第2話:ミドルフェイズ03

◆ Middle03/Scene Player――美裂 ◆



 ”ゾーン”の表層から、中層と呼ばれる境界面。

 敵の進行方向を概ね限定できる大通りで、UGNと軍の部隊はBTR装甲車やトラックから降車して布陣を始める。

 中でも目立つのは、レネゲイド波を放出する大型の箱型機材。

 機材から延びるケーブルに繋がれたマリアンナが意識を込めると、ごうんごうんと地鳴りのような音が響き始め――

 

 それにかれて”彼ら”が迷い出て来る。



GM:次はミドル戦闘。全員シーンに登場して、どうぞ。

イワン:(ダイスロール)……7点上昇。上がって来ました。

アンゲリーナ:こちらも7点上昇。

マリアンナ:(ダイスロール)……ぐはっ。8点上昇よ。侵蝕率65%でダイスボーナス入ったわ。

美裂:……9点。みんな高いわね。こっちは52%になったわ。

GM:さて、それでは機材のレネゲイド波に惹かれて敵がやってくる。君たちの勝利条件は、デバイサーが<RC>判定を行い、その累積達成値が40以上になることだ。敗北条件はないが、デバイサーがダメージを受けると<RC>判定の累積達成値が減少する。


 今回の戦闘では、多数の味方NPCとエネミーが登場するので、処理を軽くするためにエンゲージを以下の四つに設定した。



[エンゲージ1]――(5m)――[エンゲージ2]――(5m)――[エンゲージ3]


[サブ・エンゲージ]



 数字の付いたエンゲージが主戦場となり、これらは5m間隔で接続されている。

 そして「CoD:BO」のゾンビモードのように、各ラウンドごとに一定数のエネミーが登場してくるのだ。

 

 サブ・エンゲージは、主戦場から離れた味方NPC専用の場所だ。

 遠く離れたビルの屋上、砲兵陣地、戦闘爆撃機の待機する滑走路といったものをまとめている。


 PL間で話し合った結果、エンゲージへの配置は以下のようになった。


〇エンゲージ1:[戦車]

〇エンゲージ2:美裂、[土嚢]

〇エンゲージ3:イワン、マリアンナ、アンゲリーナ、[UGN支援班]

〇サブ・エンゲージ:[82mmモーター]


 ◆1st Round


GM:まず、セットアップ。[エンゲージ2]に白兵型ジャーム3体、[エンゲージ1]に妨害型が1体出現。

イワン:こちらは《戦術》。味方NPCも含めた全員のダイス+7個。


▼行動値


妨害型ジャーム×1    15

マリアンナ        8

イワン          8

美裂           7

アンゲリーナ       7

白兵型ジャーム×3    3


GM:それではイニシアチブプロセス、ここでNPC部隊が攻撃を行う。指示をどうぞ。


 82mm自動迫撃砲ヴァシレクが、クリップでまとめられた四発の標準型迫撃砲弾を速射――ジャームたちの足場を抉るように弾着する。

 気勢を削いだところで、T-90A戦車が125mm滑降砲を敵集団中央にぶち込み、かろうじて生き残っていた人獣型ジャームを、リディアがOSV-96で討ち取る。

「敵の数は減らしました、あとはお願いします」


イワン:強いなぁ……。

マリアンナ:「……任されたわ。できることはやってあげる」 次は私ね。<RC>判定行くわ。

GM:どうぞ。

マリアンナ:(ダイスロール)……達成値17か。ここで[UGN支援班]の《妖精の手》を使うわ。(ダイスロール)最終達成値は21ね。

美裂:良い感じ!

アンゲリーナ:一気に半分とはさすがね。

マリアンナ:「……こっちはもう少し掛かるわ。悪いけど持ちこたえて」


 次のイニシアチブキャラクターはイワンだったが、彼はここで待機。

 同じ行動値の美裂とアンゲリーナの手番となり、話し合ってアンゲリーナが先んじて行動することになった。


アンゲリーナ:目標は白兵型ジャーム。メジャーで『コンボ:速射』……(ダイスロール)達成値52!

GM:西洋剣相当の異形の腕でガード。

アンゲリーナ:ダメージは48! これでどう!?

GM:ガード値差し引いて44ダメージ……あ、戦闘不能!

アンゲリーナ:よっしゃ!

マリアンナ:やるわね。


 ここで1ラウンド目に登場した敵がすべて倒されたので、他PCの行動も終了し、2ラウンド目に移行した。


 ◆2nd Round


GM:次、2ラウンド目セットアップ。遠隔型ジャーム3体と妨害型ジャーム1体が[エンゲージ1]に、白兵型1体が[エンゲージ2]に登場。


▼行動値


妨害型ジャーム×1    15

遠隔型ジャーム×3    9

マリアンナ        8

イワン          8

美裂           7

アンゲリーナ       7

白兵型ジャーム×1    3


マリアンナ:新しい敵が出てきたわね。

イワン:これは優先して倒していきたいところ。《戦術》。

GM:では、イニシアチブ。ここで味方NPC一斉行動。指示をどうぞ。


 82mm自動迫撃砲を擁する砲兵部隊は、念のため逆襲に備えて陣地を転換てんかんしてから間接砲撃を再開。

 それに歩調を合わせて、先ほどと同じように戦車とスペツナズが追撃を加える。

 しかし、先ほどよりも敵が分散していたためか、討ち漏らしが多く、三種類のジャーム・トループが1体ずつ生き残ってしまう。


GM:次のイニシアチブキャラは妨害型ジャームだけど、攻撃手段がないので待機。遠隔型ジャームの攻撃。目標はマリアンナ。《焦熱の弾丸》で(ダイスロール)達成値12だ。

マリアンナ:ドッジを試みるけれど……ダメ、失敗。

イワン:マリアンナさんは僕が護る! カバーリング!

