第1話:オープニング02
◆ Opening02/Scene Player――アンゲリーナ ◆
RZ表層部のさらに外側。かろうじてRZの影響下にないノビンスクの領域は、”
外縁部には、UGNの支部や、軍の駐屯地、そして保護されたノビンスク市民の住まう避難キャンプがある。
しかし避難キャンプは同時に、レネゲイドの秘密を守るための収容施設でもあった。簡素な仮設住宅の集落はフェンスに囲まれ、周辺の監視塔からはPKM機関銃の銃口に睨まれている。そんな生活が、もう一年近くも続いていたのだ。
GM:ではアンゲリーナ、シーンインどうぞ。
アンゲリーナ:よし、安い。侵蝕率2点上昇。
GM:キミが避難キャンプに行くと、入り口近くでフェンスの向こう側を見つめる鳶色のショートヘアーの少女が目に映る。キミの友人にしてロイス対象のベロニカ・セーロヴァだ。活動的な彼女は、屋内よりも外にいることのほうが多い。まあ、フェンスの外には出れないが。
アンゲリーナ:いたたまれない……。
GM:さて、ベロニカはキミの姿を見るなりフェンスの傍まで駆け寄ってくる。
ベロニカ(GM):「あ、アンゲリーナだ! また来てくれたんだ」
アンゲリーナ:「ええ、ベラ。ちょうど仕事が空いたの。今、いいかしら」
ベロニカ:「いいよ! どうせ暇だったし!」
アンゲリーナ:「ふふっ。それじゃあ、お茶でもいかがかしら? 珍しい葉が手に入ったの」
ベロニカはその提案を快諾し、ふたりは仮設住宅の中で折りたたみ式の長机を挟んで向き合い、ささやかな茶会を催す運びとなった。
ベロニカ:「……最近はどう? ゆーじーえぬって組織のお仕事、大変なんでしょ?」
アンゲリーナ:「そうね。大変じゃないって言えば嘘になるかしら。でも、問題ないわ。なにせ私は——―」
一泊の間を置く。そして、得意げな微笑と共に、彼女は告げる。
アンゲリーナ:「――人呼んで、名探偵! 難題の解決は専門分野だもの」……あ、名探偵は完全に自称です。実際はそこまで有名人じゃない感じで。
ベロニカ:「おお、出ましたよ何時もの
アンゲリーナ:「オーヴァード犯罪も扱うからね……。ベラにはちょっと危険すぎる。ダメよ」
ベロニカ:「チェー……。あ、それとは話が変わるんだけど」
アンゲリーナ:「どうしたの?」
ベロニカ:「聞いてよ。この前、ボールで遊んでたら柵を超えちゃったんだけど、取りに行こうとしたら見張りの軍人に怒られちゃったのよ。代わりのボールもないし……ゆーじーえぬで何とかしてもらえないかしら」と彼女は憤慨して語る。
アンゲリーナ:「……そうね。そういうことなら、依頼という形で受けても構わないわ。依頼料は――……」
悪戯っぽく笑んで、彼女は言葉を続ける。
「また今度、お茶の相手でもしてくれれば」
ベロニカ:「お安い御用よ。それじゃ、お願いしますね名探偵! 題して、消えたボールの行方を追え! なーんて」
アンゲリーナ:「その難題、この
ノビンスクに不釣合いな、和気藹々とした雰囲気。しかし、それを疎ましい目で見る者はいない。
ベロニカ・セーロヴァが、RZ発生時の混乱で親を失った孤児であるというのは周知の事実だった。その彼女が喜んでくれるならば、と皆同情を寄せていた。
そうして、ささやかな茶会もたけなわ――という矢先の出来事だった。甲高い救急車のサイレンが、仮設住宅の中にまで聞こえてきたのは。
ベロニカ:「およ? なんだろう。ちょっと見に行ってみようよ、アンゲリーナ」
アンゲリーナ:「……そうね。でも、私のそばを離れちゃダメよ?」
ベロニカ:「はーい」
ふたりが席を立ってフェンスの内側から音の方向を見やると、赤十字マークが大書された装甲車が、支部付属の病院前で停車している。
アンゲリーナ:「支部に救急搬送? ごめん、ベラ。どうやら仕事の時間みたい」
ベロニカ:「……そ、残念。また遊びに来てね」
アンゲリーナ:「ええ。また今度ね」
ベロニカに別れを告げ、仮設住宅を警備・監視する軍人と少ない言葉を交わし、アンゲリーナは表情を引き締めて支部へ赴く。
彼女の嗅覚が予感する。この停滞したノビンスクの
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