最終決戦(その2)

「へえ、立ち上がるとはね黒騎士サマ」

 男が飄々とした声で、龍野に告げる。

 しかしその目は、真剣そのものであった。

「ああ、恋人を傷つけられて立ち上がらねえヤツは男じゃねえ」

 気力を充実させ、再び大剣を構えた龍野。

 その様子を見た峰華が心配して近づくが、龍野は「大丈夫だから離れてろ」と遠ざけた。

(巻き込むワケにはいかねえんだよ、峰華。わかってくれ……)

 魔力を噴射し、男に吶喊とっかんする龍野。

「それじゃあ二刀流といきますかね」

 男は空いた右手からも、やいばを出現させた。

「フンッ!」

 男が手刀を繰り出す。

「甘いぜ!」

 だが、龍野は体をひねって回避。勢いそのまま、斬撃を浴びせて胴体を両断する。

「どうだ?」

 手ごたえを確認する龍野だが、再び男からの念話が飛んできた。

『そうだ、そのまま俺を殺し続けろ。ヤツの油断を完全なものにするまで、な』

 そして、龍野の眼前で復活し、迫ろうと――

「アタシを忘れんな!」


 水のレーザーが、男の心臓を貫通した。


「なっ、ゾン子!?」

 龍野が驚愕に満ちた表情で、ゾン子を見た。

「へへ、ハナノさんの役に立ってやる!」

 得意気とくいげに、鼻をこするゾン子。

「ありがとよ!」

 龍野は礼を述べると、ハーゲンに念話をした。

『おい、ハーゲン! 「スネアー」っていう、ワインレッド色の装置をぶっ壊してくれ!』

『ああ、言われるまでもねえ!』

 男が再生している間に、『スネアー』の破壊を試みるハーゲン。

 だが、光の障壁がゼクローザスの光剣を阻んでいた。

『クソ、威力が足りねえ! 龍野、援護してくれ!』

『悪いな、こっちを片づけたらすぐ行くぜ! 踏ん張ってくれ!』

 再生した男を睨み付けた龍野は、すぐさま加速。男の心臓を串刺しにした。

『今だ、行くぜ!』

 男を剣から払うと、龍野は『スネアー』のバリアを狙ってレーザーを撃つ。

『ダメなら、もう一度だ……!』

 龍野の視界の外で復活を始める男。

『まだまだ……!』

 男の全身と衣服が再構成され、間もなく活動を始める。

『あと、少しだけ……!』

 男が復活し、落とした拳銃を拾った。

「ッ、この!」

 ラナがサブマシンガンを連射するが、拳銃を拾うのが先だった。遅れて、カチッカチッという音が響く。

(弾切れ――!)

 内心に悔しさを満たしながら、弾倉を交換するラナ。だが、最早もはや手遅れだった。

 男は拳銃を構え、そして――


 『


「なっ……!?」

「どういうことだ!?」

 予想だにしない行動に、揃って驚愕する龍野とハーゲン。

 だが男は二人の驚愕をよそに、援護射撃を続けていた。

『まあいい、もう限界そうだぞ龍野!』

『ああ、このままトドメだ!』

 ハーゲンがゼクローザスを操り、光剣を高々と掲げる。

 男が拳銃の弾倉を交換し、狙いをバリアに定める。

 そして、龍野が大剣の切っ先を、バリアに向ける。

「貫け………………ッ!」

 攻撃が、一斉に命中する。

 バリアがひび割れた音を立てて、破壊された。

「ハーゲン、トドメを頼むぜ!」

「ああ!」

 ゼクローザスが再び光剣を掲げ、真下に振り下ろす。


 『スネアー』が縦に両断され、爆発した。


「今助けるぞ、ハナダ!」

 ハーゲンがゼクローザスで、ハナダの捕らえられているドームを叩き壊す。

 そして両手にしっかりとハナダを乗せると、4WDまで運んだ。

「ハナダ氏を乗せてくれ!」

「はい!」

 金森がハナダを抱え、シートにもたれかからせるようにして座らせた。

「よし、やったなハーゲン!」

 龍野はハーゲンが任務を終えたのを確認すると、男に向き直った。

「おいてめえ」

 鎧騎士の状態のまま、龍野は拳を構える。

「一発殴らせろ」

「ああ」

 男は何も弁解せず、ただ龍野の要求を受け入れた。

「はあッ!」

 うなりをつけて振るわれた拳は、男を吹き飛ばした。体重こそ素の状態(100kg)にしているが、鍛えた腕力によるパンチはただでは済まないだろう。

 だが今の龍野は、怒りの清算を望んでいた。

「やれやれ……」

 それは男も同様だった。

「やってくれるぜ、黒騎士サマ……いや、須王龍野」

 よろよろと立ち上がると、龍野は男を問い詰めた。

「ヴァイスにまで手を出すとはな、この外道」

「あー、恋人を傷つけられて怒ったカンジ?」

「そうだよ」

 こめかみに血管を浮かべる龍野。

 それでも、男は飄々とした様子を浮かべていた。


だって言ったの、もう忘れたの? 彼女を撃ったのは、。そりゃあ対魔力化があったから障壁と鎧は撃ち抜いたけど、流石に体は撃ち抜けてないよ」


「いや、忘れてないぜ? ゴム弾で撃ったってのも理解した。だがもしこれで死んでいたら、お前を永遠に殺し続けていただろうぜ」

「おーこわいこわい、ハハハ」

 殺気を湛えた龍野にも、男は動じなかった。

「まあ、これだけ言っておくよ黒騎士サマ」

 男は指をびしりと突き付ける。

「俺は――」


 すると銃声が響く。男の首が吹き飛んだ。


「何ッ!?」

 銃声のした方向を見ると、そこには――


「裏切ったのか、“不死身の英雄ジークフリート”!」


 龍野以上の憎悪と殺意を湛えた、トーマス=スマートフォンが拳銃を構えながら立っていた。



現在の龍野の撃破スコア……259体(259,000点)

※サイボーグとの戦闘が無いため、変動無し


騎士突撃槍銃アサルト・マシンガンの残弾(途中経過)

※弾薬を消費していないため、変動無し


      マシンガン…… 175 + 200×2 発


      グレネード…… 1 + 3×2 発



作者による追伸


 有原です。

 ジークフリートの立ち位置ですが、ここまで読まれた皆様ならもうお分かりですね?

 ええ、でした! 果たして皆様は、どんな反応を(応援コメントで)見せてくださるのやら。


 この後は、いよいよトーマス=スマートフォンとの対決に移ります。

 ただ、というのだけは、事前にお伝えしておきましょう。

 それでは、ご期待くださいませ!

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