マトリョーシカな悪夢(中盤その1)

『ヴァイス、南方向の調査は終えたぜ。収穫ゼロだった……』

『わかったわ、龍野君』

『ただ、味方の増援が来てくれた。一時的に共闘してくれることになったぜ』

『それは心強いわ、龍野君!』

 ヴァイスが喜びの声を上げる。

『して、増援の皆様はどちらに?』

『俺のすぐ後ろにいるぜ。馬鹿でかいロボットと、4WDの自動車だ』

『ちょっと待ってて!』

 ヴァイスは一度指揮用コンテナから出て、龍野の言う「馬鹿でかいロボットと、4WDの自動車」の位置を把握する。

『確認完了よ。それに地図に彼らの位置情報を追加したわ』

『それじゃ、ちょっと寄り道させてもらうぜ。本社の敵を排除する必要があるのはわかるよな?』

『さっき聞かせてもらったからね。“急がば回れ”とも言うから、自由にしてちょうだい』

『あいよ』

 龍野はヴァイスとの念話を打ち切ると、男に向けて話しかけた。

『そういえば……あんたの名前、聞いてなかったな』

『“ハーゲン”だ。俺はハーゲン少尉。すまん龍野、忘れていたぜ』

『いいってことよ。よろしく、ハーゲン少尉』

 龍野は笑って返す。

『そういえば、その機体に名前はあるのか?』

『ああ。“ゼクローザス”だ』

『格好いいな』

『ありがとう』

 互いに笑う二人。

 しばらくすると、龍野は『さて』と気を引き締めさせた。

『着いたぜ。本社ビルだ』


 本社ビルに到着した直後、ハーゲンと別の男性、それに二人の女性が、それぞれの乗り物から降りてきた。

「よお」

 一旦黒騎士の姿を解除し、ハーゲンに向き直る龍野。

「よお、龍野。お前、いい体つきしてんな(軍人か? 体を見る限り、よほど鍛えたみたいだな)」

「そう言うハーゲンも、な(狐と人間のハーフか? だが、その端正な顔、女にはモテるだろうな)」

 男二人が楽しそうに話していると、女性の呆れた声が聞こえた。

「のんきなものですわね、ハーゲン」

「はっ、申し訳ありません」

 立場や階級は、女性が上だ。

 龍野が念話でハーゲンに話しかける。

『誰……いや、どなただ?(ヴァイスどころじゃねえレベルの巨乳だな。けど似た者同士、女二人で話が合いそうだ)』

『ああ、まだ紹介していなかったな。今俺に話しかけたお方は、ネーゼ様……皇女だ』

『皇女か……あんたも、王族の娘との知り合いか』

『その口ぶり……お前も、知り合いに皇女がいらっしゃるのか?』

『ああ。もっとも、俺の……いや、彼女の場合は“皇女”じゃなくて“王女”だけどな』

 一度言葉を切ると、頭を抱えながら続けた。

『残念だが今は、俺のサポート中だ。紹介したいのはやまやまだが、持ち場を離れさせるワケにもいかねえ』

『いいよ、期待してたワケじゃない(一目お会いしたいとは思うが、邪魔するのも何だしな)』

 話を続けていると、別の女性が割り込んだ。

「ハーゲン、早くビルに行かないと!」

 華奢な体つきの女性だ。

『誰だ?(ヴァイスの妹並みの胸か。Bカップか?)』

『軍医のリオネだ』

『わかった。後、そこの白衣の男性の名前も教えてくれ』

 龍野が指し示したのは、ネーゼとリオネの後ろの男性だ。

『金森さんという。彼は「カンパニー」所属だが、我々の協力者だ。その点の理解、よろしく頼むぜ』

『あいよ』

「それじゃ、道案内を頼む」

「わかった。みなさん……皆様、どうか私から離れないようにお願いいたします」

 龍野は黒騎士の姿と化して、大剣とマシンガンを召喚。手早くグレネードの弾倉を交換した。

 ハーゲンも拳銃ハンドガンを構え、龍野の後ろについた。

 龍野が拡声機能をオンにし、四人に呼び掛ける。

「中はご覧の通り、サイボーグだらけです。私は道を開きますので、目的地への道案内はお願いいたします」

「わかりましたわ、黒騎士殿。戦闘はお任せします」

 ネーゼが返事をしたのを確認すると、龍野は真っ先にビルに突入した。



現在の龍野の撃破スコア……81体(81,000点)

※戦闘が無いため、変動無し


騎士突撃槍銃アサルト・マシンガンの残弾(途中経過)


      マシンガン…… 103 + 200×3 発


      グレネード…… 3 + 3×1 発



作者による追伸


 有原です。

 暗黒星雲様より正式に許可をいただきましたので、ゼクローザスの皆様を登場させました。

 暗黒星雲様、ありがとうございます。


※独立した物語であることを示すため、一部を故意に改変しております。

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