エピローグ(その3)

「これはこれは、ヴァイスシルト姫殿下!」

「あら、あなたは……金森さん?」

「覚えていて下さり、光栄でございます!」

「まあまあ、頭を上げてくださいな」



 「カンパニー」社員、金森。

 彼はハーゲン達と共に、オルガノ・ハナダ救出に尽力した人物の一人である。ハナダ率いる新生「カンパニー」では彼の評価はうなぎ登りだろうが、そんな事はよりもハナダの無事が、彼にとっては大事だった。



「それでは、ごきげんよう」

 ヴァイスと金森は互いに一礼する。そしてヴァイスは、更なる客人を探し歩いていた。

「あっ、ヴァイスシルト姫殿下」

「あら、あなたはラナね」



 「カンパニー」協力者、ラナ。

 サイボーグである彼女は、金森と共にハーゲン達と協力してオルガノ・ハナダ救出に尽力した。

 そもそもは自ら進んでサイボーグとなった彼女だが、ハナダを無事に救出できた事で、決断は正しいものだったと認識し直した。



「オルガノをご存知でしょうか?」

「さあ、わからないわね。どうしたの?」

「姿を見かけないのです。恐らくゾン子さんと遊んでいるからと思われます。オルガノ、たまには、私とも……いけません、ついうっかり……」

「いえ、気にしていないわ。うふふ」

 どうやら、ゾン子のケンカ友達が1人増えそうだ。

 ラナは「それでは」と言うと、再びハナダの捜索を続けた。


「うふふ……皆様、思い思いに過ごされていますわね」

 ヴァイスが上機嫌で歩いていると、正面のメイドから呼び止められた。

「あの、ヴァイスシルト姫殿下……」

「何でしょうか?」

「新たな執事候補というお方が、間もなく城にいらっしゃるようなのですが……」

「わかりました。私は後で行くので、先に出迎えてくださいませ」

「はい」

 メイドはうやうやしくお辞儀すると、その場を離れた。

「さて、後は龍野君と会うだけね」



 ヴァレンティア王国第一王女、ヴァイスシルト・リリア・ヴァレンティア。

 魔術師協会本部よりの依頼で異界電力ベイエリアにおもむいた彼女は、須王龍野を支援し、彼の数々の武勲を得る手助けをした。

 彼女自身も最前線で積極的に戦い、その功績が本部より認められるだろうが、彼女にとってはどうでもいいことだった。

 今の彼女には、どんな手柄よりも恋人である。



「あっ」

「あっ」

 ヴァイスがばったり出会ったのは、彼女の騎士である須王龍野だった。



 ヴァレンティア王国騎士、須王龍野。

 今回の依頼において積極的に活動し、数々の武勲を上げ、かつ騒動の収束に一役買った彼もまた、本部より手柄が認められることとなった。

 だが、彼にとっても、手柄というものはどうでもよかった。

 今の彼には、恋人との再会の時間を大事にしていたからである。



「こんなところで出会うとはね、龍野君」

「ああ、そうだな。ヴァイス」

「けれど、今はおあずけ」

「どうしてだ?」

「本当は私も龍野君といたいのだけれど、少しだけ用事があるの」

「ついて来てもいいか?」

「もちろん」

 そして二人は、ヴァレンティア城入り口の門まで向かうこととなった。

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