第17話 反乱軍

 僕は隣村の村長の家に預けられた。


「クルリーズ村が人間に襲われました」


 次の日の早朝、男の人が飛び込んできた。


「それ本当!」

「あ、キョウヤ様」


 それを聞いて僕は村長が止めるのを聞かずに走り出した。馬には乗れないので自分の足で走った。

 夕方日が暮れる前にクルリーズ村に着いた。幸い一本道だったので迷うことは無かった。

 家は全て焼けていた。まだあちこちから煙がくすぶっている。

 僕の歓迎会が開かれていた中央広場に皆は身を寄せ合っていた。


「ひどい、この村の人が何をしたって言うんだよ」


 村の人たちは皆ここに居るようだ。僕はその中に親しい少女の姿を探した。


「フェリルはフェリルはどこ?」


 集まっていた村の人の中から長老を見つけ聞いた。


「無事です、いまは多分・・・・・・」

「多分? 多分ってどういうこと?」

「フェリルとカリーナは人間に掴まりました。人質です」

「人質? この村から何か奪おうというの?」

「いえ、お金ではなくて、その・・・・・・」


 村人達は顔を見合わせる。僕の顔をちらちら見る。


「何だよ、隠してないではっきり言って」

「タケカワキョウノスケのひ孫を連れてこい、と」

「え、ぼく? 僕なんか何で」

「キョウノスケ様は今でも伝説となっている方です。反乱軍達はその存在に戦々恐々としているのでしょう」

「僕なんか、ただの落ちこぼれなのに」

「反乱軍にはそれがわからないのです。ただその存在におびえているのです」

「そっか、わかった。僕が行けばフェリルとカリーナは返してもらえるんだね。いくよ」

「いけません、キョウヤ様。あなたを二人の命には替えられません」

「でも行かないと二人はどうなるの」

「でも行けば、おそらくキョウヤ様の命はないものかと」

「そうか・・・・・・なんとかこっそり忍び込んで二人を救えないかな」

「お城には、救援を求めて使者をを出しました。でも、この村は見捨てられたものが住む村。おそらく救援は来ないでしょう」

「じゃあ、僕たちだけで二人を救わなければならないんだね」

「ですが、この村には戦えるものはいません」

「僕一人で行くよ、捕まったらそれでもいいさ。二人を解放してもらえるように頼んでみる」

「キョウヤ様、馬鹿なことはいわないで二人のことは忘れてください」

「二人を見捨てることなんかできない。これは、僕一人で勝手にやることだよ。念のため、ジェルのところに使いを出して。彼ならひょっとしたら助けてくれるかも知れない」

「ペルコレージ様ですか、わかりました」


 僕は一人で出かけた、先日狩りのときに見かけた反乱軍のいた場所に向かっていった。

 幸い見張りがいたのであとをこっそりついていった。

 行った先にはキャンプがあった。先日見たのより小さい。

 夜の闇に紛れて、こっそり近づく。どのテントに二人はいるんだろう、一つ一つ中に入って確かめてみるしかない。

テントの一つから人が出てきた、しまった見つかった。だが、それは僕の知り合いだった。


「ジャネット!」

「ケイタ?」


 彼女も僕を見て目を丸くした。さらに何か言おうとする前に、僕は彼女に近寄り抱きしめた。


「会いたかったよ、ジャネット!」

「あんた、なんで、こんなところに」


 僕はジャネットの体を離し、正面から彼女を見据えた。両手は彼女の肩を持っている。


「もちろん君に会いにさ、心配で心配で仕方なかった」


 この騒ぎを聞きつけてほかのテントから人が出てきた。


「なんだ敵襲か」

「その小僧はなんだジャネット」


 僕たちを屈強な男達が取り囲む。


「ううん、何でも無い。こいつのことは心配しないで」


 ジャネットは、男達に説明した。


「とりあえず、こっち来て」


 ジャネットは僕をテントに入れた。外ではジャネットが男を引っ張り込んだと男達が騒いでいる。


「何をしてんのよ、あんた!」


 その言葉にはちょっと怒気をはらんでいる。


「だからジャネットに会いに来たんだよ、僕を逃がして君が酷い目に遭っていないか心配で心配で成らなかった」


 彼女は大きくため息をついた。


「幸いここにはあんたを知ってる人はいないけど、いたら大変なことになるところだった」

「あ、そんなこと考えてもいなかった」

「のんきね、あんた。それに良く、私の居場所が分かったわね」

「偶然だよ、近くにはん・・・・・・革命軍が来ていると知って、ジャネットがどうなったかを聞いてみようと思って」

「それにしてもこんな夜中に来なくても良いのに」

「探していたら道に迷っちゃった、あはは」


 僕は頭をかいた。


「そういうあんたはあのあとどうしていたの」

「あそこを逃げたあと、結局行くところがないからまた魔族の奴隷してた」

「魔族の奴隷ってまさか、あんたまたペルゴレージのとこにいるんじゃ無いでしょうね」

「うん、当たり」


 僕は彼女に話を合わせた。


「じゃあケイタ、キョウノスケのひ孫の居場所を知っているわね。そいつは今どこにいるの」


 僕は彼女の言葉に少し考えている振りをした。


「キョウノスケのひ孫って京矢様の事? 京矢様は今どこにいる、と言ったって城の近くのペルゴレージ様のお屋敷に決まってるじゃないか」


 彼女はため息をついた。


「そうよね、おかしいと思ったのよ、そんな重要人物がこんな辺境の村に警備もつけずにいるなんて。彼女たちも知らない、そんな人物は見たこともないの一点張りだし」


 僕の心臓が大きく鼓動した。ジャネットの言う彼女たちというのはフェリルとカリーナに違いない。


「なになに、彼女たちって誰?」

「あんたには関係ないわ」

「そう・・・・・・」


 一旦食い下がった。何とかジャネットから二人の居場所を聞き出さなければ。

 そのとき僕のお腹がグ~と鳴った。朝、となり村を出てきてから何も食べていなかったことを思い出した。


「あんた、お腹すいてるの?」

「道に迷って今朝から何も食べてないんだ」

「しょうが無いわね、何か持ってきてあげるわ」

「ありがとう、ジャネット」


 彼女は出て行った。この隙に二人を探さなくては。僕は彼女の姿が見えなくなるのを待ってテントをでた。


「うわっ」


 テントをでた途端がっしりとした腕にがんじがらめにあった。まだ一歩も進んでいないうちに捕まってしまった。ギリギリと太い腕が僕の首が締めあげ、息が詰まり気が遠くなる。

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