辺境に追放された妾の子はスライムでSSSランクになる ~落ちこぼれと言われた奴らの狂想曲~

@satoriikaruga

第1話



朝靄のかかる森の中を必死に走る少女達の姿があった



服には枝葉が纏わりつき擦り傷だらけでボロボロになっている



「殺される……誰か助けて……」



息切れに混じって声を絞り出す



少女の後を追うように黒い大きな影が荒々しく地面を踏みしめ迫りくる



「どうして……どうしてこんなことに……」



黒い影は木々をなぎ倒しながら少女達へと迫る



「このままじゃ全員やられちゃうわ、なんとかしないと」



「うん、足止めしながらじゃジリ貧になっちゃう」



「私……いい考えがある……夜明けと共に開けた場所に誘い込める?」



グオォォォォォッと後方で唸り声を上げながら着実に声は近づいてくる



「どうかしら、粘れればいいけどやるしかないわね」



「わ、私もその作戦に賭けてみたい」



「わかった……じゃあ……作戦を伝える」



そういいながら森を駆け抜けるペースを上げていく





そんな夢を見た気がする






私は病室のベッドに寝そべって天井を見上げていた。



小さい頃からずっとだ。



身体中にはいろんな管や線がつながっており機械が時折、音を鳴らす



窓から見える代わり映えの無い景色、花瓶には萎れた花が一輪刺さっている。



今日で16の誕生日だというのに誰も祝いにきていない。



私は重病を患っていて面会謝絶のときもおおい、そんな娘にどうして親が面会に来ようか。



私は自分が疎まれ避けられているのだと感じた。



もう看護師以外とは喋っていない。その萎れた一輪刺しが証拠だ。



私はもう必要とされて無いのだろう、そう思うと瞼が重くなってきた。



何だか眠くなるように意識が途切れ途切れになってゆく。



「……生、先生!……さんが!」



看護師の人の慌ただしい声がわずかに聞こえる



「バイタル戻らないか!電気ショックを使うぞ離れて!」



キュィーンという音の後にバチッと私の身体は跳ねた



「親御さんに連絡して!治療を……」



そこで私の意識は途切れた



「よぉ、今到着かい?」



黒いスーツを着こなした、顎からモミアゲまで髭がつながった体格の良いおじさんはそういう。



「貴方は誰?ここは?」



「あーめんどくさい話は無しだ、俺はあんたらから天使とか死神とか呼ばれてるものさ、アンタは死んだのさ」



「え、えぇぇ!」



「まぁそう焦りなさんな、取って喰おうってわけじゃないんだ」



「あんたに選択を与えに来た、まぁそれが役目なんでね」



「そうなんですか!」



少しホッとする、なにせ眼の前のものが死神だの天使だの信じられない、この真っ白な空間から早く出して欲しい。



「でだ、その選択というのが記憶を消してまたこの世界の赤ん坊として生まれるか、もしくは記憶を保ったまま異世界に転生するかだ」



いきなりの事でパニックになる、しかし自己という自我を失うのは怖い。



まだまだやりたいことはいっぱいあった。



「あの、記憶を保ったままってことは病気も一緒についてくるんですか?」



転生先でも病床生活なんてごめんだ。



「あーあれは大丈夫、転生するなら新しい健康なからだだよ、それに異世界は少子化でね、なるべくいいところの家に転生させてやれるぜ」



それをきいて安心した、ロクに見舞いにも来なくなった家族、私がいなくても平気だろう。どの道あの身体へは戻れないみたいだけど。



何より記憶が無くなって転生では私という自己が死ぬのと同じだ。



こんな恐怖はもう味わいたくない。



「私、異世界に転生します!」



「お、やっと腹くくったか、異世界人足りなくて苦労してたんだよ、じゃあ記憶はそのままに赤子から頑張るんだぞ」



そういって彼は私の額に手を当てると眩い光りを放った



眩い光りから目を開けると男の人と女の人が映っていた。



私は上手く声が出せずその場で泣きわめいた。



「よ~しよし、ステラはいい子ね~」



どうやらここでの私の名前はステラというらしい。



こんなふうに両親に愛されるのはいつ振りだろう。



こうして私は貴族屋敷の娘として生まれたことになった。



屋敷といってそう大きくはないようで父は別荘だといっていた。



前と違い自由に動くこの体は嬉しかった。ハイハイで本に近づいて読もうとするがこの世界の言語がわからない。



