第1話:ミドルフェイズ06

◆ Middle06/Scene Player――アンゲリーナ ◆



 ――月もない暗い夜。アンゲリーナは、軍が前線の詰め所として利用する商工会議所へ向かっていた。

 ハヌマーンの速度を生かし、影から影へ。

 UGNの監視システムを欺き、人目を盗む。支部長を含めたUGNの人員は、誰もそのことを知らない。



GM:……では他にやりたいことなどある人はいる?

美裂:私はないわね。

マリアンナ:私からも特に。全員と絡めましたし。

GM:本当かー、本当にないのかー。オープニングシーン見返してもー?

マリアンナ:うん?(見返す)

アンゲリーナ:……GM、確認なんだけど、ベラに頼まれたボール回収を行なう場合、新たにシーンを立ててという形になる?

GM:そうだね。

アンゲリーナ:侵食率は怖い……怖いけど、それより大事なものがある! それは、守るべき日常! ……というわけでGM、ベラに頼まれたボールの回収シーンを作っていい?

GM:わかった。ではトリガーイベントを起こす。侵蝕率を上げてください。

アンゲリーナ:こふっ(吐血)……8点。


 ――UGNの目を忍び、商工会議所に辿り着いたアンゲリーナは、裏口へ向かった。

 人感センサー付の監視カメラのレンズがアンゲリーナを捉えると、彼女は鹿撃ち帽を持ち上げて、見せつけるように顔を晒す。

 ややあって、裏口の鉄扉が蝶番ちょうつがいびを原因とするきしみを立てて開いた。


中尉(GM):「アンゲリーナ・ラストヴォロフか。用件はなんだ?」 と出てきたのは、贈り物のときにも会ったリーダーの中尉だね。

アンゲリーナ:「ええ、実は、友人がボールを失くしまして——―」 かくかくしかじかで伝える。

中尉:「……ん、わかった。部下に伝えておこう。他には……?」


 アンゲリーナはポケットからくしゃくしゃに丸めた紙を取り出すと、裏口の中に向けて放り込む。


アンゲリーナ:「……現段階では、以上です。まだ時間が必要だと判断します」

中尉:「わかった」


 中尉は、ちらりと横目でくしゃくしゃの紙に視線を送ると、アンゲリーナに向き直る。


中尉:「ところで……。東にある軍の倉庫に、PP2000があるんだが、鍵がかかってないから誰かに取られたら大変だ」

 彼はそこで一旦言葉を区切る。

「良かったら、しておいてくれないか?」

アンゲリーナ:「……ええ。だけすればいいんですね。楽な依頼で助かります。それじゃ、私はこれで」

中尉:「頼んだぞ。……酒と菓子、ありがとよ」

アンゲリーナ:「いえ。お礼なら、UGNのマリアンナに」


 話を終えると、足早にその場を立ち去り、話題に出た軍の倉庫に向かう。

 倉庫には鍵がかかっておらず、中尉の言うとおり、PP2000短機関銃一挺がこれ見よがしに木箱の上で鎮座していた。


GM:どうする?

アンゲリーナ:……誰にも取られていないことをしたあと、自分でそれを持ち帰るわ。

GM:了解した。持ち物に加えてくれ。データはPDW(ルールブックに掲載されている武器)のものを使用する。他になければシーンを終了するけど。

アンゲリーナ:っと、ボールはベラに返却しておくわ!(必死)

GM:軍が後で届けてくれるでしょう。

アンゲリーナ:では軍にお任せしましょう。シーン終了で。

マリアンナ:……意味深なシーンだったわね。これは面白くなってきた。

イワン:アンゲリーナの本当の目的は一体何なのかなぁ。

マリアンナ:……私は何となく見えてきた気がする。

アンゲリーナ:まあ、たぶん、近いうちに明かせる……といいな……。


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