vs"T"(前編)
「この風景を、もう一回見ることになるとはな……」
移動中のハナノの自家用車内にて、龍野が呟く。
「そうね。ついに到着したわね、この0番エリアに」
「ああ」
そう。
龍野達が最初に訪れつつも、調査を後に回したこのエリア。
「さて、降りたら早速……ん?」
龍野が左を向くと、何やら見つけたようだ。
「ハナノさん、急加速してくれ!」
唐突に叫ぶ龍野。
「はい?」
当然、疑問に思うハナノ。
「いいから早く! 衝突するぞ!」
「はっ、はい!」
ハナノがアクセルを強く踏み込み、赤に変わる寸前の交差点を猛スピードで通過する。その直後。
巨大な円柱状の物体を背負ったトラックが、これまた猛スピードで突っ込んできた。
「やっぱりな……!」
そう。
龍野には、巨大な円柱が見えていたのだ。
「近くの駐車場に逃げ込めないか?」
「ダメよ、龍野君。包囲されて、ハナノ様だけ引きずり出されてしまうわ」
ヴァイスはこの後の言葉を伏せたが、龍野は何を言わんとしたかを察した。
「しょうがねぇ、俺が足止めするぜ……ッ!?」
龍野が何かを見た。
その瞬間、龍野達の乗る車のすぐ近くに銃弾が着弾した。
「なっ……N型!?」
トラックの運転席の上には、N型2体が立っていた。
「しかも、これまでと違うわね……。まず外見からして、銀色になっているわ。龍野君がこれまで交戦したはずのN型は、深緑の機体だったはずよ」
ヴァイスの的確な指摘に、龍野が得心した。
「それに、銃も二挺に増えているわ。今までと同じように対処出来るとは思わないべきね……」
ヴァイスは一瞬だけ目をつぶると、龍野に向き直って宣言した。
「あの3体を排除するまで、
「了解、姫様」
龍野が茶化すが、内心は闘志に満ちていた。
「ハナノさん、車は後で弁償する」
龍野が後部トランクドアのガラスを割ろうと身を乗り出す。
「ああ、それならご心配には及びません」
ハナノが何かのスイッチを押した。
すると、後部トランクドアのガラスが降りた。たちまち吹きっさらしと化す。
「まだまだ!」
ハナノは交差点を左折しながら、更にスイッチを押した。
3秒ほどかけてから、ゆっくり天井が運転席側にスライドし始めた。
「騎士様、今です!」
「ああ!」
龍野は座席の上に立ち、黒騎士化する。
そして車から跳躍し、魔力を噴射して飛翔を始めた。
「ハナノ様、本社ビルの屋上まで行きましょう!」
元の形状に戻りつつある車に座ったまま、ヴァイスがハナノに提案する。
「かしこまりました!」
ハナノもそれを承諾し、車を公園に乗り入れる。
そしてヴァイスの後を追い、本社ビルに入った。
*
「さて、お前ら。俺が相手だ」
龍野は飛翔したままマシンガンを構えながら、巨大トラックと2体のN型に向けて話しかける。
オレンジ色に光るバイザー越しに、睨みつけながら。
「まずはお前だ!」
龍野は巨大トラックに搭載されている柱の、頂点の黒い球体を撃つ。
だが、トラックは意に介さずに龍野に突進を続けた。
(弱点じゃなさそうだな……!)
龍野は分析を進めながら、(龍野視点で)左にかわす。
(だったら……!)
マシンガンを構えながら、護衛のN型2体の内の片方を撃つ。集中砲火を浴びたN型は、なすすべなく機能を停止した。
(やけにあっさり撃破できたな……?)
龍野はマシンガンを左腕に持ち替え、そのまま保持する。
開いた右手に大剣を召喚し、もう一体のN型目掛けビームを放った。
(だったら、こっちも……!)
しかし、ビームはN型の装甲を貫通することなく霧散した。
(!? あの装甲の効果、以前どこかで……!)
龍野はこの戦いの前の、実験を思い出した。
かつて戦った巨大カマキリと
(クソッ……! 今は実弾があるからいいが、これ以上は増えないでくれよ……!)
龍野は内心で毒づきながら、大剣を消滅させる。
そして即座にマシンガンに持ち替えた。途中でダブルサブマシンガンの攻撃を受けたが、大した脅威ではない。
「それじゃあ、お前はサヨナラだ」
引き金を絞るように引き、N型に集中砲火を浴びせる。やはりなすすべなく、機能を停止した。
「残るはお前だけだ……!」
再び突進してくる巨大トラックだが、龍野は左に
減速した隙を突いて、側面に回り込む。
「持っていきやがれ!」
マシンガンを連射し、片側のタイヤ6つを破壊する。
「よし、これで……!」
とどめを刺すための弱点を探そうとする龍野。
しかし、龍野にとって予期しなかった事態が発生した。
トラックの円柱が回転し始めたのだ。
「!?」
龍野がマシンガンを連射するが、タイル状の装甲に阻まれて直撃弾を出せない。
『龍野君、一時退避して!』
ヴァイスからの指示を聞き、即座にトラックから距離を取る龍野。
やがて回転速度が増し、局地的な竜巻が出来た。
おまけに巨大トラックは、タイヤを破壊されてもバックして距離を詰めてきたのだ。
『もっと離れて、龍野君!』
ヴァイスが指示を飛ばす。
すると、手にした無線機が無線をキャッチした。
「はい、私でございます。えっ!? まさか……!」
ヴァイスが指示された方角を見ると、ヘリが接近してきていた。
「一時後退を……!(ッ、ノイズが……! まさか、EMPなの!?)」
緊急事態に、ヴァイスは立て続けに衝撃を受けた。
現在の龍野の撃破スコア……37体(37,000点)
マシンガン…… 55 + 200×3 発
グレネード…… 3 + 3×2 発
作者による追伸
有原です。
どうしても、この話だけ投稿したくなりました。後悔はしていません。
ああ、三つだけ言っておくことが。
一つ、勝手ながら、敵は強化させました。でないと、「いよいよクライマックス……!」という感覚を味わえませんでしょうから、ね。
二つ、あくまでT型との戦いは「前哨戦」です。まだクライマックスには程遠いという話だけさせていただきます。
もちろん、公開ペースは落としたままですが……。
三つ、そろそろ他の参加者様のキャラクターが、0番エリアに突入されたようなので……。
巻き添え(クロスオーバー)、食わせます。多分。
諸連絡は以上です。
それでは、今回はこれにて!
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