぱぱっと捕まえて終わり、ね?」
「そう簡単にいうけど私も私で貴方達の管理責任が……」
「そう固いこと言わずに、ね?先生」
「は~わかったわ、私の負けね、何かあったら救難スクロールを飛ばすのよ?」
「わかってますって、さぁ早くに任務に」
ベルは今か今かと待ちわびている。
「仕方ないわね~じゃあ手続きしてくるから」
「やったー!」
ベルは小さく跳び上がりながら喜ぶ。
「いくら簡単をはいっても任務は任務、気を抜かないように」
戻ってきた先生が諭すように言う。
「任務は明日からだから、今日はこのまま修練を続けるわよ」
「え~そんなぁ~」
ベルはガックリ肩を落とす。
私達はそれからも修練を続けることとなった。
私の課題は主にスライムのコントロール、接続した状態と切り離した状態のコントロールの向上が目的だ。
私は切り離したスライムを人型に保ち分身を作る。
やはり一度に作り出せるのは2体が限度のようだ。
スライムに擬態化魔法をかけてベルとコマチちゃんを作る
「あはは、二人にそっくり」
2体が限界というのは、私が操作できる分身が2体が限度というのもある。
タダの木偶人形を作るならもう少しは増やせそうだが。
「あら上手ね、擬態化魔法の使い方も上手いわ」
先生に褒められて少し嬉しくなる。
「スライムを人型にして擬態化魔法させるなんて中々斬新なアイデアね」
「えへへ、それほどでも……」
「その調子で頑張んなさい、後魔力が尽きないようになるべく絞れるように」
「はい!」
俄然やる気が出てくる、もっと強くなろう。
今まではスライムを使っている間は魔力を使うときは全力だったがペース配分を考えないといけない。
魔力調整しながらスライムを動かすのは難があったがこれに慣れないといけない。
スライムの動きが少々鈍くなるがそれを何とか操る。
基礎魔力の少ない節約に頼るしかないのだ。
コマチちゃんのほうを見ると素振りをしていたのを先生が何やらいうと小石を投げてそれを斬る練習に変わっていた。
「コマチちゃん!」
私は休憩がてらコマチちゃんに声をかける。
「ん……どうしたの?」
首を傾げながらコマチちゃんが答える。
「うん、ちょっと休憩しようと思って」
「わかった」
二人はゆっくり草原に腰を下ろす。
遠巻きにはベルが先生から指示を受け土壁に穴を空けている。
「コマチちゃんは前に大切なものを集める為にここに入ったっていってたけど、それってどんなの?」
「秘密……でもとっても大事……その情報がここなら集まりやすいと思った」
「はは、秘密かぁ……じゃあコマチちゃんの故郷のこと教えてよ」
「故郷……ここよりずっと遠い国、文化も全然違う」
遠い空を見上げながらコマチは語る。
「そうなんだ」
私は自分がまだ見ぬ土地を想像して相槌を打つ。
「私、そこで剣の修行をしてた。ずっと」
コマチちゃんの脳裏にはその風景が思い浮かんでいるのか、遠い空を眺めながらもどこか違う場所を見ているようだった。
「剣術の修行してたならここより剣士になったほうがよかったんじゃない?」
私は疑問に思ったことを述べる。
「最初にもいったけど、私、あるものを集めてる……それを探すのに一番手っ取り早いのがここだと思った。」
「そっか~早く見つかるといいね、私もできることがあれば手伝うよ」
「ありがと」
そういって二人は学院の外の草原で一息つく、ベルの修行風景を眺めながら。
「ちょっと二人共!何さぼってんのよ!」
ベルがこちらに気づいて息巻いてくる。
「あれ?休憩かな?ベル置いてけぼりくらっちゃったね~」
先生が呑気そうに話す。
「もう!休憩するなら私にもいってよ!」
「ごめんベル、あまりに熱心だったからつい」
「邪魔すると悪いと思った、ごめん」
怒られると思っていたが意外にもベルは笑顔で
「二人で何喋ってたの?私にも教えてよ~」
とすり寄ってきた。
隠し事にするつもりもないので今まで喋っていた経緯を話す。
「そうなんだ~コマチって剣士向きだと思ってたらやっぱり、でその探しものって見つかりそうなの?」
「全然」
「そっか、じゃあまだまだこれからってことね」
「ステラはスライム、コマチは剣技……」
「ほらそのためにライトニングスピア教えてあげてるんでしょ」
先生がフォローする。
「私って才能ないのかしら……」
ベルは涙目で愚痴をこぼす。
「本来ならAランクにでもならないと取得が難しいものをBランクが使えるのが異常なのよ」
「そ、そうなんですか……」
先生のフォローで持ち直すベル。
「あらそれにライトニングスピアも、Aランクにならないと覚えられないような高等魔法よ」
「そっか、そうなんだ!」
急に元気を取り戻す、現金なものだがそこも彼女の魅力の一つだった。
それから私達は修練に励んだ。
明日の任務に備えて、そう、それがどんなものかも知らずに……
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