マトリョーシカな悪夢(中盤その2)

「どけお前ら!」

 龍野は窓ガラス越しに12.7mmを乱射し、入り口エントランス付近のサイボーグを掃討する。

「これだけで5体か……!」

 I型やN型を、それぞれ2体、3体とほふる。

「!? 見たことねえタイプがいるぜ……!」

 龍野が視界に捉えたのは、真紅の機体の一群だ。

「戦った事のある機体だ! ガイドするぜ!」

「ああ、頼むぜハーゲン!」

 マシンガンを連射し、すぐさま3体を排除する。

 だが、残った5体が液体を纏い始めた。

「気を付けろ、あれにぶつかれば文字通り腐っちまう! 銃弾も無駄だぜ!」

「あいよ!」

 素早く大剣を振りかざし、ビームを連射する。4体に風穴を開け、強酸による自滅に追い込むが、1体が残ってしまった。

「チッ、しゃあねえな!」

 魔力を大剣に纏わせ、飛びかかると同時に突き出す。

 空中で勢いを殺しきれなかった真紅のサイボーグ(A型)は、自ら切っ先に飛び込んで自滅した。

「待っていて下さい! 一気に道を開きます!」

 一瞬サイボーグ達が途切れた隙を突き、突破を試みる龍野。

 エレベーターまでの距離はおよそ50mだ。たった7秒あれば、ボタンを押せる。

(一気に切り伏せる――!)

「右だ龍野!」

 突然のハーゲンの怒号。

「!」

 龍野は反応しきれず、突き飛ばされた。

(障壁は出てる、大丈夫だ――だが、どういうこった!?)

 自身を突き飛ばしたモノの正体に驚愕する。


 それは――T-REXティラノサウルス(D型)だった。


「すまん、一旦退避する!(あいつのミサイルは対人用……今の俺達が食らえば、ただじゃ済まない……!)」

「ああ、そうしてくれ! 巻き込んじまう恐れがあるからな!」

 龍野は四人を一旦後退させ、単独でT-REXを相手取る。

「来やがれ、ティラノサウルス!(このサイズだ、おそらくマシンガンは無駄だろうな。なら、接近戦で確実に仕留める!)」

 大剣を構え、迎撃態勢を取る。

 だが、T-REXの突撃速度は龍野の予想以上だった。

「危ねっ!」

 9tトンもの咀嚼力を持つ顎に噛まれれば、障壁もいつまでもつかわからない。まして、のなら。

「だが、足元からなら……!」

 すぐさま懐に潜り込む。

 しかし、T-REXの攻撃は止まらない。

「ミサイル……!(クソッ、回避が間に合わねえ……!)」

 ミサイルが地表で炸裂。龍野にダメージは無いが、視界が遮られてしまった。

「だったら、こうだぜ……!」

 剣先を上へ向け、手当たり次第にビームを乱射する。何発かが命中したらしく、T-REXが悲鳴を上げていた。

(どうだ……?)

 しかし、うろこ状の装甲を分離したT-REXは、エントランスホール限界の高さまで跳躍した。

「何……!?」

「上だ龍野ッ!」

 ハーゲンが指示したが、遅かった。

 龍野はT-REXの下敷きに――


「ありがとよ、ハーゲン」


 なっていなかった。

 むしろ大剣を突き立てた状態のまま、T-REXを

 T-REXの体から、紫色の煙が出ていたのだ。

「おらッ!」

 大剣を突き立てた状態のまま振り回し、ハンマー投げの要領で大剣ごと放り投げる。

 T-REXが空中に飛んだ隙に、刺さった大剣を消滅させ、手元に新たな大剣を召喚した。

「オマケだ、とっとけ!」

 すぐさま切っ先をT-REXに向け、ビームを連射。

 コアに命中し、やがて機能を停止した。


「ふうっ……やっと、止まってくれたか。ハーゲン、皆様を連れてきてくれ」

「あ、ああ……」

 四人は龍野の圧倒的な戦闘力に、唖然としていた。

 特にハーゲンの動揺は、大きなものだった。

(俺がゼクローザスでどうにか倒したあいつを……たった一人で、簡単に打ち負かしやがった……!)

 そう思うのも仕方がないだろう。

 大剣と二門の砲を犠牲にしてやっと倒した機体を、目の前で簡単に倒したのだから。

 そんなハーゲンを尻目に、エレベーターを呼ぶ龍野。

「到着――」

『龍野君、先行しなさい。厄介なタイプがいるわ』

 突然のヴァイスからの指示。

『あいよ』

 即座に了承し、ハーゲン達の方向に振り向いた。

「いえ、皆様。まだ乗らないでいただきたい」

 大剣を振りかざし、に乗り込む龍野。

 そのままガラスを大剣で叩き割ると、魔力を噴射して飛翔した。

『おい龍野、何のつもりだ!?』

 念話で響く、ハーゲンの怒号。

 だが龍野は意に介さず、5

『待ち伏せの排除だ。一方的にやられる前でよかったぜ』

 念話で“安全を確保した”情報を伝える。

『助かるぜ』

 龍野は一階に戻り、稼働しているエレベーターに先んじて乗る。

「罠は無さそうです」

 安全確認の連絡を終え、四人を案内した。

「目的地は?」

「社長室です、黒騎士殿」

 ネーゼが答える。

「でしたら、少々遠回りいたします(直通じゃねえからな……)」

 龍野はそう告げると、49階のボタンを押した。

 そしてドアが閉まり、エレベーターは五人を上へ運んだ。



現在の龍野の撃破スコア……100体(100,000点)


騎士突撃槍銃アサルト・マシンガンの残弾(途中経過)


      マシンガン…… 45 + 200×3 発


      グレネード…… 3 + 3×1 発



作者による追伸


 有原です。

 本社ビル、正確には0番エリアに敵が集結してまいりました。

 まだまだ引っ張らせていただきます。


 ああ、念のために一言。

 ハーゲン達四人の活躍は(まだ先の話ですが)ございます。

 しばしお待ちを。

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