四苦八苦しながら私は毎日運動と勉強に励もうと努力する、まぁこの体ではできることが少なすぎるけど



そして3歳を迎えたころ、その頃には本もある程度読めるようになり私はこの世界のことが載っている文献を好んで読むようになった。



一年も経つと親の言ってる言葉も理解できるようになってきた。



そんな私が5歳の誕生日を迎えた時、お友達が出来た。



同じ貴族階級らしく大人達が話をしている間に子供だけで遊ぶよう言われ中庭へでた。



「私ステラ、貴方のお名前はなんていうの?」



「リ、リリアーナ」



「リリアーナ!いい名前!中庭を散策しましょう」



同じ貴族令嬢として二人が仲良くなるのに時間はかからなかった。



時折こうして親に付いてきては一緒に遊ぶのだった。



「リリアーナ、今日は素敵なプレゼントがあるの」



そういって鞄をゴソゴソ漁る。



「これ!」



2つ1組みの指輪を取り出した。



「これには精霊の加護が宿ってるんだって、お母さんから特注品でもらったの、つけてあげるね」



そういって翠の石のついた指輪をリリアーナにつけてあげる。



「あれ薬指じゃブカブカだ、人差し指につけよう、ほらとっても似合ってる」



「あ、その、ありがとう……」



少し照れくさいのか俯きがちにお礼をいう。



「私もブカブカだから人差し指!蒼いのがきれいでしょ」



そこには蒼の石がはめ込まれた指輪があった。



「これは二人の友情の印だよ!」



「うん、わかったわステラ」



お互いに手を握り合う。



その日と境にリリアーナと会うことはなくなった



原因不明の流感にかかったのだ。



幸い父は医者としても有名だったので治療をしてもらえた。



が、治療は難航したせいで私は3日ほど生死の境をさまよった。



父の投薬の甲斐もあってか病状が楽なっていった。



その後何故か父から魔法の修行をするように言われた。



父はたまにしか屋敷に帰ってこなかったがそれでも帰ってきた時は嬉しかった。



大魔導士で医療にも精通してて私の憧れの存在のはずだった。



言われた通りやってみたが上手く行かず失敗ばかりだった。



失望されたような眼でみられ私は硬直してしまう



何がいけなかったのか、もうチャンスは無いのか。



「あの、お父さん……」



「今日はもう休め……」



そのまま父は立ち去ってしまった。



しかしその1年後私達母子は屋敷を離れることになる。



「ねぇお母さん、お父さんはこないの?」



母は答えなかった。



幼い私自身それが何でなのかはわからなかったけど。



私は言われるがまま馬車に乗り込もうとした時二階にガラス窓から父がこちらを伺っていた。



その眼はとても冷たく私達を厄介者のように見下した眼をしていた。



馬車はガタゴトと揺れながらかなり遠くの地へ向かっているようだった。



「リリアーナあれからあえて無いけど元気にしてるかな」



つい言葉を漏らす。



母が「大丈夫よ、貴方と友達なんだからまたきっとどこかで会えるわ」



その言葉が何より私の支えになった。



ついた先は屋敷とも言えない普通の家に招き入れられた。



所謂一般庶民が使う家だ。



「ステラ、今日から私達はここで暮らすのよ」



「えっ」



突然の母の口調に私は驚いた。



いつも暮らしている別荘とは違い煤けていて、平民の家のようだった。



私達が体よく追い出されたと知ったのは後からのことであった。



それから月日は経ち。



そんな私も15歳になり母の家事手伝いをするようになっていった。



もちろん他にも雇われている。





その夜いつもとは違う夢をみていた。




白い天井、白いベッド、そこにいろんな機械でがんじがらめにされる私



「……けて、助けてお母さん」



「ステラ!ステラ!大丈夫?」



「怖かった、お母さん……」



ギュッと抱きしめてもらい鼓動が落ち着いていくのがわかる



常に管をつけられ寝そべっていた私にはこんな経験しかなかった。



優しく抱きしめてもらうのがこんなに嬉しいことだなんて思いもしなかった。



しばらく腕の中でぬくもりを感じていると



「慣れない環境のせいもあると思うわ、ゆっくり休んで」



そう優しい言葉をかけられるとホッとしてまた眠気がやってきた。



明日は私の16の誕生日だからか興奮して中々寝付けなかった

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