GM:22ダメージ。イエティのような姿のジャームが氷柱型の弾丸を口から吐き出すが、それがマリアンナに命中する直前、イワンが庇う。

イワン:「そのまま集中していて下さい、ッグゥゥ……!」

マリアンナ:「――ッ! アンタ……」 驚きつつもレネゲイドコントロールに集中するわ。

GM:イワンはカバーリングで[行動済み]になったので、次はマリアンナの手番だけど……。

マリアンナ:妨害型というのが気になるわね。オート型の妨害キャラかしら。他の人の攻撃でどうなるか、様子見するわ。


 行動値が同じアンゲリーナと美裂の行動順は、PL間の戦術を含めた話し合いの末、再びアンゲリーナの行動からとなった。


アンゲリーナ:私から先に動きます。妨害型ジャームに、『コンボ:速射』で攻撃!

GM:おっと、そこで妨害型ジャームが《フラッシュゲイズ》。命中判定のダイスを4個減らしてもらう。

マリアンナ:エフェクトの予想はドンピシャね。しかし、そっちに行ったか。


 余談であるが、マリアンナのPLは妨害型のキャラクターが大好きなんだとか。


アンゲリーナ:こっちに妨害が来た……!? (ダイスロール)達成値は25ね。

GM:《支配の領域》。最後のダイスの出目を1に変更。

美裂:うわっ、鬱陶うっとうしいわね、こいつっ!

アンゲリーナ:達成値19になりました(涙目)。……ダメージロールは走ったわね。26よ。

GM:むむ、戦闘不能。次は武蔵だ。


 しかし、美裂のコンボ攻撃はダメージロールが低迷して一歩届かず、攻撃対象の白兵型ジャームトループは生存。

 生存した白兵型ジャームは《獣の力》でスペツナズを攻撃し、マリアンナの手番に回る。


リディア:「くっ……こちらリディア、被弾しましたが問題ありません。戦闘を続行します」

美裂:自分が一歩及ばなかったばかりに……。

イワン:でも、これで、ウェーブは終了。――マリアンナさん!

マリアンナ:ここで決めたい所ね! <RC>判定行くわ。

イワン:ウェポンケースの効果で拳銃を装備、《支援射撃》でダイス+3個!

マリアンナ:支援助かるわ。……達成値は21! 累積達成値は42に達したわ!

GM:3ラウンド目までもつれこむと思っていたが……見事だ。勝利条件を達成。戦闘終了!


 マリアンナが再び意志とレネゲイドを込めて、機材に転送する――。

 すると、各人が所有する情報端末が振動して、デジタルマップに赤い円が表示される。

 各種情報から得られた”マインドジャマー”の予想位置だが――その発信源は地下深くにあるようだ。


マリアンナ:「――ッ! 特定できた! でもこれって……」

リディア:「発信源は、地下深く……しかも範囲が数キロ単位でしか絞りこめていないので、空爆も難しい。あなたたちが直接行くしかないでしょう」

美裂:「やっぱりそうなっちゃうか。ま、仕方ないわね」

アンゲリーナ:「空爆で済めば……言っても仕方ないわね。任務続行、了解」

リディア:「精神防護ヘルメットを装備し、発信源に向かってください。我々は残留して、敵を引き付けます」

イワン:「お願いします。行きましょう、何か、妙な胸騒ぎがします」

マリアンナ:「そっちも精々死なない様にね」


 ここでPCは、全員シナリオ専用アイテム「精神防護ヘルメット」を装備した。

 このアイテムは、マインドジャマーの効果(データ的には、《Eロイス》衝動侵蝕)を無効化するが、装備状態で3回ダメージを受けると壊れてしまう。


マリアンナ:「……さ、行きましょうか。美裂、命令をちょうだい」

美裂:「目標は地下! 私たちで発信源をたたくわよ!」

イワン:「Понятноわかりました


 精神防護ヘルメットを装備したノビンスク支部の一行は、砲火に紛れて細い路地から”ゾーン”のさらに奥深くへと潜り込む。

 この先は、”ゾーン”発生以来前人未到の領域。何が起こるかわからない――。


Ни пуха,ни пера毛もなく、羽もなく……ご武運を」


 そんな彼らの後ろ姿に祈りの言葉を投げかけて、リディアはOSV-96のスコープに目を戻す。

 直後、大型マズルブレーキ付きの銃口から放たれた12.7x108mm弾が、ジャームの頭部シルエットを満月から三日月に変えた。


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