vs"H"(後編その2)
鎧騎士と化し、より立体的かつ現実的な網膜投影の映像を見られるようになったヴァイスは、龍野を指定の位置まで誘導していた。
『後何メートルだ?』
『50m……ッ、止まって龍野君! サイボーグよ!』
『数は?』
『二体よ!』
龍野はマシンガンを召喚し、進行方向である大きな茂みに向ける。
(次はどいつだ……!?)
やがて、サイボーグが茂みから姿を現した。
正体は――I型が二体。しかもいきなり、手のひらを龍野に向けていた。
「チッ!」
『機体の足元を狙って、グレネードを!』
ヴァイスが指示を飛ばす。
龍野はすぐに魔力の信号を送り、ロケットグレネードを発射した。
爆風と土煙が上がり、即席の煙幕が生成された。ゴリラは衝撃波を放つも、龍野には当たっていない。
『そのままマシンガンで射撃! 煙幕から出たところを、近距離のグレネードで仕留めて!』
ヴァイスはさらに指示を飛ばす。即座に応じた龍野は、二体のゴリラ目掛けてマシンガンを連射。
着弾音が連続して響く。きっちり命中しているようだ。
やがて、一体が煙幕から出てきた。
(真横……! 今だ!)
側面から頭部を狙い、ロケットグレネードを発射。致命傷を与え、一体を沈黙させた。
『もう一体が飛び出してくるわ! 後方に跳躍して回避!』
間髪を入れず、ヴァイスからの指示が飛ぶ。
龍野は後方に跳躍しながら、脚部に魔法陣を展開して魔力を噴射した。
その直後、ゴリラのフックが飛んできた。が、既に回避動作が完了していた龍野に当たることはない。
『今よ、マシンガンとグレネードの同時射撃を!』
フックを放ち、隙だらけとなった機体に連続攻撃を叩き込む。マシンガンで態勢を整える暇を奪い、その間にグレネードを発射。
ゴリラの装甲が、ほとんど削れた。
『懐に潜り込んで、マシンガンを連射!』
龍野は素早く潜り込み、12.7mm弾を一点集中で放つ。
装甲と耐久の限界を迎えたゴリラは、音を立てて倒れた。
『よくやってくれたわ、龍野君』
『あいよ』
だが、ヴァイスは自らのサポートの精度が向上したことを確信していた。
半ば未来予測まで入った指示は、強化された性能によって出来た事であった。
『障害は排除した、進むぜ』
『ええ』
龍野は茂みの中に入り、探索を続行した。
『どれどれ……見つけたぜ、ヴァイス。黄色い機体が、一体』
『射撃で破壊して』
ヴァイスは簡潔な指示を飛ばすと、動向を見守ることにした。
『了解』
龍野は指示を聞き届けると、マシンガンの銃口を機体に突き付けた。
「よくも俺達を
それだけ吐き捨てる龍野。
黄色い機体は顔の下の腕部とマニピュレータを必死に動かすが、龍野は相手にしなかった。
そして、12.7mm弾を立て続けに発射した。
『沈黙を確認したわ』
『あいよ。ふぅ、やっとだぜ……』
安堵のため息を漏らす龍野。
『ッ……待って! まだ反応がエリア内に残ってるわ!』
『何ッ……!? わかった、一旦茂みから出るぜ!』
龍野は茂みから脱出し、待機状態に移ろうと――
「おいおい、冗談じゃねえぜ……!」
操られた人影を前に、龍野はただ立ち尽くすだけだった。
*
「龍野君……!」
周囲の反応に、動揺するヴァイス。
「姫殿下、もう一体の機体を私に……!」
ハナノが別のN型を預かると、すぐにデータのチェックを始めた。
「このデータをサルベージしてくださいませ……!」
「ありがとうございます!」
ヴァイスはハナノからN型を受け取ると、すぐにデータをサルベージする。
「完了……えっ、まさか!? この場所は……!」
ヴァイス、そしてヴァイスの肩越しにデータを見たハナノは、位置情報に愕然としていた。
位置情報には、ハナノの屋敷の情報があった。
*
「クソッ、近寄るな! そろそろ手加減出来ねえぞ!」
龍野は操られた現場作業員を、殺さずに跳ね除け続けていた。
『龍野君、飛翔してハナノ様のお屋敷まで! 早く!』
ヴァイスは急いで龍野に指示を飛ばす。
龍野は返事をする余裕も無く、黙ってハナノの屋敷に向かった。
『着いたぜ』
『奥に階段があるわ。そこから降りて、ハナノ様の部屋に行って!』
『あいよ……おっと! ヴァイス、骸骨頭の処理が先だ!』
銃声がいくつか響く。
『あの黄色野郎も必死だな……! 終わったぜ、ヴァイス!』
『ハナノ様の部屋……そこよ。その机の右……龍野君、その床! 隠し扉よ!』
『わかった!』
龍野が隠し扉のハシゴから、更に地下に降下する。
「いつの間に……私は、あんな扉など……!」
身に覚えのない設備に、ハナノが動揺する。
「わかっております、ハナノ様。どうか、心を落ち着けて」
ヴァイスがなだめつつも、龍野に指示を飛ばした。
『何かあるかしら?』
『ただ通路があるだけだぜ』
『進んで』
龍野は全身すると、重そうな扉を見つけた。
『開かねえな』
『マシンガンから、武器を変えていいわ』
『あいよ』
龍野はマシンガンを立て、大剣を召喚する。
そして剣先からビームを放ち、扉を円形にくり抜いた。
『開いたぜ』
大剣を消滅させ、マシンガンを手に取る。くり抜いた箇所を蹴飛ばし、扉の内側に踏み入った。
『見つけたぜ』
『破壊して』
龍野は指示を聞き届けると、黄色い機体のジェスチャーを無視して12.7mm弾を叩き込んだ。
『どうだ?』
『反応、完全停止。龍野君、コンテナまで帰還して』
『あいよ』
龍野は来た道を引き返して屋外に出ると、飛翔してコンテナまで戻った。
「お帰りなさい(お帰りなさいませ)」
コンテナに戻った龍野は、ドレス姿のヴァイスと、ハナノに迎えられた。
「ああ、ただいま。次のエリアは8番と0番のどっちにする、ヴァイス?」
早くも次のエリアを考える龍野。
ヴァイスはそんな積極的な姿勢に笑みをこぼしながら、「8番よ」と答えた。
「ああ、そういえば龍野君」
「何だ?」
「骸骨頭と称する、あの二体の後始末をお願い」
「あいよ」
まだ鎧騎士の状態だった龍野は、ヴァイスに持ち出された二体のN型の首を、大剣の一振りで胴体から切り離した。
現在の龍野の撃破スコア……22体(22,000点)
マシンガン…… 49 + 200×2 発
グレネード…… 0 + 3×2 発
作者による追伸
有原です。
やっとH型の機体を倒しましたね。
私の個人的な願望により、かなりとんでもない設定に改造いたしました。
ですが、H型の駆逐はまだ終わっていません。お気づきでしょうか?
そう、ハナノがヴァイスに差し出した謎のメモ書きでございます!
という訳ですので、最後のアルファベットは一旦お待ちいただきたく思います。
今回はここまで。それでは、またいずれの機会にて……!
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