マトリョーシカな悪夢(序盤)

「どけ!」

 龍野はマシンガンを連射し、比較的小型のN型、装甲にムラのあるI型を優先して攻撃する。

 I型は12.7mm弾に耐えるが、N型は簡単に胴体に穴を開けられ、次々に機能を停止する。

(これで骸骨頭は15体程潰した……!)

 マシンガンに信号を送り、ロケットグレネードを3連続で発射。爆圧でI型の装甲とコア(脳髄)を吹き飛ばした。

(ゴリラは3体、か……!)

 だが道は依然として、サイボーグ達に塞がれたままだ。

(だったら、!)

 龍野は大剣を二本召喚し、それぞれの手で保持する。

「引き下がるなら今だぜ……!」

 龍野は魔力をそれぞれの大剣に纏わせると、背部、脚部から魔力を噴射。

「時間切れだ……!」

 エレベーターから出ると、一回転して操作盤やケーブルをそれぞれの剣からのビームで破壊。

 そして一気に加速し、進路上のサイボーグを見境なしに切り伏せる。

(5, 8, 12... 16! 16も撃破してまだいるのか、よくもこれだけ集めたな……!)

 どうにか入り口エントランスから脱出すると、龍野は左手の大剣を消した。一旦本社ビルから距離を取り、ヴァイスに連絡を入れる。

『ヴァイス、ビルの一階はサイボーグだらけだ!』

『何てこと!? 最早もはや見境が無いわね……!』

『どうする? 通り抜けるのに邪魔なヤツだけ、葬ってきたが……』

調をお願いするわ』

『周辺調査?』

 龍野が疑問を投げかけると、ヴァイスは大きく息を吸ってから二の句を告げた。


『おそらく……“”』


 龍野はヴァイスの言葉を聞くと、深呼吸してから返答を告げた。

『了解!』

『あっ、待って!』

 ヴァイスが慌てて引き留める。

『入り口正面に、道具を投下するわ!』

 そして、念話が途切れた。

「道具? どういうこった?」

 龍野が訝り、ふと真上を見る。

 そこには、ゆっくりと降りてくる水の塊があった。

「あれか?」

 落下点を予測し、真下から離れる。

 やがて降りてきた水の塊は、龍野の目の前で優しい音を立ててはじけた。

 そして、何かが地面に落ちた。

「これは……メリケンサックに、SIGP229俺の拳銃……それに、魔力補給剤か。まったく、念入りな装備をよこしてくれるなんてありがたいぜ、ヴァイス」

 龍野は一旦鎧騎士の状態を解除し、手早く装備を装着する。仕舞い切れない魔力補給剤は、異空間に収納した。

「よし、いっちょやってやりますか!」

 素早く鎧騎士の状態に戻り、龍野はマシンガンを構えた状態での調査を始めた。

(……ん?)

 巨大な竜巻と数条の落雷が、龍野の視界に映る。

「間違いねえ、あのトラックだ!」

 魔力を噴射し、素早く急行した。


     *


「クソッ、動けねえ……!」

 竜巻の輪の中心には、全長10.5mのロボットがいた。

「いくらこの機体でも、この風には……!」

「脱出する?」

 コックピットに座る男と、無線機から響く女性の声。

「冗談じゃありません! まだ我々は目的を達成していないのです!」

「わかったわ。けれど、いざとなったら強制的に逃がすわよ!」

「了解!」

 力強い返事を返す男。

(さあ、カッコつけたはいいが、どうしようか……)

 そう思っていると、一条の光が見えた。


 オレンジ色の、ビームだった。


「何っ!?」

 ビームは竜巻の根本――正確には発生源であるT型のコア――を的確に吹き飛ばし、機能停止に追い込んだ。

 続けざまに、ビームが見える。

(誰だか知らねえが、ありがてえ……!)

 やがて最後のT型が、機能を停止した。

「状況を!」

 そこに、先ほどとは別の女性からの通信が届いた。

「ああ、大丈夫だぜ。俺達は無事だ。よくわからんが、どうやら助けられたらしい」

「よかったです」

 無線から、更に別の男性からの声が届いた。

「まったくだ」

 ロボットはT型の残骸を排除しながら、ビルに向かって歩行を再開した。

「む? どうやら俺達を助けてくれたヤツ……黒い騎士が、近くにいるらしい」

「コンタクトを取りなさい」

「はい」


     *


「よし、あのロボットは大丈夫そうだな。だが、

 龍野はT型8体をほふりつつも、調査の結果に満足出来ずにいた。

「戻るか……ん?」

 すると、通信が飛んできた。

(今まで感じたことの無い念話だ……。どうする?)

 だが、通信要請コールは止まらない。

(まあいい。念話を出来るヤツは、限られてるだろうしな)

 覚悟を決めた龍野は、念話に応じた。

『誰だ?』

『俺はロボットのパイロットだ。先程の援護に感謝する。見事な腕前だった』

『俺は須王龍野だ。無事で何より』

『ありがとう。しかし、あの竜巻を止めるほどの威力を持つビーム……いったいどんな機体に、乗ってるんだ?』

『機体? 俺は乗ってないぜ。しいていうなら鎧だけど、纏っただけだぞ』

『纏った……?』

 戸惑う男。

 龍野は「を見せるのが早いか」と判断し、素早くロボットの前に向かった。

『ほら、実物がここにいるぞ』

 カメラアイ前を横切り、眼前の道路に着地する龍野。腕を大きく振って合図する。

『どういうことだ……? いや待て、お前はそもそも何者だ?』

『“魔術師”だ』

『“魔術師”?』

『まあ、簡単に言えば……「とんでもない力を使える人間の総称」ってワケだ』

『ああ……』

 今一つ、龍野の説明を呑み込み切れていない様子の男。

『だが、これだけは言うぜ。「俺達はあんたらの味方」だ』

『「俺達」?』

 龍野の言葉を疑問に思う男。

『本社ビルの屋上に、仲間がいるんだ』

『本社ビル、か。なあ、同行させてもらってもいいか?』

『いいぜ』

 龍野は巨大ロボットに背中を向けると、飛翔したままビルへ戻った。

『それじゃあ、頼むぜ』

『ああ』

 龍野が承諾した。


 龍野の承諾の言葉を確認した男は、4WD車を呼び寄せた。

「聞いた通りです。あの黒騎士について行きましょう」

「ええ」

「うん!」

「はい!」

 それぞれが返事をし、アクセルを踏んだ。


 ここに、“外見上だけ”と“本物”の“ロボット二体の同盟”が締結された。



現在の龍野の撃破スコア……81体(81,000点)


騎士突撃槍銃アサルト・マシンガンの残弾(途中経過)


      マシンガン…… 103 + 200×3 発


      グレネード…… 0 + 3×2 発



作者による追伸


 有原です。

 暗黒星雲様、キャラクター四名と一機を借りさせていただきました。

(許可はいただいております)

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