第2話

私は母と二人、平民として暮らしてきた。



「お母さん、ただいま~」



元気よく私は家の扉をあける。



「はい、今日のお給料。それじゃ私部屋にいるから」



「あらあらその慌てようは本でも買ったのね」



すぐ見透かされてしまう



「兎に角、家事の手伝いはあとでやるから」



「いいのよ、お母さんやっとくからゆっくり本を楽しんでちょうだい」



「いいの?やったー」



私は元気よく返事するとそのまま部屋へ駆け込んだ。



どれくらい読み耽っていたのだろう、お母さんから呼び声がかかる。



「ステラ~ご飯できたわよ~」



「は~い」



私は本を畳んで部屋をでる。



今日の夕食はシチューだった、とんだご馳走に心が踊る。



「いただきます」



私は久々のご馳走を口いっぱいに頬張った。



「あのねステラ、あなたももう16でしょ、話しておかなければならないことがあるの」



食事の手を休め、ゴクリと聞き入る。



「貴方、お父さんに会いたい?」



「えっ!ど、どういうこと!?」



思いもしなかった言葉に頭がパニックになる



「今まで平民として暮らしてきたけど実はお母さんは貴族のお父さんの妾だったの、あなたの小さい時に別れたのだけど」



今まで合わなかった父と合うのだとわかると幼き日の記憶が蘇っていく。



目を見開き無心に聞き入る。



「もしあってみたいという気持ちがあるなら方法が一つだけあるわ」



「方法って……?」



「魔法学院に入って魔導士になることよ、そうすれば貴族と同等の階級を得ることができる、もちろんあなたの将来にとってもいい話よ


、こんな片田舎で平民として過ごすよりずっといいわ、だからステラさえ良ければ魔導士になってほしいと思うの、そのために入学金もこつこつ貯めて用意してあるわ」



様々な思慮が私の中を駆け巡る。父と会うかどうか…私は少し考えを巡らせた。



今までずっと母と二人で過ごしてきたのだ。父のことはもういないものだと思って考えもしなかったことだ。



父と会う…生きているのなら、会ってみようか。私の父親とても冷たく離れた関係だった。



母と私をおいてなにをしていたのか、思えばききたいことはたくさんある。



しかし同時に恐怖もあった。あの時のあの視線今思い出してもゾッとする。



しかし好奇心が恐怖心を上回った。



「名はプランタエール伯、今の貴方にとっては謁見もできないほど身分の上の人よ」



「わ、私もお父さんにあってみたい!それに一流の魔導士になってお母さんを楽させてあげたい!私、魔導士になるよ!」



父に会いたい部分もあるが、魔導士となって母に仕送りできればと考えていた。



「ありがとうステラ、期待しておくわ」



ふふっと笑みをこぼす。



「それでお父さんってどんな人だったの?」



「常に仕事熱心で魔法の研究ばかりしていたわ」



「それこそ上位の魔導士にでもならない限り謁見は不可能に近いわ、だって王宮魔導士だもの」



「じゃあなるよ!私、魔導士の中でもとびっきりの王宮魔導士に!」



「それでお父さんにあって一杯お話するよ!」



その夜……私は興奮で眠れずにいた、小さい頃別れてから会ったこともない父の存在を明かされ自分でも心の整理が追いついていない。



兎に角、魔法学院だ、そこに入学するのが大前提、妾とはいえ貴族の娘なのだから魔力は多分大丈夫だろう。



そんなことを考えながら眠りについた。



「それじゃあ行ってきます、お母さんちゃんと健康には気をつけてね」



「ステラ、あなたもいろいろな挫折にあうかもしれないけど諦めず頑張るのよ」



翌日、何度も振り返り手を振る娘を母は誇りに思いながら見送るのだった…

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